【17年注目】40回目の大会で人気復活なるか?「鈴鹿8耐」は見ておくべきイベント!

2016年の第39回大会のスタート【写真:MOBILITYLAND】

2017年が幕を開けた。1月はまだシーズン開幕まで2ヶ月ほどある状態で、今季のモータースポーツを占うには情報が少ない時期だが、2017年のモータースポーツの注目ポイントをいくつか取り上げていきたい。

今年、2017年はオートバイレースの「鈴鹿8時間耐久ロードレース(通称:鈴鹿8耐)」が40回目の記念大会を迎える。40回という節目の年になるだけでなく、今年は「FIM世界耐久選手権」(2016-17シーズン)の最終戦に設定され、世界チャンピオンを決する舞台となるのだ。今年も7月最後の週末となる7月30日(日)に決勝レースが行われるので、まだ半年も先だが、次々に新しいニュースが届けられている。

世界が注目する鈴鹿8耐に

「鈴鹿8耐」を取り巻く現状は過去の記事『世間がまだ知らない、「鈴鹿8耐」の現在(いま)。日本のバイクの祭典は世界から注目されるイベントへ』でもお伝えした通り。2000年代は観客動員数が減少を続けていたが、ここ数年で徐々に回復傾向にある。出場台数も一時50台にまで減少するも、昨年2016年は出場枠70台を選ぶ予選会(8耐トライアウト)を実施するほど参戦希望チームが増加した。

そして今年は40回目の大会となり、先に述べたように「FIM世界耐久選手権」の最終戦に設定され、ヨーロッパのスポーツテレビ局「ユーロスポーツ」によって全世界に生中継されることになっている。海外でも近年の「鈴鹿8耐」は元世界王者のケーシー・ストーナーや現役MotoGPライダーの参戦で知名度が急上昇。今年の大会は海外から熱心なロードレースファンが来場することも大いに考えられる。

そんな大会の盛り上がりに呼応するかのように、昨年末、鈴鹿サーキット(三重県)を運営するモビリティランドは2017年の大会冠スポンサーが「コカ・コーラ」となることを発表した。1984年の第7回大会から冠スポンサーを務めるお馴染みの飲料メーカーが今年も「鈴鹿8耐」を支えるのは変わらないが、今年はメインブランドの「コカ・コーラ」を前面に打ち出すことになった。昨年までしばらくは「コカ・コーラ ゼロ」。いわばサブブランドによるスポンサードだった。

「コカ・コーラ」といえば、スポーツの世界的大会を数多くスポンサードしているが、その代表は4年に1度のオリンピック。グローバルな視点で事業を展開する同社がメインブランドによるスポンサード復活で「鈴鹿8耐」の40回記念大会を華やかに演出する。

モリワキレーシングが本気の復帰

今年の「鈴鹿8耐」には、このレースの歴史上欠かせない名門チーム「モリワキレーシング」が復帰参戦する。1978年の第1回大会から参戦し、アルミフレームのオリジナルバイク「モリワキ・モンスター」でポールポジションを獲得するなど、クラフトマンシップとスピリットに溢れる企業「モリワキエンジニアリング」(三重県・鈴鹿市)を母体とするレーシングチームだ。1980年代のバイクブーム期を見て育った人なら「モリワキ」という名前を一度は聞いたことがあるだろう。

同チームはロードレース世界選手権の600ccクラス「Moto2」用の車体製作に専念するために2008年を最後に「鈴鹿8耐」から撤退していた。2015年頃から本格的な再挑戦へ向けた準備を進め、2017年の40回大会で再挑戦する。

モリワキが最後に鈴鹿8耐に出た2008年の走り【写真:MOBILITYLAND】
モリワキが最後に鈴鹿8耐に出た2008年の走り【写真:MOBILITYLAND】

その「モリワキ」が発表したチーム体制には驚いた。2016年から「鈴鹿8耐」の規定に準ずる全日本ロードレースJSB1000に復帰し、そのライダーである高橋裕紀(たかはし・ゆうき)の起用は予想通りだったが、彼のチームメイトとして起用されたのは「鈴鹿8耐」で4度の優勝を誇る清成龍一(きよなり・りゅういち)。これは誰もが予想だにしなかった衝撃的な起用といえる。

清成龍一は現役ライダーの中で最も8耐で必要とされる実力の持ち主。いくら名門とはいえ、9年ぶりに復帰するプライベーター「モリワキ」からの復帰を決めたことは、同チームが復帰初年度から本気で優勝を狙っていることを意味する。清成は高橋と共に全日本ロードレースJSB1000クラスにもフル参戦し、4年ぶりにホンダCBR1000RR(今季から新型)に乗る。

ピレリ17インチタイヤを使用したYART-YAMAHAは昨年の8耐で総合4位。と
ピレリ17インチタイヤを使用したYART-YAMAHAは昨年の8耐で総合4位。と

