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【eスポーツ】グランツーリスモ歴たった1年の16歳が日本一に!「トップランカーの走りを研究した」

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
滋賀県代表の佐々木 拓眞(Playstation公式YouTubeより抜粋)

全6タイトルのゲームが設定され、eスポーツで日本一の座を争う「全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2021 MIE」が2021年10月16日(土)17日(日)にオンライン形式で開催され、プレイステーション4のソフト「グランツーリスモSPORT」部門では、なんとプレイヤー歴がまだ1年という滋賀県代表の佐々木 拓眞(16歳)が見事に優勝し、日本一に輝いた。

プレイヤー歴10年は当たり前の中で優勝

本来であれば、三重とこわか国体の文化プログラムとして三重県に選手が集合して開催される予定だった今大会、「グランツーリスモSPORT」部門はモータースポーツの聖地、鈴鹿サーキットで開催される予定だった。

しかし、新型コロナウィルス感染拡大の状況下で選手の県外移動は難しいと判断し、昨年の鹿児島大会に続いて、自宅などからオンラインで参戦する方式へと変更された。

自宅からオンラインで参戦した選手達(一般の部)/Playstation公式YouTubeより抜粋
自宅からオンラインで参戦した選手達(一般の部)/Playstation公式YouTubeより抜粋

「グランツーリスモSPORT」部門は2019年の茨城大会の初開催から3回連続の開催となる。5月にオンラインのタイムアタック競技で都道府県代表を決め、8月には決勝本大会進出をかけた選抜戦がこれまたオンラインで開催。18歳以上の「一般の部」、18歳未満の「U-18の部」それぞれ12名が代表に選ばれた。

昨年までは少年の部と呼ばれていた「U-18の部」には11歳から17歳までの選手たちが参戦。中にはレーシングカートで現実のモータースポーツに参戦している選手も居るが、親の影響で幼少期からレースゲームをプレイし続けてきた選手が多い。そのため、プレイヤー歴10年という選手は何ら珍しくない存在だ。今回で3回目となる本大会で3回連続本大会進出を果たしたのが12名中6名と半数を締めていることからも、上位のドライバーは固定され始めている印象だ。

しかし、そんな流れを覆したのが、今回の「U-18の部」における滋賀県代表/佐々木 拓眞の優勝である。佐々木はオンライン予選で滋賀県のトップタイムをマークし、県代表に選ばれると、8月の選抜戦ではポールポジションから独走で優勝し、決勝本大会への切符を掴んだ。

トヨタGR86を使って行われた「U-18の部」決勝レース(Playstation公式YouTubeより抜粋)
トヨタGR86を使って行われた「U-18の部」決勝レース(Playstation公式YouTubeより抜粋)

佐々木は10月16日(土)の予選レースではライバルたちとは違うタイヤ戦略を遂行し、完璧なレースを展開して3位にジャンプアップ。そして17日(日)の決勝レースでは3番手走行中に、前の2台が接触して順位を落とし、トップ浮上。幸運もあったが、そのあとは最後までトップを譲らずに優勝した。

初心者プレイヤーに大きな希望を与えた佐々木

佐々木 拓眞はまさに今大会における最大の伏兵だった。

なぜなら「グランツーリスモSPORT」は単なるゲームではないからだ。まだ自動車免許を持っていない18歳未満のドライバーたちにとってみれば、クルマの操作方法を覚えることはもちろん、サーキットの走り方やマナー、そしてクルマの原理など様々な要素をちゃんと理解しないと速く走ることができない。

あらゆるeスポーツの中で最も現実のスポーツに近いのが「グランツーリスモSPORT」をはじめとするeモータースポーツと呼ばれるドライビングシミュレーターによる競技であり、上手になるには知識を頭に入れる時間と実践が必要になってくる。

佐々木拓眞のプロフィールシート(Playstation公式YouTubeより抜粋)
佐々木拓眞のプロフィールシート(Playstation公式YouTubeより抜粋)

それだけにプレイヤーになって1年という短期間で佐々木が日本一に輝いたのは驚きであったし、とても価値のある事である。佐々木はYouTubeでも自身のレースを配信したりしながら練習をしてきたプレイヤーで、タイムアタックの解説動画などもアップロードしている。

1年目で決勝本大会に進出したことで、ライバルたちに気後れしたことはなかったかと尋ねると「少しはありました」と正直な気持ちを吐露したが、この1年を振り返ってこうコメントした。

佐々木「他のトッププレイヤーの皆さんの走りを研究して、FIAグランツーリスモ選手権などの(オンライン)レースにたくさん出場して経験を積見ました。自分の練習量や、両親など周りの応援への感謝といった気持ちを全部ぶつけたので勝てる自信はありました。これまでの大会で活躍する選手の方を相手にした気後れもあり、その中で勝つことができて、すごく自信がつきました。もう「最高」のひと言です」

佐々木は金髪のちょっとヤンチャそうなルックスながら、丁寧な言葉遣いでコメント力もあり、今回の日本一獲得は他のライバルプレイヤー達に大きな刺激を与えることは間違いない。来年はまだ18歳未満のため、FIAグランツーリスモ選手権のワールドツアーなど公式国際レースには参戦できないが、今後グランツーリスモを代表するドライバーに成長していくのは確実だろう。

(動画:グランツーリスモSPORT部門 本大会 決勝|全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2021 MIE/実況は筆者が担当)

また1年目で日本一に輝いたという事実はこれから「グランツーリスモ」を始めてみようと考えているプレイヤー予備軍に希望を与えたのではないだろうか。来年3月には新作「グランツーリスモ7」(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)がプレイステーション4、5で発売予定となっており、更なる盛り上がりが期待される。

なお、「一般の部」では昨年、FIAグランツーリスモ選手権など世界タイトル三冠を達成した宮園拓真(兵庫県代表)がついに優勝して日本一に。U-18の部の佐々木拓眞(滋賀県代表)と字が違うが、偶然にも名前は同じ「たくま」だった。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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