フォーミュラE開幕!ポルシェ、メルセデスも参戦し、世界の自動車メーカーがEV技術を競う。

シーズン6を迎えるフォーミュラE 【写真:FIA Formula E】

電気自動車の「FIA フォーミュラE選手権」のシーズン6(2019年~2020年)がいよいよ11月22日(金)にサウジアラビアのディルイーヤで開幕する。シーズン5から第二世代の新型シャシー「Gen2」が登場し、その初年度は開幕戦から8レース連続で勝者が異なり、9人のウイナーが生まれる大混戦になった。

そんな「フォーミュラE」は急速なEV(電気自動車)へのシフトを行うヨーロッパの自動車メーカーがワークス参戦し、今季からは耐久王「ポルシェ」とF1王者の「メルセデス」が加わってさらに華やかになる。今回は今季の見どころをプレビューしよう。

チャンピオンはDSオートモービルズ

シーズン5(2018年~19年)はフォーミュラEが新たなステージへと突入したシーズンとなった。電力量が約2倍になったニューマシン「Gen2」の投入だけでなく、レースフォーマット(=レース形式)も大きく変更され、決勝レース中にはマリオカートをイメージした「アタックモード」が導入されるなど新世代のモータースポーツファンの心を捉えるべく様々な改革が行われた。

DSテチータ【写真:FIA Formula E】
DSテチータ【写真:FIA Formula E】

新車導入、ルール変更で、前述の通りの大混戦となり、毎戦ごとに新たなウイナーが誕生し、ランキング首位が頻繁に入れ替わるという史上最も見応えのあるシーズンになった。そのシーズン5を制覇したのはフランスの「DSオートモービルズ」がパワートレインを供給する「DSテチータ」。シーズン3から参戦する中国国籍のチームとDSオートモービルズのコンビで初のシーズンながら、シーズン後半に元F1ドライバーのジャン・エリック・ベルニュ(フランス)がトータル3勝をマークする躍進を見せ、ドライバーズ王者とチーム王者を勝ち取った。

フォーミュラE初の連覇を達成したベルニュ【写真:FIA Formula E】
フォーミュラE初の連覇を達成したベルニュ【写真:FIA Formula E】

「DSオートモービルズ」はシトロエンから独立したハイパフォーマンスブランドで、日本でも同社の市販車は個性的なデザインで人気を呼んでいる。フォーミュラEにはシーズン2からシトロエンが参戦。シーズン4ではベルニュがドライバーズ王者を獲得し、シーズン5ではベルニュの史上初となる2連覇と同時についにチーム王者にも輝いた。今季はアンドレ・ロッテラーの「ポルシェ」移籍に伴い、「BMW」からアントニオ・フェリックス・ダコスタ(ポルトガル)を獲得。チーム力は最もまとまっているだけに今季も常にシリーズの中心にいるチームになるだろう。

新規参戦のポルシェとメルセデス

サウジアラビアで開幕する「フォーミュラE」のシーズン6の注目は何と言っても「ポルシェ」と「メルセデス」のワークス参戦だ。ル・マン24時間レースで19回もの総合優勝を成し遂げた耐久王「ポルシェ」とF1世界選手権で今季も圧勝して6連覇中の「メルセデス」の参戦は、フォーミュラEの隆盛を象徴するトピックスだ。

ポルシェがリリースした初のEV、タイカン【写真:PORSCHE Japan】
ポルシェがリリースした初のEV、タイカン【写真:PORSCHE Japan】

化石燃料を使用する内燃機関の自動車からゼロエミッションの電気自動車(EV)へと一気に舵を切ったヨーロッパの自動車メーカーたち。「ポルシェ」は初のEVとなるタイカンを今年リリースし、「メルセデス」はEQCを日本でもリリース。ドイツを代表するスペシャリティブランドですらEVに積極的な取り組みを見せる時代になった。そんな中で彼らはハイブリッドのル・マンとF1に参戦してきたが、正真正銘のEVフォーミュラカーレースであるフォーミュラEに挑戦する。ついにモータースポーツの巨人たちの参戦だ。

