「喫煙率が低下しているのに、肺がん死亡率は上昇しいてる」と言う説明は正しいか?

(写真:アフロ)

タバコでがんになる、というのはウソ?

今年の4月1日から改正健康増進法が全面施行された。

これは公共の屋内を原則禁煙とすることで、タバコの害から吸わない人を守る法律である。

タバコが新型コロナウイルス感染の重症化の要因の一つであるということが分かってきているが、新型コロナの感染が拡大しているこのタイミングでこの法律が施行されるのは、不幸中の幸いなのかもしれない。

いずれにしても、再びタバコの害に注目が集まっている。

 

しかし、週刊誌やネットで「タバコでがんになるというのは嘘」という記事を目にされたことはないだろうか。

その根拠としては、「日本は喫煙率が下がっているにもかかわらず、肺がんの死亡率は上がっている。

だからタバコを吸うと肺がんになる、というのはウソだ」というものである。

喫煙率は↓ なのに肺がん死亡率は↑

確かに、1960年代は8割の人がタバコを吸っていたが、そこから喫煙率は下落の一途をたどり、近年では約2割となった。

一方で、肺がんの死亡率は上昇し続けている。

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国立がん研究センター がん対策情報センター/JT全国喫煙者率調査のデータより筆者作成

タバコが肺がんの原因になるというのはタバコの箱にも書いてあるほどだが、だとしたらなぜ、肺がんの死亡率は上がっているのだろうか。

一部の評論家たちが主張するように、実はタバコは肺がんの原因ではないのだろうか?

死亡率が上がっている真の理由

無論、これは全くのデタラメだ。

喫煙率が下がってから肺がんの死亡率が下がるまでには約30年のタイムラグ(時間差)があるからそう見えるだけである(もう少し待てば日本でも肺がんの死亡率が下がってくる)。

また、日本は急速に高齢化しているので、その影響で肺がん死亡率は上がってしまうのである。

高齢になればなるほど、がんで亡くなる可能性は高まるからだ。

高齢化の影響を排除するためには、年齢構成を補正した「年齢調整死亡率」を使用する必要がある。

それが下のグラフである。

【年齢を調整した正しいグラフ】

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国立がん研究センター がん対策情報センター/JT全国喫煙者率調査のデータより筆者作成

喫煙率の低下に伴い、肺がん年齢調整死亡率は1996年をピークに年々低下していることが分かる(喫煙後すぐに肺がんになるわけではないので、発症までに約30年のタイムラグが生じる)。

つまり、死亡率が高くなっているのは高齢化が主因であり、その影響を排除すると死亡率は下がっているということだ。

数多くの研究でタバコが肺がんの原因になることは明らかになっており、もはや議論の余地はない。

グラフを悪用し、読者をミスリーディングしようとするメディアや評論家は悪質であると言えるだろう。