観客動員が過去最多に!再び人気上昇のMotoGPがファンから支持される理由とは?

日本GPでチャンピオン争いを展開したマルケス(左)とドビチオーゾ(右)(写真:ロイター/アフロ)

10月19日(金)~21日(日)の3日間、栃木県の「ツインリンクもてぎ」で開催された「MotoGP日本グランプリ」の観客動員数が過去最多記録となる9万6425人(3日間合計)となった。雲ひとつない晴天に恵まれた決勝日は5万5225人の動員があり、前年比で約7000人の増加。国内市場でのバイク離れが指摘されて久しいが、世界最高峰のバイクレース「MotoGP」は人気復活が顕著だ。

レースそのものが面白い

MotoGP(ロードレース世界選手権)」への関心が近年再び上昇している最大の理由はやはり最高峰の「MotoGPクラス」(排気量1000cc)のレースが面白いことにある。

ホンダ、ヤマハ、スズキという国内メーカーに加え、ドゥカティ、KTM、アプリリアといった外国車メーカーのファクトリーチーム(ワークスチーム)がしのぎを削るMotoGPクラスはとても華やかだ。2018年シーズンはホンダとドゥカティが2強を形成。ヤマハやスズキは未勝利となっているが、レースは毎戦スリリングな展開で、序盤のトップ争いから優勝者候補が絞られたレース後半までドラマに満ちている。単調な展開で終わるレースはほとんどない。

日本GPでのMotoGPクラスのバトル 【写真:MOBILITYLAND】
日本GPでのMotoGPクラスのバトル 【写真:MOBILITYLAND】

レースの面白さを支えているのは、MotoGPクラスに導入されている共通のECU(エンジンコントロールユニット)で、かつてはメーカーが独自に開発した電子制御の核となるECUを2016年から統一。全メーカーが同じマネッティマレリ製のECUを使用するようになって以来、長年の参戦で電子制御のノウハウを積み重ねてきたメーカーと新規参入のメーカーの差が縮まったのだ。

バイク本体で大きなアドバンテージを築くことができないため、各メーカーはとにかく勢いのあるライダーを積極的に起用。開発能力に長けたベテランライダーに頼りがちだった最高峰クラスに、Moto2(600cc)、Moto3(250cc)で顕著な結果を残した若手が多く起用される傾向にあり、毎年のように新陳代謝が進んでいることもドラマを生み出す要素になっている。

百花繚乱、キャラが光るMotoGPライダーたち

近年の「MotoGP」人気に最も貢献しているのは、最高峰クラスに参戦する個性豊かなライダーたちだろう。中でも、深いバンク角までバイクを倒しこむライディングでレースに革命を起こしてきたマルク・マルケス(ホンダ)、最高峰クラスで7度のワールドチャンピオンに輝いているバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)の人気は絶大で、その走りのアグレッシブさはもちろんながら、彼らがレース前後で見せるパフォーマンスもファンの心を惹きつける大きな要素だ。

日本GPでチャンピオンを獲得したマルケス【写真:本田技研工業】
日本GPでチャンピオンを獲得したマルケス【写真:本田技研工業】

それに応えるかのように統括団体の「ドルナ」(スペイン)はテレビ中継用に様々な演出を用意する。毎回、チャンピオン決定の際に恒例となっている祝福の仕掛けも実に巧妙。ツインリンクもてぎの日本グランプリで自身7度目のワールドチャンピオンを決定したマルク・マルケスには、ウイニングランの途中に大きなコインが渡され、巨大なゲーム機を模した特設モニュメントを操作。そこにファミコン風の画面が現れ、「レベル7」にアップしたという表示と共にマルケスのワールドチャンピオンがお祝いされた。

実はこのモニュメントは極秘に設置されており、観戦したファンはレースが終了するまでその存在に気づいていない。サプライズではあるが、マルケスとはチャンピオン決定の際の打ち合わせができていたはずだ。そして、日本=ゲームの聖地という演出はおそらく日本グランプリ限定と考えられるし、レースも含めた全てがまるで仕組まれたストーリーかのように思えてしまう光景だった。もちろんレースは完全な真剣勝負で、しかも超ハイレベルの戦いだ。そんな中で「ドルナ」の見せ方に対するコダワリとそれを理解して参加するライダーたちの信頼関係はまさに完璧なエンターテイメントを作り出した。

動画:MotoGP 公式YouTube 「#JapaneseGP: All of the Best Action」

マルケス、ロッシのプレミアライダーに加えて、最高峰クラスワールドチャンピオン未経験のアンドレア・ドビチオーゾ(ドゥカティ)、今季復活の兆しが見えてきたホルヘ・ロレンソ(ドゥカティ)、新世代のスプリンターと言えるマーベリック・ビニャーレス(ヤマハ)、プライベーターながらワークスを凌駕するヨハン・ザルコ(ヤマハ)など近年のMotoGPライダーは走りもキャラも非常に個性が強く、スター性を持っている。1990年代のバイクレース全盛期を彷彿とさせる、それぞれのファンが応援する対象を見つけやすい状況はMoto GPの人気を高めている要因と言える。また、今季は久しぶりに日本人ライダーの中上貴晶(ホンダ)がレギュラー参戦したことも観客動員の増加に繋がった。

#46 バレンティーノ・ロッシ 【写真:ヤマハ発動機】
#46 バレンティーノ・ロッシ 【写真:ヤマハ発動機】

改善する観戦環境、充実するイベント

ツインリンクもてぎで開催される「MotoGP」はかつては鈴鹿と年2回開催の時代はパシフィックGPとして開催され、2004年からは日本GPとして開催され続けている。

ここに来て観客動員数が増加しているのは、サーキットの観戦環境が改善しているという理由もある。ツインリンクもてぎはインディカーなどアメリカンモータースポーツ用の楕円形コース(スーパースピードウェイ)と1周4.8kmのロードコースの2つが併設されたサーキットで、MotoGPが開催されるロードコースはグランドスタンドから非常に距離が離れている。観戦環境改善のためにツインリンクもてぎはホームストレート脇に仮説スタンド(ビクトリースタンド)をMotoGPにあわせて2015年から設置している。これでスタートも間近で観戦できるようになった。

また、2日間に渡って開催される「前夜祭」などにMotoGPライダーが多数登場し、ファンとライダーとの交流イベントが充実している。今年はバレンティーノ・ロッシも「前夜祭」に初めて出演した。そして、車中泊で会期を楽しむファンのために地元食材のグルメコーナーや夜間イベントを開催する「オーバーナイトスクエア」を開設して、ファン同士の交流が図れるエリアも大盛況だった。広大な敷地をふんだんに活用して、レース以外の楽しみを作り出す施策は今後の観戦スタイルに変化をもたらすかもしれない。

前夜祭に登場したバレンティーノ・ロッシ
前夜祭に登場したバレンティーノ・ロッシ

来年はワールドチャンピオンのホルヘ・ロレンソ(ドゥカティ)がホンダに移籍しダブルチャンピオンの体制になるほか、KTMの体制強化、Moto2からフランチェスコ・バニャイアなど期待の新人のステップアップ、中上貴晶の継続参戦など楽しみな要素がさらに増える。ロードレース全盛期の盛り上がりには及ばないものの、順調にファンを増やし続けているMotoGP。いよいよ来年はトータル10万人の観客動員数突破が期待されている。