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新種のハゼを発見された上皇さま、研究所の様子は?天皇陛下の「はとこ」が衝撃を受けた質素倹約ぶり

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
水中鍾乳洞ウンブキ(撮影・広部俊明)

 天皇陛下のはとこにあたる、水中探検家・水中カメラマンの広部俊明(ひろべ としあき)さんは、研究者や政治家が多い親戚の中で異色の存在だ。80年代にアニメ『タッチ』の主題歌を歌い人気を博したバンド、『夢工場』のボーカルとしても知る人ぞ知る存在だ。

 そんなユニークな経歴を持つ広部さんが、天皇ご一家との貴重なエピソードを明かしてくれた。

■皇居内の衝撃的な光景

 今週、上皇さまがハゼの新種を発見されたことが報じられた。その研究の拠点となっているのが、皇居内にある生物学研究所だ。

 広部さんは、上皇さまのハゼのご研究のために映像を提供していた、水中カメラマンの矢野維幾(やの これちか)さんに誘われ、皇居内の生物学研究所に行った。それは、ちょうど東日本大震災から間もない頃だったという。

 研究所に到着したのは、すでに日が沈み、夜の気配が漂う時間帯。周辺の街は煌々と明かりが照らされているのに、皇居の中だけが真っ暗だった。

 もちろん、生物学研究所の中も電気がついていなかった。

 当時、上皇ご夫妻は東日本大震災の被災地に思いを馳せ、お住まいの御所の電気を一定時間使わない自主停電を続けられていた。生物学研究所でも同様だったのだろう。

 広部さんがビックリしたのは、それだけでなかった。

「ガラスが割れているところを、丸いテープで留めて補修しているんです。昔、マンガでこんなシーンを見ましたが、それと同じでした」

 さらに、研究所内の設備や器具などは、すべて旧型。自主停電で真っ暗な中に、コーヒー牛乳(だと思われる)の自動販売機があり、当然、それも昔の銭湯に置かれているような旧型だったという。

「一般の人からは皇室は何不自由のない生活をしているように見えると思いますが、上皇さまは徹底して質素倹約をされていることに感動しました」

 海外の賓客などとお会いになる公の場では、皇室の方々は日本の顔として立派な衣装をお召しになっているが、私生活はいたって質素である。ご研究はご自分のプライベートとして行っているため、割れたガラスもできる限り補修し、研究器具も使える限りは使うことを考え、費用を抑えていらっしゃるのであろう。

■水中探検家・広部さんの活躍ぶり

 上皇さまのご研究に対する真摯な姿勢に感銘を受けた広部さんは、その後も海の中で自らのライフワークに打ち込んだ。それが水中鍾乳洞の探求だった。

 去年、テレビ朝日「報道ステーション」で放送されて大きな話題となった、徳之島の日本最大級の水中鍾乳洞発見では、広部さんは2018年から調査を開始し、水中で新種の可能性もあるエビやアナゴなどの撮影にも成功。

 ちなみに、日本全国でまだ誰も解明していない海の中の地形や遺跡、あるいは海に落とした思い出の品など、探してほしいものがあれば、ぜひ広部さんに連絡してほしいという。

 日本は四方を海に囲まれた国である。昭和天皇をはじめ上皇さまは水中の生物について研究され、天皇陛下は水の研究に取り組んでいらっしゃる。

 天皇陛下の「はとこ」、広部さんが日本の海に魅せられたのも、大いなるロマンと皇室のご研究の伝統とちょっぴり関係しているのかもしれない。

■広部さんの母は83歳にして、ドローン映像カメラマン?!

 広部さんの母は美智子さまより2歳年下で、戦時中、軽井沢でともに疎開生活を送ったという。学生時代は一緒に遊び、美智子さまから「バレーボールに一緒に入る?」と声を掛けられては、よく汗を流していたとか。

 そんなアクティブな一面は今も健在で、広部さんがドローンの操縦法を教えながら、親子で日本全国の美しい情景を撮影して回っている。最近は、海に潜って熱帯魚の撮影にも成功したと話してくれた。

「うちの母はもうすぐ84歳なんですけど、美智子さまの従妹がドローンの撮影カメラマンって面白いと思いませんか?」

と、広部さんは茶目っ気のある笑顔を見せた。

 広部さんは現在、沖縄県恩納村に住んでいる。上皇ご夫妻が皇太子・皇太子妃時代から、地方公務として足繁く通われたのが沖縄だ。そのご訪問は11回、圧倒的な回数にのぼる。なぜ、ここまで沖縄の地にこだわられたのか。それは先の大戦で激しい地上戦の末、多くの民間人が犠牲になったことから、慰霊と平和への願いを込めて訪れておられたのだ。

 余談ながら広部さんが結婚したのは、同じ「美智子」という名前の人気女優・羽田美智子さん。正田家の「いとこ会」が開かれる時、母を会場まで送っていった際、奥さんも一緒だった。運が良ければ美智子さまに会えるかも……と思っていたが、美智子さまとの対面はかなわなかったという。

「美智子&美智子で会ったら、面白いですよね。美智子さまはユーモアのある方ですから、きっと喜んでくださったのではないでしょうか」

 しかし、残念ながら2017年に円満離婚を果たし、夢の実現は幻に終わっている。

美智子さま「ハタタテハゼって知っていますか?」天皇陛下の「はとこ」が固まったご質問

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、現在テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)がある。

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