本日「改正健康増進法」が施行 受動喫煙対策は、新型コロナ対策にもなる?

(写真:アフロ)

喫煙は新型コロナ感染を重症化させる

新型コロナウイルス感染者の数は世界中で増加している。

東京も感染者数が増加しており近々ロックダウンせざるを得なくなるのではないかという憶測がある。

新型コロナに感染したときに重症化する人としない人がいることが知られている。

年齢(高齢者の方が重症化しやすい)はその要因の一つであるが、それ以外にも喫煙が重症化のリスク因子であると報告されている。

武漢の1099名の新型コロナウイルス感染者のデータによると、重症化して人工呼吸器やICU入室が必要となったり、亡くなったりした患者のうち25.5%は喫煙者であり、喫煙者の割合は重症化しなかった患者の2倍以上であった(Guan、2020年)【*1】。

喫煙者はもともと肺機能が低下していて肺炎が重症化しやすい(インフルエンザやMERSでも喫煙者は重症化することが知られている)。

さらには喫煙者ではACE2という受容体の発現が強化されており、新型コロナウイルスはこのACE2受容体を介して細胞内に侵入するため、喫煙者では重症化するというメカニズムも考えられている。

もちろんこれは喫煙者の話であるが、受動喫煙でも同様に新型コロナウイルス感染症が重症化する可能性が指摘されている。

日本ではちょうど4月1日から受動喫煙対策が強化されるため、たばこの問題を考える良いきっかけになるだろう。

屋内は原則禁煙に

本日4月1日から改正健康増進法が全面施行された。

学校や行政機関、病院などはもちろん、飲食店や会社などでも屋内が原則禁煙となる。

喫煙者の方にはつらい法律かもしれないが、その主な目的は受動喫煙の防止にある。タバコの害からタバコを吸わない人を守るための法律なのである。

ところで、「受動喫煙による害は証明されていない」という話を耳にされたことはないだろうか? 一部のタバコ会社はそう主張しているし、ネットや週刊誌でもそのような記事を目にすることがある。

果たしてそれは本当なのだろうか?

毎年15000人が受動喫煙で亡くなっている

無論、それはデタラメである。国立がん研究センターの研究によると、日本では毎年15000人もの人が受動喫煙によって命を落としていると推計されている(片野田耕太、2015年)【*2】。

これには喫煙者の数は含まれないため、文字通り周りの人が吸ったタバコの煙を近くで吸っただけでこれだけの人が亡くなっているのである。

世界では、年間約60万人が受動喫煙で死亡していると推定されているので(Oberg、2011年)【*3】、この日本の数字は妥当な値であると思われる。

日本の推定値の元の一つになったのが、受動喫煙によって肺がんになる確率が約30%上昇するという「メタアナリシス」の研究結果である(Hori、2016年)【*4】。

メタアナリシスとは複数の論文を統合して分析する研究手法で、科学的な信頼性が高い。この論文では、日本人を対象とした9個の観察研究をまとめて、受動喫煙によって肺がんになるリスクが上がることが「確実である」と結論付けた。

ちなみにタバコを用いた直接的な実験は行うことができない。(例えば被験者にタバコを吸わせて健康被害が生じるかを確認するなど)。

なぜなら数多くの観察研究においてタバコの害は科学的に証明されており、害があると分かっているものを、被験者に吸入させることは倫理的に許されないからである。

よって、受動喫煙の害を評価するためには、観察研究のメタアナリシスが最も信頼できるエビデンスであるということができる。そして、それによって受動喫煙は肺がんのリスクを上げることが明らかになっている。

受動喫煙による健康への害は科学的に証明されており、もはや「議論の余地は無い」ということができる。

赤ちゃんも被害を受けている

また、受動喫煙の害はがんのイメージがあるかもしれないが、次のグラフの通り、実は脳卒中や心筋梗塞などの虚血性心疾患の被害者の方が多い。

画像

出典・厚生労働科学研究費補助金循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業

「たばこ対策の健康影響および経済影響の包括的評価に関する研究」平成27年度報告書

また、受動喫煙によって乳幼児突然死症候群(SIDS)が起きていると推計されている。赤ちゃんも被害にあっているのだ。

今回の法律の施行により、このような害が減ることが期待されている。

 

引用文献:

*1 Guan WJ et al. Clinical Characteristics of Coronavirus Disease 2019 in China. N Engl J Med. 2020 Feb 28. doi: 10.1056/NEJMoa2002032.[Epub ahead of print]

*2 片野田耕太、たばこ対策の健康影響および経済影響の包括的評価に関する研究 2015年度

*3 Oberg M et al. Worldwide burden of disease from exposure to second-hand smoke: a retrospective analysis of data from 192 countries. Lancet. 2011 ;377(9760): 139-46.

*4 Hori M et al. Secondhand smoke exposure and risk of lung cancer in Japan: a systematic review and meta-analysis of epidemiologic studies. Jpn J Clin Oncol. 2016;46(10): 942-951.