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スーパーアグリF1の展示も!開通した新名神の鈴鹿パーキング、PIT SUZUKAが面白い。

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
鈴鹿パーキングエリアに展示されたスーパーアグリのF1マシン、SA07

新名神高速道路」の三重県内にある新区間(亀山西JCT〜新四日市JCT=約23km)が3月17日(日)の午後4時に開業。鈴鹿山脈が間近に見える沿線にはスマートインターチェンジ機能を持つ「鈴鹿PA(パーキングエリア)」が設置され、鈴鹿市の新たな玄関口として新区間の開業に合わせてオープンした。この「鈴鹿PA」はモータースポーツの街=鈴鹿らしい展示物が多数あり、話題を呼んでいる。

鈴鹿パーキングエリア
鈴鹿パーキングエリア

貴重なF1マシンの展示

2019年2月23日に行われた開業前の高速道路本線上のF1マシンデモンストレーション走行
2019年2月23日に行われた開業前の高速道路本線上のF1マシンデモンストレーション走行

今回開業したのは、2月23日(土)にF1マシン「フェラーリF187」がデモンストレーション走行した新名神高速道路の新区間。2月のイベントの際には「鈴鹿PA」の駐車スペースがイベント会場として使われ、F1マシンの走行前調整もここで行われていたが、売店やフードコート、トイレなどはまだ建設中で、来場者も中に入ることはできなかった。

3月17日(日)にオープンした「鈴鹿PA」はスマートインターチェンジから入場できるだけでなく、高速道路を利用しなくても入場できるぷらっとパーク機能を備えている。開業翌日の3月18日(月)も近隣の「鈴鹿の森庭園」で梅鑑賞を楽しむレジャー客や周辺の住民らが多数来場し、大いに賑わっていた。

鈴鹿PAのメイン入口
鈴鹿PAのメイン入口

「鈴鹿PA」で話題を呼んでいるのが、モータースポーツの展示だ。オープンからしばらくの間は、2006年〜2008年に「F1世界選手権」に参戦した「スーパーアグリ」のマシン、SA07が入り口に展示され、来場者の注目を集めている。

オープン時に展示されているスーパーアグリSA07
オープン時に展示されているスーパーアグリSA07

スーパーアグリ」は今や伝説となっている日本国籍のF1チーム。1990年のF1日本グランプリ(鈴鹿サーキット)で日本人初の3位表彰台を獲得した鈴木亜久里(すずき・あぐり)が率いたチームで、参戦2年目の2007年には佐藤琢磨が2回の入賞を果たすなど活躍。当時、第3期F1ブームで関心が高かった日本のF1ファンに大きな話題を振りまいた。

展示されている2007年のマシン、スーパーアグリSA07はホンダの2.4L・V型8気筒エンジンを搭載したマシンで、日本国旗と同じ白と赤の配色が印象的。ちなみに、2007年は「F1日本グランプリ」の開催が富士スピードウェイ(静岡県)に移っていた年であり、SA07はF1本戦で鈴鹿サーキットを走っていないマシンだ。

とはいえ、「スーパーアグリ」は日本人初の表彰台を得た鈴木亜久里が様々な困難を乗り越えながら立ち上げた日本国籍のプライベートチーム。日本のF1=ジャパンパワーを語る上で欠かせない存在と言える。偶然にもオープン日の3月17日(日)に開催されたF1オーストラリアGPではホンダのパワーユニットを搭載した「レッドブル」がホンダの復帰後初となる3位表彰台を獲得した。

なお、この入り口の展示コーナーはモータースポーツのシーズンに合わせて定期的に展示マシンが変えられていくとのこと。「スーパーアグリSA07」の姿を間近で見たいモータースポーツファンはドライブの途中に訪問してはどうだろうか。

ライダーのツナギも展示

鈴鹿はF1日本グランプリの開催地であると同時に、1978年から続く伝統のオートバイレース「鈴鹿8時間耐久ロードレース」(鈴鹿8耐)の開催地でもある。

KUSHITANIのライダースーツの展示コーナー
KUSHITANIのライダースーツの展示コーナー

「鈴鹿PA」の売店エリアには壁沿いに、国内外の名ライダーがレースで使用したライダースーツ(ツナギ)がズラリ。これらは1950年代からレース用のレザースーツを製作する老舗メーカー、KUSHITANI(クシタニ)製で、同社のレジャースーツやジャケットはツーリングを楽しむライダーに人気が高い。

また、クシタニはNEOPASA清水(静岡県)や針テラス(奈良県)にカフェ=KUSHITANIカフェを出店。ツーリングライダーたちの集合場所としても利用されている。鈴鹿PAにはKUSHITANIカフェはないが、展示コーナーのある鈴鹿PAは鈴鹿サーキットのレース観戦に向かうライダーたちの新たなミーティングスポットとして定着するかもしれない。スマートインターチェンジを利用する場合にはETCの装備が必要だ。

鈴鹿サーキットをイメージしたトイレ(男性用)
鈴鹿サーキットをイメージしたトイレ(男性用)

そして、驚くべきはトイレ。鈴鹿サーキットで撮影された写真が周囲を壁面を取り囲む部屋が存在する。全ての部屋ではないので、見つけたら幸運と言えるだろう。用を足してレーサー気分になったとしても高速道路、一般道では法定速度を守り、安全運転を心がけよう。

鈴鹿の新しい玄関口として

鈴鹿PAはPIT SUZUKAと名付けられた。(ぷらっとパーク側の入口)
鈴鹿PAはPIT SUZUKAと名付けられた。(ぷらっとパーク側の入口)

鈴鹿PAは「PIT SUZUKA」と名付けられ、鈴鹿市や三重県観光の新たな玄関口としての期待が高まっている。その中で、地域連携スペースとして「モータースポーツコーナー」が設置され、マシンや装備品の展示を通じてモータースポーツの魅力をアピールする。もちろん、売店のお土産物コーナーでは鈴鹿サーキットのグッズや鈴鹿サーキットオリジナルのお菓子なども販売されているので、レース観戦時にお土産を買う時間がなかった時など、モータースポーツファンにとっても利用価値が高い。

鈴鹿のレースファンにはお馴染みの鈴鹿サーキット土産「タイヤカスさきいか」も販売されている。
鈴鹿のレースファンにはお馴染みの鈴鹿サーキット土産「タイヤカスさきいか」も販売されている。

利用客は関西方面から新名神高速道路を利用するドライバーが中心となるが、関東、名古屋などから高速道路を利用する場合でも新四日市JCTで「新名神」と「東名阪」に分岐しているので、新しい選択肢にもなる。ただし、鈴鹿サーキット方向に対しては東名阪の「鈴鹿IC(インターチェンジ)」に比べて少し遠回り(車で5分〜10分)になるので、帰りに休憩や食事を兼ねて「鈴鹿PA=PIT SUZUKA」のスマートインターチェンジから新名神に乗るのも良いだろう。

フードコートには鈴鹿市民のソウルフード「焼肉のみさき屋」のぼつ焼丼がある。同店はアイルトン・セナも食事をした鈴鹿のローカル焼肉店だ。
フードコートには鈴鹿市民のソウルフード「焼肉のみさき屋」のぼつ焼丼がある。同店はアイルトン・セナも食事をした鈴鹿のローカル焼肉店だ。

「鈴鹿PA=PIT SUZUKA」が高速道路の利用客がモータースポーツの聖地、鈴鹿に来たことを感じてもらえる、モータースポーツの発信地として、定番スポットになることを期待したい。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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