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42歳ロッシは引退か、それとも現役続行?所有チーム「VR46」は最高峰クラスに本格参戦へ

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
ヴァレンティーノ・ロッシ(写真:ロイター/アフロ)

オートバイレース界の生きる伝説、ヴァレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)が自身の進退について初めて言及した。

The start of the season until this moment was not fantastic, so under this point of view, I think that will be very difficult that I will race next year. (ここまでのシーズン序盤は素晴らしいものではなかったし、そういう点で言えば、来季僕がレースをするのは難しいと思う)

ロッシはMotoGP第9戦オランダGPを前にした記者会見でこう語ったのだ。

不振のロッシ、今季限りで引退か?

500ccクラスを含む最高峰クラスで7度のワールドチャンピオン、250cc、125ccクラスのチャンピオンを加えると合計9度のタイトルを獲得してきたヴァレンティーノ・ロッシ。

MotoGPのスーパースター、ヴァレンティーノ・ロッシ
MotoGPのスーパースター、ヴァレンティーノ・ロッシ写真:ロイター/アフロ

世界一の座からは2009年以来12年も遠ざかっているが、彼を王座から引きずり降ろしたホルヘ・ロレンソ、ケイシー・ストーナーらのワールドチャンピオン達はすでに引退しているし、彼が500ccで最高峰クラスを走り出した当時のライバル達はほとんどがレースから引退してしまっている。国内レースでは40代の現役選手は珍しくないが、世界選手権の最高峰クラスを経験したライダーが40歳を過ぎてもずっとMotoGPクラスで走り続けていること自体がアンビリーバブルなことなのだ。

ヴァレンティーノ・ロッシ(2020年)
ヴァレンティーノ・ロッシ(2020年)写真:ロイター/アフロ

しかし、そんなロッシの引退の時が近づいていることは誰もが意識していることだ。ロッシは昨年限りでヤマハのワークスチームを離脱。昨年3勝をマークしたファビオ・クアルタラロと入れ替わる形で、サテライトチーム「ペトロナスヤマハSRT」に移籍した。

ロッシは4ストロークエンジンのMotoGPクラスがスタートした2002年以来、ホンダ、ヤマハ、ドゥカティ、再加入のヤマハとずっとワークスチームのエースライダーとして君臨し続けてきたが、今季のサテライトチーム移籍はいよいよキャリアの締めくくりが近づいてきたことを示唆するものであった。

ペトロナスヤマハのYZR-M1を駆るロッシ
ペトロナスヤマハのYZR-M1を駆るロッシ写真:ロイター/アフロ

1年契約で「ペトロナスヤマハSRT」で挑んだ2021年シーズンだが、彼の上述のコメントの通り、成績は芳しくない。開幕戦カタールGPは4番グリッドを獲得し、新体制へのファンの期待を増幅させたものの、決勝レースでは厳しいレースが続く。最近は15番手以降のグリッドになることも多く、決勝での最高位は10位と苦戦している。

シーズン前半戦にロッシが一度も表彰台に上がれなかったシーズンは過去にない(MotoGPクラス)。今年は欠場がないにも関わらず、ランキングが19位という厳しい状況だ。

所有チームがドゥカティで参戦を発表

今回、ロッシが記者会見で進退に対する言及を行なったのは成績不振によるものではない。オランダGPの直前にロッシ自身がオーナーを務めるチーム「VR46」が来季からMotoGPクラスにフル参戦することが発表されたのだ。

ロッシがオーナーを務めるSKY Racing Team VR46 (2020年)
ロッシがオーナーを務めるSKY Racing Team VR46 (2020年)写真:ロイター/アフロ

VR46はロッシがイタリア人ライダーの育成を目的に作ったプロジェクト、VR46アカデミーの卒業生を走らせるチーム。2014年からはMoto3、2017年からはMoto2に参戦し、昨年2020年はMoto2で初のチームチャンピオンを獲得した。

