カロリーや糖質を制限しても正月に増えてしまった体重は戻すことはできない?

(写真:アフロ)

一年でいちばん太る時期

日本人が一年でいちばん太る時期はいつかご存じだろうか?

2012~2013年に世界各国で使用されている体重計から無線で情報を収集することでこの問いに答えた研究がある(*1)。

その結果によると、日本人が一年のうちに最も太るのがゴールデンウィークであった。その次に太っていたのは、正月、3月末の春休みごろ、8月中旬の夏休ごろ。つまり日本人は仕事が休みの時期になると太る傾向がある可能性があるのだ(もちろん他の理由でこの時期に体重が増加している可能性もあるが…)。

日本人、アメリカ人、ドイツ人の一年間の体重変化

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出典:Helandar et al.(2016)を元に筆者作成

そう、お正月はついつい食べ過ぎてしまい、ゴールデンウィークの次くらいに太ってしまう時期なのである。皆様の中にも、楽しいお正月を過ごしたものの、お腹まわりが気になってきた人がいるかもしれない。

近年、どうしたら科学的に、かつ効果的に痩せられるかという研究が進んできた。

摂取カロリーを減らせばやせるとか、脂質の摂取量を減らせばよいとか、糖質制限がやせるという類の話はおそらく皆様は聞いたことがあるだろう。

でも同じカロリーや同じ糖質量であっても、体重への影響は違う可能性があることはご存じだろうか?

ハーバード大学の研究者たちが、世界的に最も権威のある医学雑誌の一つであるニューイングランドジャーナルオブメディシン誌に発表した論文を二つ紹介しよう。

太った人が食べていたものはコレ

一つ目の研究は、米国人約12万人を12~20年間追跡し、食生活の変化と体重変化の関係を評価したものである。(*2)

4年間毎にデータを区切り、その期間における「食事の変化量(4年間で食事がどれくらい増減したか)」と「体重の変化量(同時期に体重がどれくらい変化したか)」の関係を解析した。その結果が次のグラフである。

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出典:Mozaffarian et al.(2011)を元に筆者作成

フライドポテトやポテトチップスの摂取量が増えている人ほど体重が増加しており、ヨーグルトやナッツの摂取量が増えている人ほど体重が減少していることが明らかになった。

ここで興味深いのは、似たような食材でも加工方法の違いで、体重への影響が正反対であるものがあることである。

例えば、パン、パスタ、白米などの「白い(精製された)炭水化物」の摂取量が増えている人ほど体重が増加していたのに対して、全粒粉、玄米、オートミールなどの「茶色い(精製されていない)炭水化物」の摂取量が増えている人ほど体重が減少していた。

果汁100%のフルーツジュースの摂取量が多くなっている人ほど太っていたのに対して、(未加工の)果物の量が多くなった人ほどやせる傾向があった。

ちまたでは太ると言われているナッツの摂取量が増えていた人は実はやせる傾向があり、最近日本で太らないと言われるようになってきた赤い肉(牛肉や豚肉のこと)だが、その摂取量が増えた人は実は太っていた。

太る野菜、痩せる野菜

 

二つ目の研究は、同じ研究チームで、米国人約13万人を追跡し、果物と野菜の種類によって体重が変わってくるかを評価した研究である。(*3)

先ほどの研究では食事全体を評価していたのに対して、こちらはその中でも野菜と果物に絞ってより詳しく解析を行ったのである。その結果は、果物や野菜の種類によって体重への影響は異なる可能性が示唆されるものであった。

じゃがいも、とうもろこし、えんどう豆のようにデンプン質の多い野菜の摂取量が増えている人は、太る傾向にあることが分かった。

野菜の中でも、特に食物繊維が多く、グリセミック負荷(グリセミック指数=GI値に対象の食品に含まれる炭水化物の割合を掛け合わせた指標で、最近ではGI値よりも適切な指標であると考えられている)が低いものはやせる傾向があることが明らかになった。具体的にやせていた人が多く食べていた果物は、ブルーベリー、プルーン、りんご、なし、いちご等であった。

野菜に関しては、大豆、カリフラワー、ズッキーニ、サヤインゲン、ピーマン、ブロッコリーなどを食べていた人はやせる傾向にあった。

詳しくはこちらの図を参照してほしい。

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出典:Bertoia et al.(2015)を元に筆者作成

これらの研究は観察研究であり、ある食生活をしている人を追跡して、その人の体重がどのように変わったかを評価したものである。

総摂取カロリー量だけでなく、運動量、一日のうち座っている時間やテレビを観ている時間、喫煙習慣、睡眠時間などのほかの生活習慣に関しては統計的な手法を用いて影響を取り除いている。つまり、同じような生活習慣の人で、食習慣が違う人を比べているのである。

これらに加えて二つ目の果物と野菜の研究では、食事に関する他の要因(野菜と果物以外の食事内容)の影響も統計的に取り除いている(二つ目の研究では果物や野菜の種類でカロリーそのものが変わってしまうため、総摂取カロリー量の影響はあえて取り除いていない)。

ただし、これだけ洗練された統計手法が使われていても残念ながら完璧ではない。

健康的な食生活をしている人と不健康な食生活をしている人とでは、運動習慣や喫煙など研究者がデータとして集めたもの以外の要素(そもそもの健康に対する意識など)も違うと考えられ、統計的手法ではこれらの影響を100%取り除くことはできない。つまり、これらの研究からは自信を持って因果関係があると言うことはできない。

それでもなお、太った人、やせた人がどのような食事をしていたのかを観察することで参考にできることはたくさんあるだろう。

食事の影響に関しては、個人差がある可能性もあるので、実際にご自分で食事内容を変えてみて、それで体重がどのように変化するかを見てみるのもよいだろう。

 

(本記事は、集英社「小説すばる」誌の連載「あなたを病気にする『常識』」を再構成したものです)

*1 Helander EE et al. Weight gain over the holidays in three countries. N Engl J Med. 2016;375(12):1200-1202.  

*2 Mozaffarian D et al. Changes in diet and lifestyle and long-term weight gain in women and men. N Engl J Med. 2011;364:2392-2404.

*3 Bertoia ML et al. Changes in intake of fruits and vegetables and weight change in United States men and women followed for up to 24 years: analysis from three prospective cohort studies. PLoS Med.2015;12(9):e1001878