【17年注目】WRC参戦のトヨタ。東京オートサロンでもモータースポーツ挑戦を強烈にアピール。

ラリー車の展示が印象的だった「Toyota GAZOO Racing」ブース

2017年1月13日〜15日まで3日間の会期で開催された「東京オートサロン2017」(会場:幕張メッセ)が閉幕した。3日間の観客動員数は雪の影響による交通の乱れも多少影響したのか前年の記録からは僅かに減少。しかしながら32万4400万人を集める大盛況のイベントになった。

今やモーターショーを凌ぐ人気を誇る「東京オートサロン」。近年は自動車メーカーの巨大ブース出展とプロモーションが恒例となり、各メーカーの提案方法も多種多様で観客の見所となっている。そんな中、「トヨタ」は販売に直接つながる市販車の提案よりも「モータースポーツの挑戦」に特化したブースを出展。幕張メッセ・メインゲート入り口から離れた東館の端に位置するブースであるにも関わらず、常に観客がブース前の通路に溢れる盛況ぶりだった。

32万人が来場した東京オートサロン。写真の奥、左側にトヨタのブースがある。
32万人が来場した東京オートサロン。写真の奥、左側にトヨタのブースがある。

WRC(世界ラリー選手権)に参戦

2017年のトヨタにとってメインのモータースポーツ活動となるのが、WRC(世界ラリー選手権)への挑戦だ。「ヤリス(日本名ヴィッツ)」をベースに作られたWRカー(専用ラリー車)で参戦。1月19日(木)から始まる「ラリー・モンテカルロ」(モナコ)が開幕戦となり、年間合計13戦を戦い、ワールドチャンピオン獲得を目指す。

誇らしげに展示された「ヤリスWRC」
誇らしげに展示された「ヤリスWRC」

チーム代表に4度のWRC王者を獲得したフィンランド人、トミ・マキネンを迎え、彼の指揮のもと「ヤリス」WRカーを製作。トヨタは世界王者獲得への夢をマキネンに託した。そして、チーム総代表を務めるのはトヨタ自動車の豊田章男(とよだ・あきお)社長。最高峰WRCへの挑戦は、自らもドライバーとしてレースに参戦し、自動車メーカーで働く人間がクルマを操る楽しさを知ることを提唱してきた社長肝入りのプロジェクトである。

ドライバーを務めるのは16回の優勝経験を持つヤリ=マティ・ラトバラと「ヤリス」WRカーの開発を担当してきたユホ・ハンニネン。メインスポンサーにマイクロソフトが就き、トヨタの新WRC活動が華々しくスタートを切る。王者フォルクスワーゲンは撤退したものの、シトロエン、ヒュンダイ、そしてフォードを走らせるM-スポーツなど強敵は多い。国内ではテレビなどでの露出や関心がかつてよりも減少した「ラリー」への挑戦。豊田章男社長自らのイズムが込められた壮大なプロジェクトが始まろうとしている。

ルマンのリベンジ。相手は耐久王ポルシェ。

東京オートサロン2017の「GAZOO Racing」ブースではいささか地味なポジションではあったが、「ルマン24時間レース」を頂点とする「WEC(世界耐久選手権)」に参戦するマシン、「トヨタTS050ハイブリッド」が展示されていた。

昨年はルマン24時間レースで首位を走行し、悲願の優勝を誰もが確信した残り5分というところでトラブルが発生し、ストップ。もう1台が2位表彰台を獲得したものの、またもやトヨタはルマンで勝てなかった。この無念の結果は2016年のモータースポーツの象徴的シーンでもあった。ラリーのWRCに参戦が決まっていたため、WEC撤退を予想する声もあったが、2017年も継続参戦し、ルマン制覇を狙うはずだ。

トヨタTS050 HYBRID
トヨタTS050 HYBRID

今季のWECは巨人「アウディ」が撤退し、優勝を狙うLMP1クラスは「トヨタ」「ポルシェ」の一騎打ちとなる。相手が減った分、ルマン優勝のチャンスは増えるが、新車「TS050」を投入した2016年は9戦中僅か1勝という苦しい結果となっただけに、活動は今季が正念場を迎える。何としてでもルマンだけは優勝しなければならない。耐久王の異名を持つ「ポルシェ」をルマンで破ることができれば、昨年の悲劇的なシーンを目撃しているルマンの大観衆から拍手喝采を受けることになるだろう。

GT500には LC500、GT300にはRC F

「東京オートサロン2017」の「GAZOO Racing」ブースでの注目は国内でのレース活動の展示。まず、「SUPER GT」のGT500クラスは車両規定が変わるタイミングに合わせて、「レクサス LC500」で参戦する。そして、会場ではプレスカンファレンスが開催され「レクサス RC F」をベースにした「レクサス RC F GT3」がお披露目され、GT300クラスへの参戦が発表された。