さらに驚くのはタイヤブランドの変更だ。2017年、「モリワキ」はイタリアの「ピレリ」を使う。今年から全車が17インチホイールのタイヤを使う年となるが、実は昨年のレースで4位入賞した「#7 YART-YAMAHA OFFICIAL EWC TEAM」が使用したのがピレリの17インチ・スリックタイヤ。グリップレベルの高いブリヂストンの16.5インチタイヤを履いた優勝チーム「#21 YAMAHA FACTORY RACING TEAM」と比較してベストラップで約1.3秒落ち。同じ17インチタイヤの開発チームとして5位に入った「#32 MotoMap SUPPLY」(ブリヂストン)と比較してベストラップでは約1.4秒速い結果を既に昨年の時点で出している。これを考えると決して無謀なタイヤチェンジではないだろう。

つまり「モリワキ」は高橋裕紀、清成龍一という世界選手権で実力を示してきたスプリンターを起用して優勝を狙えるパッケージを用意してきたということになる。となると3人目のライダーは誰か?ワイン・ガードナー、カル・クラッチローなど後にWGP/MotoGPで活躍する選手を鈴鹿8耐でいち早く起用し、「ダイヤの原石」を探すチームと位置付けられる「モリワキ」だけに、その原石を既に探し出しているのだろうか、それとも実績あるベテランか。何にせよ3人の均一した速さと実力が重要な「鈴鹿8耐」で「モリワキ」が誰を迎え入れるのか大いに注目したい。

新型マシンが集う、そして世界の名選手が集う?

現時点で大きな体制発表をしているチームはプライベーターの「モリワキ」のみだが、今年は40回大会ということで各メーカーが力を注ぐことは確実だ。是が非でも注目を集めたい、勝ちたいと思って勝負に出てくることは間違いない。

そんな中、今年は各メーカーの電子制御を多用した新世代マシンが出揃う。ここ2年間、突出したポテンシャルを見せつけた「ヤマハYZF-R1」に対抗できるマシンは現れるのだろうか。既にテスト走行が始まり、関係者からも良い印象が聞こえてくるのが新型「スズキ GSX-R1000」。名門「ヨシムラ」や「TEAM KAGAYAMA」「MotoMap SUPPLY」などが使用するニューマシンのポテンシャルは大いに注目。各チームの体制は攻めの姿勢で来ると考えられるので、発表が楽しみだ。

また、「カワサキ ZX-10R」で昨年、2位表彰台を獲得した「Team GREEN」は「Kawasaki Team GREEN」という名称に変更。ファクトリーチーム(メーカー直属チーム)は名乗らないが、同チームがさらにメーカー色を前に出すという表れでもあろう。今季は全日本JSB1000にホンダから移籍の渡辺一馬(わたなべ・かずま)、ST600からステップアップの松崎克哉(まつざき・かつや)の起用をすでに発表。どちらもまだ未知数の部分が多い2人がレギュラーとなるが、昨年以上のリザルト=優勝を狙うためには海外からの実力派ライダーの起用も存分に考えられる。そして、「FIM世界耐久選手権」の最終戦という意味ではカワサキにはフランスの「SRC Kawasaki」という強豪チームがあるので、世界チャンピオン獲得に向けたアシストも考えられるだろう。

そして、ホンダは「ホンダCBR1000RR-SP2」という進化版のニューモデルを導入。昨年参戦した元世界王者のニッキー・ヘイデンを起用したプロモーションが欧州で展開されていたこともあり、今年もヘイデンが参戦する可能性はあるだろう。さらにスーパーバイク世界選手権にはMotoGPからステファン・ブラドルが移籍。今年もワールドクラスのライダーを起用する可能性が高いホンダの選択肢は非常に多く、誰が優勝を狙えるチームと共に挑戦するのか。2年連続で敗北を喫しているホンダ。新型の導入の年に負けるわけにはいかないのだ。

再挑戦が期待されるニッキー・ヘイデン
再挑戦が期待されるニッキー・ヘイデン

そして、2年連続王者のヤマハは熟成が進んだ「ヤマハ YZF-R1」で3連覇を狙う。ライバル陣営にとってベンチマークとなる「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」は今年も中須賀克行(なかすが・かつゆき)が軸になると予想されるが、今季は2度の8耐優勝を経験しているマイケル・ファン・デル・マークがスーパーバイク世界選手権でヤマハに移籍。彼を起用しない手はないだろう。ただ、2年連続で現役MotoGPライダーのポル・エスパルガロを起用して、強烈なインパクトを残してきたヤマハだけに、次なるストーリーが必要であることは確か。昨年までとは明らかにライバル陣営の力の入れようも変わるので、逃げきるならば、さらなる体制強化が必要になってくる。その答えは何か。

17インチ時代もヤマハが席巻するのか?【写真:MOBILITYLAND】
17インチ時代もヤマハが席巻するのか?【写真:MOBILITYLAND】

4月には全日本ロードレース選手権JSB1000クラスが開幕し、新世代マシンによる戦いの火蓋が切って落とされる。重要な要素であるタイヤの17インチ一本化も含めると、4月のFIM世界耐久「ルマン24時間耐久レース」から勢力図争いが徐々に見えてくる。そして迎える特別な最終戦「鈴鹿8時間耐久ロードレース」に向けて各メーカーの発表が次々に行われていくことになる。日を追うごとにザワザワと注目が集まっていく今年の「鈴鹿8耐」。その情報を追いかけていくだけでも、これからの半年はとても短く感じるに違いない。