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シーズン途中のソフトタイヤ導入はシリーズを動かす大きな変化。スーパーフォーミュラ第4戦プレビュー。

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
シリーズ首位の山本尚貴(TEAM無限)【写真:MOBILITYLAND】

フォーミュラカーレースの国内トップカテゴリー「スーパーフォーミュラ」の第4戦が8月20日(土)21日(日)の両日、ツインリンクもてぎ(栃木県)で開催される。今回は2輪の全日本ロードレース選手権「J-GP2」クラスと同時開催の「ツインリンクもてぎ2&4レース」としての開催だ。

タイヤが新規定に。2種類のタイヤが登場

約1ヶ月間のインターバルを経て開催される第4戦は大きな変更点がある。それは今季から「横浜ゴム」が供給する晴天時用のスリックタイヤが「ソフト」と「ミディアム」の2種類となり、新品は各2セットずつ供給される。F1と同じように、異なる2種類のタイヤを両方使用して決勝レース(52周)を走りきらねばならない。これは「スーパーフォーミュラ」にとっては初の試みであり、各チームの作戦がレースに大きな変化をもたらすことになるだろう。楽しみな要素が増えた。

横浜ゴムのスリックタイヤ
横浜ゴムのスリックタイヤ

今回は各チーム共に「ソフトタイヤ」に関してデータ不足であることは否めない。事前のテスト走行で、ある程度のスタディはできてはいるものの、今回は走行ラインが異なる2輪のレースと同時開催であり、しかも晴れればまだまだ暑いツインリンクもてぎで「ソフトタイヤ」がどう機能するか未知数の状態だ。だからこそ今回のレースは興味深く、面白い展開のレースが期待できる。ちなみに「ソフトタイヤ」には側面に赤いマーキングが施され、どちらのタイヤをしようしているか視認できるようになっている。

山本vsオリベイラ。そこに誰が加わるか?

後半戦の流れを掴むために各チーム、各エンジンメーカーはお盆休み返上で準備を行ってきているだろう。エンジンも第4戦からブランニューとなり、トヨタ、ホンダ共に導入する新スペックの実力が楽しみだ。

ただ、これまで取得してきたデータに基づいた方向性からは大きく変えずに、セオリー通りの戦いになるだろう。追い抜きが非常に難しい「ストップ&ゴーサーキット」であるツインリンクもてぎでは予選で確実にQ3に進出したい。さらにポールポジションをガチで狙っていかないと勝負権を失うことになる。そういう意味では走り出しのベースセットの当たり具合と「ソフトタイヤ」を上手に使えるドライバーの速さがレースウィークの流れを掴むことになるはずだ。

開幕戦・鈴鹿のウイナー、山本尚貴(TEAM無限)
開幕戦・鈴鹿のウイナー、山本尚貴(TEAM無限)

現在、ランキング首位は山本尚貴(TEAM無限/ホンダ)の13点、2位がジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL/トヨタ)の10点。この2人が現時点ではチャンピオン争いの主導権を握っている。ただ、2014年のツインリンクもてぎ戦ではオリベイラと野尻智紀(Docomo Team DANDELION/ホンダ)が、2015年はこの年のチャンピオンとなる石浦宏明(P.MU / CERUMO INGING/トヨタ)と野尻智紀がポールポジションを争っており、2014年はオリベイラが、2015年は石浦がポールポジションからの優勝を飾っている。ランキング首位の山本は2年連続で表彰台にすら届いていないのだ。

山本尚貴【写真提供:JRP】
山本尚貴【写真提供:JRP】

先日、結婚を発表し、一躍時の人となった山本尚貴。栃木県出身の彼にとってツインリンクもてぎは地元開催の最重要レース。今季は開幕戦・鈴鹿で優勝するなどシーズン序盤から波に乗っているだけに、地元ツインリンクもてぎで一発逆転のリベンジを期待したいところだ。ただ、山本にとって不利な部分もある。それは所属する「TEAM無限」が1台体制ということだ。「ソフトタイヤ」のデータ取集は2台体制のチームに比べて厳しい。

そんな中で山本があっと驚く速さを見せられたなら、これはかなり観戦する値打ちがあるといえよう。これまでもずっと1台体制で頑張り、ポールポジション、優勝、そして2013年には年間チャンピオンという称号を手にしてきた同チームと山本尚貴。そこにワクワクしながら期待しているファンも多いはずだ。

中嶋レーシングはニューカラーに

山本とオリベイラの覇権争い、実績がある石浦と野尻の速さに加えて、今年は前戦の富士でポールポジションを獲得したストフェル・バンドーン(Docomo Team DANDELION/ホンダ)、そして変化の時に強さを発揮するアンドレ・ロッテラー中嶋一貴(共にVANTELIN TEAM TOM’S/トヨタ)など今回のレースで注目すべきドライバーは多い。

もてぎが得意なジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ。
もてぎが得意なジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ。

そんな中、今回から新たなスポンサーを得て躍進を狙うのが中嶋悟監督率いる「NAKAJIMA RACING」。今季は開幕前のテストでは好調だったものの、レースでは上位フィニッシュという結果につながっていないが、今回新たなスポンサー「GREEN TEC(グリーンテック)」とのパートナーシップが決まり、緑と白のカラーリングに変わった。装いも新たになる初陣のツインリンクもてぎ戦はNAKAJIMA RACINGにとって飛躍のレースとなるだろうか。

新カラーとなるNAKAJIMA RACING (プレスリリースより)
新カラーとなるNAKAJIMA RACING (プレスリリースより)

近年、注目度が増す「スーパーフォーミュラ」ではシーズン途中からスポンサーを獲得しそうなチームが他にもあるとの噂があり、後半戦も話題豊富なシーズンとなりそうだ。ランキング12位までがポイント差10点以内の大混戦となっている今季のスーパーフォーミュラ。タイヤに関する規定変更により、シーズンの戦況はこの第4戦を境に大きく流れが変わるかもしれない。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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