日本はオリンピックの話題一色だが、F1はヨーロッパでの連戦締めくくりとして8月1日(日)にハンガリーGPが開催される。このレースが終わると8月29日(日)決勝のベルギーGPまで約1ヶ月間のサマーブレイクが設けられており、ハンガリーGPは前半戦の締めくくりとして重要な1戦だ。

悲劇的な結果のイギリスGP

F1史上初の予選レースが実施された第10戦「イギリスGP」。歴史的な大会になるはずだったレースは、決勝レースでのルイス・ハミルトン(メルセデス)とマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)の首位争いでの接触、フェルスタッペンのリタイアで赤旗中断に。ハミルトンが10秒ペナルティを受けながらも母国優勝を飾るが、ハミルトンに対する差別的な表現を用いたコメントがSNSに多数書き込まれるなど、せっかくの名勝負のチャンスが何とも後味の悪い結果になってしまった。

イギリスGPでの接触シーン
イギリスGPでの接触シーン写真:ロイター/アフロ

これでランキング首位のマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)=185点、2位のルイス・ハミルトン(メルセデス)=177点のポイント差は僅か8点差に縮まった。

ホンダにとって悲劇だったのはパーツ交換によってピットスタートを強いられたセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)がポイント圏内まで追い上げられなかったこと。最後はファステストラップの1点を取る作戦に切り替え、完全なノーポイントレースは避けられたものの、レッドブル・ホンダ=289点、メルセデス=285点と両コントラクターのポイント差は僅か4点差になってしまったのだ。

セルジオ・ペレス
セルジオ・ペレス写真:ロイター/アフロ

モナコGPから5連勝の快進撃を続けてきたレッドブル・ホンダだったが、イギリスGPではアップデートパーツを投入したメルセデスが復調。クラッシュなどの不運もあり、築いたマージンが一気に無くなったのはかなりの痛手である。

第3期F1唯一の優勝地へ

かつてのアイルトン・セナvsアラン・プロストミハエル・シューマッハvsデイモン・ヒルなど接戦状態の王者争いで接触によるクラッシュが発生し、チャンピオン決定に大きな影響を与えた例もある。

レッドブルvsメルセデスでメディアを使ったそれぞれの主張がニュースとして配信され、ファンの間でも意見が割れて分断の状態。良い雰囲気ではない中で行われるハンガリーGPは今季の流れを決定づける重要なレースになりそうだ。

母国優勝を果たすも批判され続けているハミルトン
母国優勝を果たすも批判され続けているハミルトン写真:ロイター/アフロ

ハンガロリンクサーキットで開催されるハンガリーGPはホンダにとっては思い出深いサーキットだ。第2期F1活動時代(1983年〜92年)にはウィリアムズ・ホンダ、マクラーレン・ホンダで5回優勝しているが、やはり印象が強いのは2006年のジェンソン・バトン(当時ホンダ)の優勝であろう。

ジェンソン・バトン(2006年)
ジェンソン・バトン(2006年)写真:アフロ

2006年のハンガリーGP優勝は第3期F1活動(2000年〜2008年)で成し遂げた、たった1回の優勝だった。ホンダは「BAR」のエンジンサプライヤーとして2000年にF1活動を再開するも、当時は「フェラーリ」の黄金期で、第2期の栄光は見る影もなく、敗戦状態が続いていた。

F1におけるタバコ広告禁止の影響で、「BAR」から株式を買収し、「ホンダ」として1968年以来38年ぶりのフルワークス体制に。体制が大幅に変更される中、BAR・ホンダのエースとして何度も表彰台に登っていたバトンと共に掴んだ悲願の優勝だった。

2006年のホンダF1
2006年のホンダF1写真:アフロ

この第3期は第2期の栄光とあまりに落差が大きいことから、黒歴史的に見られがちだが、この勝利が無ければホンダの第4期参戦も、今年の躍進もなかったと言える。第3期唯一の勝利に大きな貢献をしたのが現ホンダ・テクニカルディレクターの田辺豊治。2006年当時、田辺はジェンソン・バトンのチーフエンジニアを務めており、当時の苦労、悔しさ、そして喜びを全て知る人物だ。

ホンダのテクニカルディレクター田辺豊治(左から2人目)
ホンダのテクニカルディレクター田辺豊治(左から2人目)写真:ロイター/アフロ

2012年に鈴鹿サーキットの50周年イベントに向けて、2006年の優勝マシン、ホンダRA106がレストアされ、デモンストレーション走行を行なった。この当時はホンダがF1に復帰するという根拠のない噂はあったものの、プロジェクトは何も走り出していない状態だった。電子制御のウェイトが増え、動態保存が簡単ではない2000年代のF1を再起動させ、多くのファンの前で走らせたことは2015年以降のF1復帰への原動力となったことは間違いない。

あの時の優勝が無ければ今は無かったかもしれない。ハンガリーGPはホンダにとって特別なグランプリだ。

鈴鹿のイベントで走ったホンダRA106【写真:DRAFTING】
鈴鹿のイベントで走ったホンダRA106【写真:DRAFTING】

ルイスvsマックス、真っ向勝負

そんなハンガロリンクのハンガリーGPだが、2019年、2020年とルイス・ハミルトン(メルセデス)とマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)による優勝争いの舞台となっている。

2019年はレッドブル・ホンダとしての体制初年度ながら、オーストリアGP、ドイツGP優勝で好調の状態でハンガリーGPが開催された。フェルスタッペンは自身初のポールポジションを獲得し、これはホンダの第4期F1活動でも初めてのポールポジションになった。決勝ではタイヤ戦略でハミルトンに逆転されている。

2019年 ポールポジション獲得をクリスチャン・ホーナーと祝うフェルスタッペン
2019年 ポールポジション獲得をクリスチャン・ホーナーと祝うフェルスタッペン写真:ロイター/アフロ

そして昨年はシーズン第3戦として開催されたが、フェルスタッペンは予選で伸び悩み、決勝ではグリッドへ向かうレコノサンスラップでクラッシュと不運続き。しかし、チームが驚くべき早さでマシンを修復し、スタートにも成功して2戦連続の表彰台を獲得した。この時も優勝はハミルトンだった。

ということで、2018年以降、ハンガリーGPはルイス・ハミルトンが3連勝中。しかもこのコースではルーキーイヤーの2007年(当時マクラーレン)から7回ポールポジションを獲得しているということで、ここはハミルトンにとって得意コースの一つと言える。

2020年ハンガリーGPの表彰台
2020年ハンガリーGPの表彰台写真:代表撮影/ロイター/アフロ

2003年からレイアウトが変わっておらず、ハンガロリンクは抜きどころの少ないサーキットである。予選順位と決勝レースのタイヤ戦略が重要な鍵を握るサーキットであるが、雨によってレースが面白くなることも多く、2006年にジェンソン・バトンが優勝したレースもウェットからドライへと路面コンディションが変化していくレースだった。この時、バトンはグリッド降格で14番手から追い上げて優勝するという奇跡的な展開のレースで優勝している。

そういう意味では意外な伏兵が勝つ可能性も秘めているハンガリーGPだが、ハミルトンvsフェルスタッペンのチャンピオン争いのハイライトとして見逃せないレースになるだろう。