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ニューマシン続々発表!2020年のF1合同テストは2月19日からバルセロナで開催

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
イタリアでお披露目されたフェラーリSF1000【写真:Ferrari】

2020年の「F1世界選手権」開幕まであと1ヶ月。いよいよ2月19日(水)からスペイン・バルセロナ(カタロニア・サーキット)で開催されるF1合同テストに向け、今季を戦うニューマシンが姿を現し始めた。

テスト日程は6日に短縮

2月19日(水)に向けベールを脱いだ各チームのニューマシンは一様にコンサバティブ(保守的)な印象だ。昨年型と比べてフォルムに劇的な変化や、奇抜なデザイン採用はなく、いわゆる踏襲型という雰囲気である。

それもそのはず。F1は来季の2021年シーズンから大きな車両規定の変更が行われる。車体(シャシー)の空力面が大幅に変更され、タイヤのホイールサイズが現行13インチから18インチに拡大し、タイヤ外径も大型化される。つまりは現行規定とは全く異なるF1マシンへと生まれ変わるのが2021年だ。

2020年は細かな規定変更はあるものの、大筋は変わらない規定で争われる最後の年となるため、積み重ねたデータを基にした踏襲型で戦うというのが正攻法と言える。僅か1年のためにドラスティックな変更で冒険をするよりもデータを解析してブラッシュアップしたマシンで各チームは戦うことになる。

シルバーストーンでシェイクダウンされたメルセデスの20年型マシン「W11」【写真:DAIMLER】
シルバーストーンでシェイクダウンされたメルセデスの20年型マシン「W11」【写真:DAIMLER】

2019年もルイス・ハミルトン(メルセデス)がドライバーズ王者に輝き、コンストラクターズ(製造社)部門は「メルセデス」の6連覇となった。2014年にハイブリッドのパワーユニット規定になってから絶対王者として君臨し続ける「メルセデス」だが、2017年以降はハミルトンの実力とチームとしての総合力で王座を奪っているものの、3強と呼ばれる「レッドブル・ホンダ」と「フェラーリ」に差を詰められている。

昨年は勝率7割以上を獲得した「メルセデス」だが、シャルル・ルクレール(フェラーリ)の台頭、2019年は3勝をマークした「レッドブル・ホンダ」の予想を上回る躍進に押され気味の要素が多くなってきた。その3強がドライバーラインナップの変更を行わない今季こそ、絶対王者「メルセデス」にライバルが仕掛ける最大のチャンスでもある。

そんな中、今季の事前テストは2月19日〜21日、2月26日〜28日の合計6日間に減らされるのだ(2019年は合計8日間)。コロナウィルス感染者拡大の影響で中国GPは延期が発表されたが、F1史上最多の全22戦という過密スケジュールで、シーズン中のテストも禁止されているとあって、例年以上に6日間のテストでのメニュー消化、データ収集が重要になる。

レッドブル・ホンダの熟成に期待

今季の注目はやはり日本期待の「レッドブル・ホンダ」の仕上がりであろう。昨年から3強の一角「レッドブル」にパワーユニットを供給し始めたホンダにとっては積み上げたデータと経験を活かし、王者に挑む最大のチャンス到来と言えるシーズンだ。

フィルミングデーでシルバーストーンを走行するレッドブル・ホンダのRB16【写真:RedBull】
フィルミングデーでシルバーストーンを走行するレッドブル・ホンダのRB16【写真:RedBull】

他陣営の移籍が根強く噂されていたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が年明けに2023年までのレッドブルとの契約延長を発表したが、これは若くしてF1にデビューしたフェルスタッペンが初のドライバーズ王者を狙うに相応しい条件とポテンシャルが「レッドブル・ホンダ」にあり、規定が変わる来季も含めてチャンスがあるという証だ。長く続くメルセデス絶対王政に飽き飽きしているファンが多い中、レッドブル、ホンダ、フェルスタッペンの3者の活躍は今季最大の見所だ。

