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愛子さまと縁深い3頭のゾウとは? 世界的ハープ奏者が明かす「エルマー」との思い出

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
雅子さまと愛子さま(写真:ロイター/アフロ)

■愛子さまゆかりのアジア象

 先月24日、東京・上野動物園で雄のアジア象、アティが亡くなった。実はこの象は、天皇皇后両陛下の長女・愛子さまのご誕生を祝し、タイから贈られた二頭のうちの一頭で、もう一頭はウタイと名付けられた。

 愛子さまがご両親とともに初めて上野動物園を訪れ、この象たちをご覧になったのは4歳の時だった。体長約5メートルもあるアジア象を目にされ、その大きさに目を見張ったものの、自らウタイにバナナをあげて可愛がったという。

 この時、雄のアジア象、アティは象舎から出てこず、残念ながら会うことはできなかった。そもそも象は人間以外の陸上哺乳類の中で最長寿であり、その寿命は50年以上だと言われている。アティが23歳で天国に旅立ったことは悲しい出来事だったが、報道発表では雌のウタイがアティの赤ちゃんを妊娠していることも伝えられた。

 動物園で飼育されている象は繁殖が極めて難しく、中でもアジア象は絶滅危惧種に指定されていることもあり、新たな命が無事生まれてくれば、愛子さまもお喜びになることだろう。

■愛子さまともう一頭の象

 タイから贈られたアティとウタイ以外に、愛子さまにはもう一頭の思い出深い象との出会いがあった。それはイギリスの作家、デビッド・マッキーが描いた絵本の中に出て来る、カラフルな色をした「ぞうのエルマー」。主人公のエルマーは、ヨーロッパ中の子どもたちに愛され、さまざまなグッズも発売されているほどの人気者。

 今から16年前、雅子さまと家族ぐるみで交流がある、世界的ハープ奏者の長澤真澄さんが東宮御所に招かれて演奏した際、愛子さまにお風呂で遊べる「ぞうのエルマー」のバストーイをプレゼントしたという。愛子さまはカラフルなエルマーの玩具に、歓声をあげて喜び、じっと見つめたり、愛おしそうに抱きしめたりしていたという。その時、長澤さんは「私も同じのを持っているのよ」と、愛子さまにお話ししたとか。

 2年後に再び招かれた長澤さんは、しばらくぶりだったため、愛子さまが覚えてくださっているのか、胸をドキドキさせていたが…。

「雅子さまが『覚えているでしょ?象さんをくださった方よ』と愛子さまのほうを向いて話しかけられたんです。愛子さまはすぐに私のことを思い出し、こぼれるような笑顔を見せられました」

 と、当時のことを長澤さんは振り返る。長澤さんはオランダ在住のため、日本に来るのは年に数えるほど。まして皇室の方と頻繁に会うこともかなわない。しかし愛子さまは、長澤さんのことをしっかり覚えておられたという。それもひとえに「ぞうのエルマー」が持つ、人を明るく元気にさせてくれる力のおかげなのかもしれない。

■エルマーが教えてくれること

 愛子さまの心を捉えたであろう「ぞうのエルマー」の物語は、自分だけがパッチワークのようにカラフルなことに悩み、ジャングルを歩いて旅に出る。象の色をした実がなる大きな木を見つけて、自分の体に塗るが、実は周りの象たちは外見を全く気にしておらず、エルマーの性格を愛していたことに気づくというお話だ。

 みんなが違っていて当たり前という、人間の多様性の素晴らしさを教えてくれる。愛子さまも幼い日に、この絵本をお読みになったかもしれない。

 象は温和な生き物で世界中から親しまれ、偉大さ、賢さ、愛情深さなどのシンボルとされてきた。

 愛子さまのご誕生を祝して日本にやって来た象と、ハープ奏者の長澤さんがくれた「ぞうのエルマー」。どちらも愛子さまのご成長の中で、確かな役割を果たしてくれたのではないだろうか。

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、現在テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)がある。

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