レクサスRC F GT3
レクサスRC F GT3

「レクサスRC F GT3」は近年活況を呈するFIA GT3仕様のレーシングカーで、昨年までも同じ名前のマシンがGT300に参戦していたが、今回発表になったマシンは市販車ベースのレーシングカーとしてホモロゲーション(承認)を受けた正式な世界戦略GT3マシンということだ。国内のSUPER GTではGT300で複数のチームが導入するとみられており、新設計のGT3マシンの速さは開幕戦から注目の的となるであろう。

2016年はGT500で「レクサスRC F」が、GT300で「トヨタ86」(GT300マザーシャシー)がチャンピオンに輝き、両クラスを制覇したトヨタ陣営。2017年は「レクサス LC500」をGT500クラスに、そしてGT300クラスは「レクサス RC F」(FIA GT3仕様)、「トヨタ86」(マザーシャシー)、「プリウスapr GT」(JAF-GT仕様)、さらに埼玉トヨペットが導入する「マークX」(マザーシャシー)と4つの素性も性格も異なるGTマシンで連覇を狙う。

モータースポーツにディーラーも積極参加

WRC、WEC、SUPER GTさらにはスーパーフォーミュラへのエンジン供給とトップカテゴリーでのモータースポーツ活動を積極的に行う2017年のトヨタ。2015年、16年にそれまで別々のプロジェクトで行われていた活動を「GAZOO Racing」(ガズーレーシング)の名の下に統一。全てを合わせてトヨタのモータースポーツ活動というプロモーションを行い、その積極性をアピールし続けてきた。

SUPER GT/ GT500クラスを戦うレクサスLC500
SUPER GT/ GT500クラスを戦うレクサスLC500

かつてトヨタがF1に参戦していた時代(2002年〜2009年)には予算をふんだんに使ったプロモーション重視の活動を忌み嫌う人も多かった。これは同じ日本のライバルで技術革新とスピリットでイメージ作りを行ってきた「ホンダ」や「ニッサン」との対比もあっただろう。ただ、今はその雰囲気も随分変わりつつある。

近年はトヨタのモータースポーツにおける成績が飛躍的に向上しており、昨年はSUPER GTの両クラス制覇、スーパーフォーミュラでは3連覇を成し遂げた。統一感のあるプロモーションも功を奏しているのか、成績の向上と共に年々トヨタファンが増え続けている印象がある。こういったトップカテゴリーに留まらず、トヨタは「86/BRZレース」「ヴィッツレース」、さらにラリー選手権の「Toyota GAZOO Racing ラリーチャレンジ」など参加型モータースポーツへの支援も積極的だ。

86/BRZレースは全国のディーラーチームが切磋琢磨している。
86/BRZレースは全国のディーラーチームが切磋琢磨している。

特にナンバー付き車両による「86/BRZレース」には全国各地のトヨタ系ディーラーがこぞって参戦。プロドライバーを雇うなどしてディーラーチームの覇権争いの加熱ぶりは凄まじい。2016年は最大で124台ものエントリーが集まり、参加ドライバーは年間述べ190名という活況ぶりだ。参加のスタイルは様々で、プロのドライバーをあえて雇わずにディーラーの整備士自らが整備もドライバーも行って参戦し、レースを通じて自身を磨くという手法を取るディーラーも多い。

ディーラーの経営者自らがレースに参戦。左がGT300参戦の永井宏明。
ディーラーの経営者自らがレースに参戦。左がGT300参戦の永井宏明。

さらに最近の傾向としてはディーラーがトップカテゴリーに参戦するケースが増えつつある。「トヨタカローラ三重」永井宏明(同社社長)自らが「プリウスapr GT」のドライバーとしてSUPER GTのGT300クラスに参戦。同社のメカニックもチームに派遣し、プロのレース現場で戦う活動を行った。そして今年は先にあげた「埼玉トヨペット」平沼貴之(同社専務)がドライバーとなり、GT300用マザーシャシーをベースにした「マークX」で参戦を発表。同社は整備士を「Green Brave」と名付け、「スーパー耐久」に参戦してチャンピオンも獲得した。今後、ディーラー単位でモータースポーツ活動を積極的に行うケースは増えると予想される。

クルマに携わる社員自らがモータースポーツに参戦し、究極の舞台で学んだことをユーザーに還元する。トヨタは社長自らがモータースポーツへの参戦を提唱し、頂点となるWRCからディーラーが窓口となる参加型モータースポーツの活動までを行う。モータースポーツファンのみならず、今までモータースポーツに興味を示さなかった人にもその認知が進み、「モータースポーツのトヨタ」のイメージが固まりつつある。「東京オートサロン」のブース前の観客の熱気はまさにそれを象徴するものだった。