今季からは同チームに所属し、ロッシの異父兄弟でもあるルカ・マリーニエネア・バスティアニーニがMotoGPクラスにステップアップ。エスポンソラマレーシングとのコラボレーションでドゥカティを走らせているが、来年2022年以降はVR46が独立したチームとしてドゥカティを2台体制で走らせることが発表された。ライダーラインナップは未発表のままだ。

ロッシの弟、ルカ・マリーニ
ロッシの弟、ルカ・マリーニ写真:ロイター/アフロ

VR46チームのメインスポンサーはサウジアラビアの国営石油会社のAramco(アラムコ)。同社は4輪レースの最高峰、F1にも積極的に投資を行っており、チームオーナーであるロッシがVR46で現役を続行することを望んでいる。

ロッシは記者会見で「(スポンサーの)サウジアラビア王子は来年、自分のチームでドゥカティでレースをするように推してくれているけど、今の段階ではそれはとても難しいことだ」と付け加えた。

今季はコラボチームでMotoGPに参戦するVR46 ライダーはマリーニ
今季はコラボチームでMotoGPに参戦するVR46 ライダーはマリーニ写真:ロイター/アフロ

VR46は若手育成を目的に進んできたプロジェクトであり、そこに自らが乗り、サポートしてきた若手と同じ条件で走ることは考えにくい。しかもロッシがドゥカティのワークスライダーだった時代は10年近く前のため、乗り慣れないドゥカティ・デスモセディチでレースすることは現実的ではないのだろう。

引退か、続行か?アッセンの結果次第か

今季、ヤマハはワークスチームに移籍したファビオ・クアルタラロが5回のポールポジション、優勝3回でシリーズをリードしている。

一方でロッシが乗る「ペトロナスヤマハSRT」は昨年までのサテライト、ワークスの形勢逆転状態から一転し、厳しいレースが続いている。昨年3勝をマークしてランキング2位を獲得したフランコ・モルビデリが3位表彰台に1度登っただけという状況だ。

チームとしても苦戦しているペトロナスヤマハSRT
チームとしても苦戦しているペトロナスヤマハSRT写真:ロイター/アフロ

今週末のオランダGPではモルビデリがトレーニング中に左膝に怪我を負い、欠場することが決まった。代役に起用されるのはスーパーバイク世界選手権で野左根航汰のチームメイトを務めるアメリカ人、ギャレット・ガーロフだ。

ガーロフは昨年もロッシが新型コロナウィルスに感染し欠場した際に急遽、YZR-M1に初日だけライディング。レース出場は叶わなかったものの、スーパーバイク世界選手権でも表彰台に乗るなど高い評価を受けているライダーである。

前回は体験しただけに終わったため、MotoGPでは実質的に初レースとなるガーロフ。2020年にアッセンでスーパーバイク世界選手権のレースがなかったため、2019年までアメリカでレースをしていたガーロフにとって、TTサーキット・アッセンのコースも初めてだ。

ヴァレンティーノ・ロッシ(中央)
ヴァレンティーノ・ロッシ(中央)写真:ロイター/アフロ

一方でロッシは最高峰クラスの出場が350戦以上。アッセンは最高峰クラスで8度も優勝を飾っているし、250cc、125ccでも優勝し、通算10勝をマークしている、まさにヴァレンティーノ・ロッシのためのコース。ちなみに最後に優勝したのも2017年オランダGPだった。

「(来季以降のプランは)まだ決めていない。これからの夏休み中に深く考えようとしているからね」とオランダGP以降の1ヶ月のサマーブレイクで進退を決めるとロッシは語った。

新人ガーロフがチームメイトという極端な比較対象がと共に挑むアッセンでの戦い。ガーロフの勢いに負けて引退を予期させるレースになってしまうのか、それともまたもやアッセンで奇跡を起こし、現役続行を決断するのか、全レースファンが目が離せないオランダGPになりそうだ。

2015年オランダGPで優勝したロッシ
2015年オランダGPで優勝したロッシ写真:ロイター/アフロ

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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