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12月31日で見納め!閉館が惜しまれる「お台場MEGAWEB」が伝えたクルマの魅力と文化

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
MEGAWEBヒストリーガレージのセリカGT-FOUR(写真:DRAFTING)

ファミリーやカップルで賑わう、クリスマスムード一色の東京・お台場。ゆりかもめ青海駅直結の自動車ショールーム「MEGAWEB(メガウェブ)」もたくさんの人で賑わっていた。

お台場・パレットタウンに行けばいつもあった同施設は2021年12月31日をもって営業を終了する。

トヨタの巨大ショールームとして

MEGAWEBは1999年にお台場の複合集客施設パレットタウンのオープンに合わせて営業を開始した、トヨタ自動車の大型ショールーム。40種類以上の車種があるトヨタの市販車を見て触れることができるだけでなく、1.3kmの専用コースで実際に試乗できるアトラクション「ライドワン」は高い人気を誇ってきた。

ショールームは広々としたスペースになっているため、出展者あたりのスペースが限定されるモーターショーに比べてゆとりがあるため、クルマをじっくり見るには街のディーラーよりも最適な空間だったと言える。

日本最大級のショールームだったMEGAWEB(写真:DRAFTING)
日本最大級のショールームだったMEGAWEB(写真:DRAFTING)

ショールーム内には子供たちが大好きなパトカーなど、はたらくクルマも多数展示され、クルマ好きの子供たちにとってはパラダイスと言える場所だっただろう。きっとここからクルマ好きになっていった人も多いはずだ。

また、ショールーム内にはeスポーツやトヨタの企業スポーツの体験コーナーも設置され、クルマというキーワードに限定しない、アミューズメントパークのような楽しみ方ができるのも大きな魅力だった。

そんなMEGAWEBは今年で22年の歴史に幕を下ろすことが決まったのだが、理由はパレットタウンが新施設の建設のために2022年夏までに閉館するためだ。MEGAWEBは一足早く12月末でクローズするため、名残惜しんで来場するクルマファンの姿も目立つ。

MEGAWEB
MEGAWEB写真:西村尚己/アフロ

世代を超えてクルマを語り合えた空間

MEGAWEBは商業施設ヴィーナスフォートの中に、懐かしいクルマと再会できるエリア「ヒストリーガレージ」を設けており、こちらも無料で観覧できるようになっているが、同時にクローズとなる。

ヴィーナスフォートのヒストリーガレージ(写真:DRAFTING)
ヴィーナスフォートのヒストリーガレージ(写真:DRAFTING)

1960年代の昭和の日本がデザインされ、そこに懐かしいクラウンやスプリンターなどクラシックカーが並べられているエリアだ。ここの素晴らしいところはトヨタ所有の施設ながら、展示車をトヨタに限定していないこと。日産・ブルーバードやマツダ・キャロルなど昭和の時代を代表する思い出の名車が所蔵、展示されており、世代を超えてクルマについて語り合いながら歩ける空間だった。

ヒストリーガレージに展示されている懐かしいスプリンター・トレノ(写真:DRAFTING)
ヒストリーガレージに展示されている懐かしいスプリンター・トレノ(写真:DRAFTING)

日本車だけでなく、巨大なシボレー・インパラ、フォルクスワーゲン・ビートルなど昭和の時代に日本の街中でも見かけた外国車も多数展示されている。

エリアに入るなり、「懐かしい〜」「これ何ていうクルマだっけ?」。クラシックカーを見るなり目を輝かせる人たちの声があちらこちらから聞こえてくるのがこのエリアの日常だった。

また、クルマへの関心が低いと言われる若者のカップルが、可愛らしくお洒落な色使いのシトロエン2CVやBMWイセッタなどを見るなり、笑顔で写真を撮りに行く姿を見ると、ヒストリーガレージの展示が果たした役割は非常に大きかったと感じるのだ。

フォルクスワーゲン・ビートル(写真:DRAFTING)
フォルクスワーゲン・ビートル(写真:DRAFTING)

わざわざクルマを見るのを目当てに行く、自動車メーカーの博物館とは違うアプローチでの展示であり、ショッピングの合間に懐かしいクルマを無料で見ることができるというのも大きな魅力だった。この施設が無くなってしまうのは本当に惜しい。

引退した中嶋一貴の特別展示を実施

MEGAWEBはモータースポーツ情報の発信拠点としても重要な役割を果たしてきた。

トヨタF1とラルフ・シューマッハ
トヨタF1とラルフ・シューマッハ写真:ロイター/アフロ

トヨタがF1に参戦した2002年〜2009年まではモータースポーツの展示が強化され、F1カーが来場者の目を引いた。また、F1関連イベントとして試乗コースの「ライドワン」の直線を利用してトヨタF1カーがデモ走行し、甲高いF1エンジンのサウンドで来場者を興奮させたことも懐かしい思い出だ。

当時はまだ公道を封鎖してレーシングカーを走らせるイベントの実施が非常に難しかった時代であり、公道ではなく敷地内で走らせることで、F1マニア以外の人々の目に止まるようにしようとした試みであった。サーキットを離れて多くの人が集まる場所でのこういったデモ走行企画はメディアの関心も集めやすいため、それから10年かけて街中での走行イベントが増えていくキッカケを作ったとも言える。

2007年、モータースポーツジャパンでデモ走行するトヨタF1
2007年、モータースポーツジャパンでデモ走行するトヨタF1写真:ロイター/アフロ

また、夏にはトヨタのSUPER GTドライバーたちが行うファン感謝イベント「LGDA夏祭り」の会場として使用されたほか、ル・マン24時間レースやSUPER GT開催時にはパブリックビューイングを実施するなど多数のモータースポーツイベントが開催された。ここはモータースポーツファンにとっても思い出の場所になっている。

そんなMEGAWEBのフィナーレを飾るモータースポーツ展示は中嶋一貴の引退に合わせて、その功績を讃える特別展示「TGRドライバー 中嶋一貴の軌跡 2012-2021」だ。

トヨタエンジンと共にウィリアムズでF1を戦った中嶋一貴
トヨタエンジンと共にウィリアムズでF1を戦った中嶋一貴写真:アフロスポーツ

中嶋一貴は父で元F1ドライバーの中嶋悟が所属したホンダではなく、トヨタの育成ドライバーの道を選択し、F1ドライバーになった。その後、国内のSUPER GT、フォーミュラニッポンで活躍。並行してトヨタのWEC(世界耐久選手権)のル・マン24時間レースでエースドライバーとなり、2018年にトヨタ悲願のル・マン優勝を勝ち取った。

ル・マン優勝車のトヨタTS050ハイブリッドや、国内での中嶋一貴のイメージにもなっているペトロナスカラーのレクサスSC430、フォーミュラニッポンのFN09など懐かしのマシンに合える展示になっている。

中嶋一貴の特別展示(写真:DRAFTING)
中嶋一貴の特別展示(写真:DRAFTING)

今年も残すところあと1週間ほど。閉館は残念だが、トヨタがMEGAWEBを通じて得たクルマファン、モータースポーツファンとの繋がりは非常に大きな財産になったはずだ。是非、今後も新たな形でのこういった自動車のアミューズメント施設を作って欲しいと願うのは私だけではないだろう。22年の歴史に幕を下ろすMEGAWEBを最後に訪れてみてはいかがだろうか。

【関連リンク】

MEGAWEB公式サイト

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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