メルセデスのフォーミュラEマシン【写真:FIA Formula E】
メルセデスのフォーミュラEマシン【写真:FIA Formula E】

そんな中、「メルセデス」はDTM(ドイツツーリングカー選手権)やF3でレース活動を委託した「HWA」をシーズン5から参戦させ、ワークス参戦に向けた足固めを行なってきた。EVレース挑戦を強烈にアピールする「メルセデス・ベンツEQ・シルバーアロー01」を投入し、ワークスとしての処女航海に出る。ドライバーはストフェル・バンドーン(ベルギー)と今年のF2チャンピオンであるニック・デ・ブリース(オランダ)だ。また、メルセデスはF1チーム代表でもあるトト・ヴォルフの妻、スージー・ヴォルフが代表を務める「ヴェンチュリ」にもパワートレインを供給。ワークスと合わせて4台体制でデータを取ることで後発参戦の遅れを取り戻そうという構えだ。

ポルシェのフォーミュラEマシン【写真:PORSCHE Japan】
ポルシェのフォーミュラEマシン【写真:PORSCHE Japan】

また、「ポルシェ」はル・マン/WECのハイブリッド車(ポルシェ919ハイブリッド)で華々しい結果を残したものの、電気自動車のレース用パワートレイン開発は初めての挑戦となることから「ゼロからのスタート」をスローガンに掲げる謙虚な姿勢で1年目に挑む。ドライバーはニール・ジャニアンドレ・ロッテラー。特にロッテラーはトップチームの「DSテチータ」で2年間戦った経験があり、彼がもたらすフィードバックは「ポルシェ」にとって大きな力になるはずだ。

(動画:ポルシェ、フォーミュラE参戦CM)

アウディ、日産は躍進できるか

モータースポーツ界のビッグネームの参戦により、「フォーミュラE」の開発競争は徐々に激しくなっていくであろう。F1のように巨大なリソースをまだ必要とせず、開発コストも低めなフォーミュラEではあるが、「アウディ」「DS」「ジャガー」「日産」「BMW」「ポルシェ」「メルセデス」と巨大自動車メーカーがこれだけ参戦するレースともなれば、政治的な動きも含めて急速にレースの様相は変わっていくはずだ。

ワークス戦争の舞台となるフォーミュラE【写真:FIA Formula E】
ワークス戦争の舞台となるフォーミュラE【写真:FIA Formula E】

現在は車体はスパーク製の「Gen2」シャシーのワンメイク、タイヤもミシュランのワンメイクであるため、チーム間にそれほど大きな差は生まれない。市街地コースが中心のフォーミュラEはコース全長も短く、接戦のレースとなっている。その接近状態の中で重要なリソースとなるのはドライバーである。フォーミュラEの発足当初はF1を去ったドライバーやF1のチャンスを逃した若手の就職先という印象が否めなかったが、現在はメーカー系チームが勝利するために勝てるドライバーを見極めて採用している。フォーミュラEの未来はまだ読みきれない部分があるが、これだけ多くのメーカーが接戦状態で戦うシーズンは今だけかもしれない。

アウディのフォーミュラEマシン【写真:FIA Formula E】
アウディのフォーミュラEマシン【写真:FIA Formula E】

フォーミュラE初年度から参戦する親分的存在の「アウディ」はシーズン3にルーカス・ディグラッシが王者に、シーズン4はチーム王者に輝いた実力派だが、巨人たちの参戦に最も躍起になっているメーカーだろう。今年もドライバーはルーカス・ディグラッシ(ブラジル)とダニエル・アプト(ドイツ)の2人。ラインナップを変えずに経験値を活かしてチャンピオン奪還を狙う。