また、フェルスタッペンにとっては今季から念願だった母国オランダGPがカレンダーに加わる。1985年以来25年ぶりにザントフォールトで開催されるオランダGPは、世界中に現れるフェルスタッペン応援団でオランダのイメージカラーであるオレンジ一色に染まるだろう。そういった母国GP開催(第5戦)がフェルスタッペンにとって波に乗るキッカケになれば、今季のF1は例年以上にドラマチックなシーズンになるはずだ。

チャンピオンに期待がかかるフェルスタッペン【写真:RedBull】
チャンピオンに期待がかかるフェルスタッペン【写真:RedBull】

「レッドブル」陣営にとっては新規定導入となる2021年以降のフェルスタッペンの相棒選びも重要な課題となる。「レッドブル・ホンダ」に乗るアレクサンダー・アルボンとトロロッソから改称した「アルファタウリ・ホンダ」に乗るピエール・ガスリー、ダニール・クビアトがその筆頭候補だが、フェルスタッペンがタイトル争いに加わるためには当然、彼らがすぐ後に続くパフォーマンスをシーズン通じて見せつけなければならない。事前テストから3人の役割が重要となる。

斬新なカラーイメージになったアルファタウリのAT1【写真:RedBull】
斬新なカラーイメージになったアルファタウリのAT1【写真:RedBull】

ルクレールの速さが光るか?

フェルスタッペン中心の体制となっている「レッドブル」に対して、悩ましいベテランと若手の2トップ体制(平等)であることを体制発表でも強調しているのが「フェラーリ」。昨年もチーム内のライバル関係が同士討ちなどの不幸な結果を招いた「フェラーリ」は今季こそドライバーズ選手権で13年、コンストラクターズ選手権で12年も遠ざかっているタイトルを手中にしなければならない。

ニューマシンはSF1000と名付けられた【写真:Ferrari】
ニューマシンはSF1000と名付けられた【写真:Ferrari】

今年、「フェラーリ」はシーズン中にF1参戦1000レース目を迎えることになっており、発表された今季のマシン名は「SF1000」(SF=スクーデリア・フェラーリ)。これまた昨年の踏襲型であるが、昨年の「SF90」はポールポジション9回、優勝3回とトータルパフォーマンスでは「レッドブル・ホンダ」を上回るポテンシャルがあっただけに、正常進化が順調に進めば、3強の面白いレースが期待できる。

「フェラーリ」は昨年のようにシャルル・ルクレールがベテランのセバスチャン・ベッテルを上回る速さを見せつけることになるのだろうか。昨年はフェラーリ移籍初年度ながら2勝を飾ったルクレールがいよいよ本領を発揮する2020年はライバル勢にとっても怖い存在になるだろう。F1で最も長い歴史を誇り、1000レース目の節目を迎える「フェラーリ」。王座を獲得できる要素は揃っているだけに求められるのはチームの最適なマネージメントだろう。

ダブルエースの2トップ体制、ルクレールとベッテル【写真:Ferrari】
ダブルエースの2トップ体制、ルクレールとベッテル【写真:Ferrari】

バルセロナテストでは初日の19日(水)はセバスチャン・ベッテルが終日担当。20日(木)の午前がベッテル、午後をシャルル・ルクレールが担当し、ルクレールはそのまま21日(金)の終日を担当する。26日(水)以降のドライバー担当は1回目の3日間のテスト結果とデータを分析した上で決定するとしている。

また、「フェラーリ」のジュニアチーム的役割もある「アルファロメオ」は今年もキミ・ライコネン、アントニオ・ジョヴィナッツィのドライバーラインナップを維持。40歳を迎えたライコネンだが、昨年の前半戦に見せた連続入賞の走りは流石、元ワールドチャンピオン。一方でジョヴィナッツィはライコネンの後塵を拝することが多かったものの今季もシートを獲得。「フェラーリ」の未来を担うドライバーだけに、今季は特に目が離せないシーズンとなるだろう。

勢力図としては「メルセデス」「フェラーリ」「レッドブル・ホンダ」の3強が中心となることは変わらないと考えられる今季。その勢力図がさらに密で濃いものになるかどうかを占う上でもバルセロナテストは目が離せない。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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