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【F1】6点差のシーソーゲーム!メルセデス&ハミルトン得意のアメリカGPは重要なターニングポイント

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
トルコGPでポイントリーダーに浮上したフェルスタッペン(写真:ロイター/アフロ)

F1の2021年シーズンも残すところ6戦となった。秋から冬の寒い時期を迎えたヨーロッパを離れ、F1サーカスはトルコから大西洋を越えてアメリカへ。ここから北中南米、中東を転戦するフライアウェイ戦でシーズンの締めくくりを迎える。

まずは2021年10月22日(金)〜24日(日)に開催されるアメリカGPをプレビューしていこう。

過去にハミルトンが5勝

日本では10月25日(月)午前4時というド深夜に決勝レースが開催されるアメリカGP。なかなか視聴するのが大変なグランプリであるが、今回のアメリカGPはかなり重要なターニングポイントになってきそうだ。

波乱のコンディションとなったトルコGPではバルテリ・ボッタス(メルセデス)が今季初優勝を達成したが、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が2位、そしてルイス・ハミルトン(メルセデス)が5位でフィニッシュしたことで、ランキング首位の座が逆転。フェルスタッペンが6点リードのチャンピオンシップリーダーとなった。

トルコGP決勝
トルコGP決勝写真:ロイター/アフロ

残り6戦となり、いよいよチャンピオン争いも佳境だ。チャンピオンを争う2人と、レッドブル、メルセデスの両陣営は絶対にリタイアやノーポイントレースを作ってはいけない、緊張感あふれる戦いになっていく。

ランキングは逆転されたものの、メルセデスの代表であるトト・ウォルフはボッタスの優勝で「トルコGPで(ロシアGPからの)好調を維持できたことは励みになる。ここ最近、我々は連勝をできていなかったからね。イスタンブールから帰ってきてファクトリーの士気が高まっている」とチームの状態を説明。

メルセデス代表のウォルフ
メルセデス代表のウォルフ写真:代表撮影/ロイター/アフロ

そんな状態で迎えるアメリカGPの舞台、サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)はメルセデスお得意のサーキットでもある。現行のパワーユニット規定になった2014年以来、ポールポジションは全てメルセデスが獲得。さらに優勝に関してはメルセデスがここで2014年以来敗れたのは2018年の僅か1回だけで、この時はキミ・ライコネン(フェラーリ)がピットストップを1回のみにする作戦で優勝した。

ルイス・ハミルトン(メルセデス)にとっても初開催となった2012年にマクラーレン・メルセデスで勝って以来、通算5勝をマークしているサーキットで相性抜群のコースになっている。チームの状態が良いとあれば、チャンピオン争いのシーソーゲームはさらに続いていくだろう。

ルイス・ハミルトン
ルイス・ハミルトン写真:ロイター/アフロ

フェルスタッペンのパフォーマンスは?

一方でチャンピオンシップリーダーに戻ってきたマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)はこのコースでまだ優勝を経験していない。

COTAでのレースは昨年コロナ禍でキャンセルとなり、2019年以来2年ぶりのレース。ということで、フェルスタッペンがホンダのパワーユニットで走ったのは2019年の1回のみで、この時のレースは3番手スタートから3位フィニッシュ。表彰台を獲得している。

マックス・フェルスタッペン
マックス・フェルスタッペン写真:ロイター/アフロ

メルセデスが得意とするサーキットではあるのだが、フェルスタッペンはホンダパワーユニットを搭載する前の2017年、2018年と2年連続で凄まじいオーバーテイクショーを見せたのだ。2017年はパワーユニット交換のため降格し16番グリッドから3位フィニッシュ(5秒プラスのペナルティで結果は4位)。そして2018年はギアボックス交換で18番手からのスタートとなったが、なんと2位まで追い上げる好パフォーマンスを見せたのだ。

「僕らのクルマはアメリカで競争力があったので良い結果を得てきたけど、今は良い結果を優勝に変えるってことだ。今週末もかなりの接近戦になると思うよ」とフェルスタッペンも自身を見せており、まさにガチ勝負のアメリカGPということになりそうだ。

COTA
COTA写真:ロイター/アフロ

ここはコース幅も広く、オーバーテイクもしやすいサーキットだけに、フェルスタッペンvsハミルトンの激しいバトルが展開されることを期待したい。2人のバトルにトルコGPのウイナーで2019年のアメリカGP優勝者でもあるバルテリ・ボッタス(メルセデス)が絡んで来ることになるのか。レッドブル&ホンダ陣営としてはセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)やアルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリー角田裕毅の仕事が重要になってくるだろう。

角田は5戦連続のノーポイント

アメリカGPのサーキット、COTAも初走行となるのはルーキーの角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)だ。ここからの北中南米の3連戦は日本、ヨーロッパ育ちの角田にとって初めて経験するコースばかりとなる。

前戦のトルコGPでは予選でQ3進出を果たし、決勝ではハミルトンを8周に渡って抑え込み、見せ場を作ったフェルスタッペンがランキング首位に躍り出るのに良い仕事をしたとも言え、レッドブルのアドバイザーであるヘルムート・マルコもハミルトンを抑えたことを高く評価している。

ヘルムート・マルコ
ヘルムート・マルコ写真:ロイター/アフロ

しかしながら、ハミルトンとのバトルの影響でタイヤを痛めつけてしまったために、厳しいレース展開を強いられ、スピンによって順位を落として15位フィニッシュとなった。

今季、チームメイトのピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)が3位表彰台を含む11戦でのポイント獲得を達成しているのに対し、角田は僅か5戦でしかポイントを獲得できていない(最高位6位)。ベルギーGPから5戦連続のノーポイントレースが続いているのだ。

「前戦のトルコからの残りレースで僕がレースをしたことがあるのはアブダビだけです。シミュレーターで数日間、COTAを走り込みましたが、面白いコースだと感じました。特に第1セクターはジェットコースターのようで初めて経験できるのが楽しみ」と角田は語る。

角田裕毅
角田裕毅写真:ロイター/アフロ

また、角田は「MotoGPライダーがCOTAの路面について不満を漏らしていたのが心配」とコメントしているが、路面の凹凸(バンプ)が問題視されてきたCOTAではバンプを削るなど対策が行われる模様。シミュレーターで走り込んだとはいえ、実際に走ってみないと分からない路面でどれだけのパフォーマンスを見せられるか注目だ。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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