F1に限らず、ルマン24時間など伝統のレースも延期に。レース界は戦後最大級の苦境を迎えた。

F1バーレーンGP(2019年)(写真:ロイター/アフロ)

春分の日(3月20日)を含む3連休。本当なら春休みを迎えた子供達でどこのアミューズメントパークもスポーツイベントも大賑わいになっているはずだった。

新型コロナウィルスの感染拡大で3月の興行型レースイベントは自粛要請もあり延期に。この連休は鈴鹿サーキット(三重県)で自動車レースの「スーパー耐久シリーズ」開幕戦が開催される予定になっていたのだ。

非常事態宣言で国際レースは全て延期に

既報の通り、ヨーロッパ諸国や北米で新型コロナウィルス感染が拡大し、あちこちで外出禁止などの措置が取られている。もはや選手やチームスタッフの渡航が困難とかの理由ではなく、無観客でもレースを実施している場合ではなくなってしまった。

チームスタッフに感染者が出たことで土壇場で「オーストラリアGP」の中止を発表した「F1世界選手権」は続くバーレーンGP、ベトナムGP、中国GPの延期が決定し、少なくとも5月のオランダGPまではレースが行われないことが決まっている。

(バーレーンGP、ベトナムGPの延期を伝えるF1公式ツイッター)

F1は8月に予定していたサマーブレイクを前倒して、3月4月の間に21日間の工場での操業停止が決定。スケジュールの組み直しが今後行われていく。

気になるのは、どの時期からヨーロッパでのレースが再開していくのかということだ。5月にはF1がオランダ、スペイン、モナコでレースを予定しているが、現在のヨーロッパの感染拡大の状況を見れば開催は現実的ではない。

そして、5月末から6月にかけては、1907年から続く英国のオートバイ公道レース「マン島TTレース」、1923年から続くフランスの「ル・マン24時間レース」などビッグイベントが予定されていたが、マン島TTレースは中止、ル・マン24時間レースは9月19日~20日決勝に延期が発表になった。

つまり、ヨーロッパでは6月でもレースイベント開催は現実的ではないという判断である。

戦後最大の苦境が訪れた

伝統的なレースイベントは第二次世界大戦の時期を除いて、よほどのことがない限り、当たり前のように開催されてきた。

公道で開催される「マン島TTレース」は毎年、命を落とすライダーが居るオートバイレースであるが、戦後に中止されたのは2001年の1回だけ。これは家畜の伝染病、口蹄疫がヨーロッパで流行していたことに起因するものだった。

(レース開催の中止を伝えるマン島TTレースのツイッター)

フランスの「ル・マン24時間レース」は戦後の1949年に再開されて以来、1度たりとも中止されたことはない。4月に開催を予定していた2輪の「ル・マン24時間レース」も2020年9月5日~6日に延期されており、フランスのル・マンでは9月に2回も24時間レースを開催するという前代未聞のスケジュールとなった。

(6月開催が恒例のル・マン24時間は9月に延期/ル・マン24時間公式ツイッター)

フランスのお隣、モナコで開催されるF1の「モナコGP」(5月24日決勝)は今はまだ開催の日程変更はアナウンスされていない(3月20日追記:モナコの国家元首アベニール2世が陽性反応となり、延期ではなく中止が発表された)。

なお、F1で最も重要なレースイベントとして知られる「モナコGP」だが、F1世界選手権が始まった1950年代は開催されなかった年もある。ちなみに、1952年はF1ではなくスポーツカーレースとしての開催だった(1955年以降はF1として連続開催)。

こういった伝統イベントは歴史を重んじるヨーロッパではいわば「宝物」のような存在であり、開催されないとなると戦後最大の一大事と言える。

レースのプロモーターとしては伝統のイベントは何としてでも開催したいところだろう。しかし、新型コロナの影響は目処が立たず、ヨーロッパでの現実的なレース開催は9月までなので、日程調整は困難を極めると考えられる。

国内レースも軒並み延期に

国内レースは3月から開幕を迎えるはずだった「スーパー耐久」「スーパーフォーミュラ」「SUPER GT」そして2輪の「全日本ロードレースJSB1000」の開幕戦がすでに延期。

(開幕戦・岡山の延期を伝えるSUPER GTの公式ツイッター)

ファン感謝イベントや各メーカー主催のイベント、モーターサイクルショーなどの展示イベントなど、ありとあらゆるイベントが中止されている今、無観客での開催も相当厳しくなってきている。

観客の安全、健康を守ることはもちろんだが、日本のモータースポーツには海外在住の選手も数多く参戦しており、入国が厳しくなってきている中では万全の状態でレースができるとは言い難いところだ。

レースイベントの延期が相次いだ事例としては2011年の東日本大震災の時が記憶に新しい。施設が被災したサーキットもあったが、「SUPER GT」はゴールデンウィークから、「フォーミュラニッポン」(現:スーパーフォーミュラ)は5月中旬からレースが再開された。

また、もっと昔の1974年は前年に発生したオイルショック(石油危機)の影響、相次ぐ死亡事故の報道などがあり、社会情勢を鑑み、レースが開催されない時期があった。

当時、鈴鹿サーキットでは1月から毎月のようにレースを開催するのが恒例だったが、1974年にレースが開催されたのは2輪、4輪ともに4月からスプリントレースが開催された。しかし、耐久レースの開催は厳しく、「鈴鹿1000km」などの耐久レースも休止されている(鈴鹿1000kmの復活は1980年から)。

歴史を振り返れば、日本のモータースポーツが苦境に立たされた時は過去にもある。そして、その度に関係者が力を合わせて苦境を乗り越えてきた。ただ、今回のコロナショックは全くの想定外で、歴史上で最大の苦境なのかもしれない。

僕自身、レースが開催されないことがここまで精神的に辛いものとは思いもしなかった。レースが再開し、幸せを感じられる日が1日も早く来ることを祈ろう。