BMWのフォーミュラEマシン【写真:FIA Formula E】
BMWのフォーミュラEマシン【写真:FIA Formula E】

同じドイツの「BMW」はシーズン5から米国のアンドレッティ・モータースポーツと組んでワークス参戦し、アントニオ・フェリックス・ダコスタが開幕戦からいきなりのポールトゥウイン。チームランキング5位とまずまずの結果を残したが、ダコスタは「DSテチータ」に移籍。今季はアレクサンダー・シムス(イギリス)に加えて、フォーミュラBMW出身の若手マキシミリアン・ギュンター(ドイツ)を起用する新ラインナップに。10月にバレンシアサーキットで行われたテストではトップタイムをギュンターがマークしており、昨年勝利した開幕戦サウジアラビアでの活躍に期待がかかる。

そして、日本の「日産」はシーズン5にルノーからバッジを変える形で参戦。フォーミュラEで最も経験豊富なフランスのチーム「e.dams」が運営しており、経験値は豊富だ。シーズン5はツインモーターの威力を活かして5回のポールポジションを奪取。しかし、トラブルや接触、クラッシュで勝てるレースを落とすことも多く、後半戦は「日産」として初優勝を飾ったもののチームランキングは4位に留まった。

日産のフォーミュラEマシン(テストカラー)【写真:FIA Formula E】
日産のフォーミュラEマシン(テストカラー)【写真:FIA Formula E】

日本の自動車メーカーの中では電気自動車に最も力を入れている「日産」。チームの実働部隊はヨーロッパが主体にはなっているが、今季も日本代表チームとしてその結果が気になってしまう。ドライバーラインナップはランキング2位を得たセバスチャン・ブエミ(スイス)とオリバー・ロウランド(イギリス)の2人で変わらず。ただ、今季から一発の速さに長けたツインモーターが禁止となったため、予選でいかにその分を取り返せるかが鍵となる。「日産」はレースでも真価が問われるシーズンだ。

J SPORTS、BSフジで放送

今季は全12ラウンド、14レースという史上最多のレース数で行われる「フォーミュラE」。日本での電気自動車レースに対する認知度はまだまだ高いとは言えず、エンジン音がしないEVに対する偏見の目もまだまだ多い。

しかし、テレビで見る分にはエンジン音なしの部分は気にならないし、F1ほどの膨大な知識量も必要ないので非常に見やすいレースである。さらに多くの自動車メーカーの参戦で今季からの華やかさは過去にないものがあり、新しいモータースポーツへの関心を獲得できるシーズンではないだろうか。

フォーミュラE【写真:FIA Formula E】
フォーミュラE【写真:FIA Formula E】

「フォーミュラE」は有料CSスポーツチャンネルの「J SPORTS」が今季も全戦で生中継するほか、練習走行までは英語コメンタリーでYouTubeやFacebook Liveでも視聴可能(予選、決勝はライブ配信なし)。また、無料のBS放送は今季からF1中継でもおなじみのフジテレビが「BSフジ」で後日放送することになった(BS日テレからの変更)。

自動車メーカーのEVへの注力具合、自動車業界の再編の流れを考えれば、今後F1と同等の地位を獲得することになるかもしれない「フォーミュラE」。モータースポーツの王様「ポルシェ」「メルセデス」の参戦で電気自動車レースの新たな時代が幕を開ける。

FIA Formula E 公式サイト(英語)

2019-20(シーズン6)スケジュール

1. サウジアラビア/ディルイーヤ  2019年11月22日  

2. サウジアラビア/ディルイーヤ 2019年11月23日  

3. チリ/サンティアゴ  2020年1月18日  

4. メキシコ/メキシコシティ 2020年2月15日(※)  

5. モロッコ /マラケシュ 2020年2月29日  

6. 中国/三亜 2020年3月21日  

7. イタリア/ローマ 2020年4月4日  

8. フランス/パリ 2020年4月18日  

9. 韓国/ソウル  2020年5月3日  

10. インドネシア/ジャカルタ 2020年6月6日  

11.ドイツ /ベルリン 2020年6月21日(※)  

12 .アメリカ/ニューヨーク  2020年7月11日  

13. イギリス /ロンドン 2020年7月25日  

14. イギリス /ロンドン 2020年7月26日

※印以外は市街地コース

太字は初開催