Yahoo!ニュース

天皇陛下と雅子さまの気さくな素顔とは? 元東宮職御用掛医師が感じたお心遣い

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
天皇ご一家(撮影・那須のアマチュアカメラマン(筆者所有))

先月27日~28日、天皇陛下は東大病院で前立腺の組織検査を受けられ、その結果が12月2日、宮内庁より発表された。前立腺肥大の兆候はあるものの、異常は見つからず、多くの国民が安堵したことだろう。

先週12月1日には愛子さまが21歳になられ、今週の12月9日には雅子さまのお誕生日も控えている。今は安堵され、ご一家で穏やかな時間を過ごされているのではないだろうか。

普段の両陛下のお人柄について、東宮職御用掛としてお仕えし、雅子さまのご出産を担当した主治医、山王病院名誉病院長の堤治氏から興味深い話を聞いた。

◆感銘を受けた陛下の飾らないお人柄

テレビで報じられる天皇陛下は、いつもさわやかな笑顔を浮かべられ、気さくなお人柄であることが伝わってくるが、素顔はどんな方でいらっしゃるのだろうか。

筆者のそんな質問に、堤氏は感銘を受けたという意外なエピソードを教えてくれた。

愛子さまがまだ雅子さまのお腹の中にいた頃のこと。ある考古学者が旧石器時代の遺跡を埼玉県秩父市で発掘し、「秩父原人」の発見だと一躍脚光を浴びた。しかし、後に捏造であったことが発覚し、残念な結果となったことが報じられた。

堤氏の出身地は秩父市であると陛下はご存じだったのであろう、顔を合わせた時に、こんなお言葉をかけてくださったという。

「先生、残念でしたね。秩父原人は、幻の原人になってしまいました」

この時のことを堤氏は、以下のように語る。

「私は自分の故郷が秩父市だとお話ししたかすら、覚えていなかったのですが、陛下はニュースをご覧になって、『故郷だから堤先生も喜んでいただろうに、がっかりしただろう』とお思いになり、気にかけてくださったのです。そのお気持ちが大変嬉しく、天皇陛下は素晴らしい人格者でいらっしゃると感じました」

◆雅子さまのほのぼのとした笑顔のわけは…

雅子さまがご懐妊中、堤氏は用事があったため、自ら車を運転して、当時、両陛下のお住まいであった東宮御所へ伺う機会があった。その際、予想もしていなかったアクシデントに遭遇したという。

それは、用事を済ませた帰り道でのこと。すでに日が暮れ、東宮御所のある赤坂御用地は街灯もほとんどないため、暗くて辺りが見づらい。慎重に車を進めて行ったのだが、突然、ゴツンと音がして車が傾いたという。しかもアクセルを踏んでも、空回りするだけで、まったく前に進まなくなってしまった。

なんと車のタイヤが側溝にはまって、脱輪していたのだ。

仕方なく暗闇の中に車を置いて、東宮職の詰所まで事情を伝えに行き、職員の方々の助けを得て、なんとか脱出に成功。無事に帰宅することができたが、実は後日談がある。

次に東宮御所に伺った際、堤氏と面会された雅子さまが、いつもと様子が違い、どこかいたずらっぽい微笑みを浮かべて、こう話されたという。

「先生、脱輪なさったんですって?」

先日の夜の脱輪について、雅子さまのもとにも報告されていたようであった。

それよりも、東大医学部の教授を務め、日本における産婦人科の権威である堤氏が、暗い夜道に脱輪してしまったことが、どこか人間味を感じさせたのだろう。雅子さまのお顔に、ほのぼのとした笑顔がにじんでいらっしゃったという。

その上で、「お怪我はありませんでしたか?」と、堤氏のことを気遣っておられた。

日頃から雅子さまは、周囲の人たちに気を配り、親身になって心を砕いていらっしゃることが分かる出来事であった。

       雅子さま(写真:ロイター/アフロ)
       雅子さま(写真:ロイター/アフロ)

◆ご静養先で感じた、雅子さまのご配慮

さらに、堤氏はこんなエピソードも話してくれた。

ご懐妊中の雅子さまが、陛下とともに那須で静養される間、堤氏も不測の事態に備えて、ご滞在先の那須御用邸にお供した。

そもそも那須御用邸は敷地面積が約662万m2で、東京ドーム約140個分の広さである。

周囲は広大な原生林に囲まれており、御用邸の場所によっては携帯電話がつながりにくく、外部との連絡に難儀することが多い。

雅子さまはそうした状況をご存じで、那須のご静養先まで来てくれた堤氏に、こう尋ねられたという。

「携帯の電波が届きにくくて、ご不便をおかけしていませんか?」

堤氏は「どこか電波が届く場所を見つけて、何とかしますのでご心配なきように」と答えたが、雅子さまが携帯電話の電波のことまで思いを巡らせてくださることに驚くとともに、細やかな気配りが自然とできる誠実なお人柄に、深く感激したという。

    堤治医師(本人提供)
    堤治医師(本人提供)

愛子さまが誕生された後も、両陛下は変わらず、感謝の気持ちを伝えようとしてこられた。

2006年、皇室の儀式「着袴の儀」で、愛子さまが袴姿で正装された可愛らしい写真を、堤氏に送ってくださったのである。

天皇ご一家の映像を見ると、心癒される気持ちになるのは、陛下と雅子さまの普段のお人柄がにじみでているからなのかもしれない。

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、現在テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)がある。

つげのり子の最近の記事