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日産の新たな挑戦!フォーミュラEマシンが「ニスモフェスティバル」で国内初走行を披露。

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
ニッサンe.damsのフォーミュラE【写真:日産自動車】

モータースポーツは冬のシーズンオフに突入したが、シーズンオフは各自動車メーカーのイベントが目白押しだ。そんな中、2018年12月2日(日)には富士スピードウェイで恒例の「NISMO FESTIVAL at FUJI SPEEDWAY supported by MOTUL」(以下、ニスモフェスティバル)が開催される。

21回目となるニスモフェスティバルは日産自動車のモータースポーツ活動を担う「NISMO(ニスモ)」がファンとの交流を目的に1997年から開催しているイベントで、懐かしい日産のレーシングカーが多数走行する年に1度のお祭りとしても知られている。今年の見どころを少しご紹介しよう。

今年の目玉はフォーミュラEの走行

そんなニスモフェスティバルで、まだ日本国内で走行シーンを誰も見たことがない最新のレーシングカーが走行する。電気自動車のF1と呼ばれる「フォーミュラE」の新型マシンだ。

初走行する日産のフォーミュラEマシン【写真:日産自動車】
初走行する日産のフォーミュラEマシン【写真:日産自動車】

2018年12月15日にサウジアラビアのディルイーヤで開幕するシーズン5(2018-19年)には日産自動車が「ニッサンe.dams(イーダムス)」として参戦する。このプロジェクトはシーズン4まで「ルノー e.dams」として参戦していたプロジェクトを引き継ぐものだが、フォーミュラEはシーズン5から新型シャシー「Gen2(ジェンツー)」を使用し、技術規則が一新される。

シーズン4まで使用されていた第一世代のマシンに比べて近未来的でアグレッシブなデザインへと変貌した「Gen2」シャシーの投入によって、格段にペースアップした「フォーミュラE」。これまで航続距離の問題からレース中のマシン乗り換えという奇妙なレギュレーションで行われていたレースは、マシンの乗り換えなしの45分+1周という新しいフォーマットで行われることになる。

全く新しいレースへと生まれ変わる電気自動車レース「フォーミュラE」への注目度は年々上昇し、シーズン5には日産の他にアウディ、ジャガー、BMWなどヨーロッパの自動車メーカーがワークス参戦。メルセデス、ポルシェなども将来的なワークス参戦を示唆している。それと共にドライバーラインナップもシーズン5からフェリペ・マッサやストフェル・バンドーンなど新たな元F1ドライバーの参戦も増加することになり、今まさに旬のモータースポーツと言える。

動画:フォーミュラEマシンのテスト走行(日産公式YouTube)

日産はすでにセバスチャン・ブエミ(シーズン2王者)とアレクサンダー・アルボン(FIA F2ランキング3位)の起用を発表しているが、アルボンは来季F1へのデビューが噂されていて、ドライバーラインナップはまだ流動的と言われる。シーズン5の開幕が目前ということで、最終的にどういう編成になるか注目だ。

何と言っても国内自動車メーカーとして初めて参戦するということで期待が高まる日産の「フォーミュラE」プロジェクト。日本国内での初走行という、歴史的瞬間をニスモフェスティバルで見ることができる。12月2日(日)のイベント当日は一体誰がそのステアリングを握り、デモンストレーション走行を披露することになるのだろうか。

モータースポーツ活動60周年

もちろん最新のレーシングカーだけではない。日産は今年、モータースポーツ活動をスタートさせて60周年という節目の年だ。今回のニスモフェスティバルではその60年の歴史の中で重要な役割を担ってきたレジェンドマシンが多数走行する。

「ヒストリックカーデモラン」では1958年のオーストラリアラリーに参戦した日産モータースポーツの原点「ダットサン1000セダン 富士号」や1971年サファリラリーで優勝した「ダットサン240Z」などのラリーカーの走行が往年の日産ファンにはたまらない時間になるだろう。

ダットサン240Z
ダットサン240Z

さらに1966年の日本グランプリ優勝車「プリンスR380」、1980年代のシルエットフォーミュラ「トミカ・スカイライン・ターボ」、1992年のデイトナ24時間優勝車「ニッサンR91CP」、V12エンジンを搭載したグループCカー「ニッサンNP35」などそれぞれの時代を彩ってきた名車が一気に登場することも今回の注目どころになっている。

美しくレストアされたニッサンR91CP
美しくレストアされたニッサンR91CP

もちろん人気の「SUPER GT/全日本GT選手権」の歴史を紡いできたスカイラインGT-R、フェアレディZ、ニッサンGT-Rなども多数走行することになっており、それぞれのマシンがアクセル全開で走行可能な状態で動態保存されていることは日産のモータースポーツの大きな宝と言えるだろう。

当日参加のチャンスも!原点に立ち返る

今年のニスモフェスティバルは走行するマシンの助手席に同乗できるチャンスやマシン走行中のサーキットを観光バスで走るサーキットサファリにも当日受付(先着、抽選)で参加できるチャンスがある。これまで、こういったスペシャルアトラクションは事前受付による当選者のみが参加できたが、まだまだチャンスが残されているのも注目だ。

また、近年のニスモフェスティバルは現役のプロドライバーや日産のレジェンドドライバーたちがコース走行をする機会が多く、かなり過密なスケジュールになっていたが、今年はスケジュールに余裕を持たせ、よりファンと選手が交流できる機会を増やすようにしているとのこと。SUPER GTなどレース本番のサーキットではドライバーに会えるチャンスは限られているが、ニスモフェスティバルでは普段のピリピリしたレースウィークとは違う「素のドライバーたち」と交流できるのも魅力である。

日産の現役ドライバーとレジェンドが集結する【写真:NISMO】
日産の現役ドライバーとレジェンドが集結する【写真:NISMO】

ニスモフェスティバルは元々は1997年のル・マン24時間レース参戦を応援してくれた日産ファンとの交流を目的に、ニスモの社員たちが手作りでスタートさせたイベント。懐かしいレーシングカーの走行などお馴染みとなっているコンテンツは副産物として恒例化したものであり、イベントの元々の原点はファンとの交流なのだ。

今やサーキットで当たり前の光景となっている旗やグッズを振って応援する観戦スタイルはこの交流から始まっている。20回という節目を経た今年の第21回ニスモフェスティバルは再びそのルーツに立ち返る。20年以上の歴史で作り上げられてきた雰囲気は今年も変わらないだろう。そして、新たなパワーの源となる気がしてならない。ニスモフェスティバルとはそういうイベントなのだ。

ニスモフェスティバルの様子
ニスモフェスティバルの様子

ニスモフェスティバル 2018

日時:2018年12月2日(日)

場所:富士スピードウェイ

公式ホームページ

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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