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多用しすぎる、何たらトランスフォーメーション

津田建二国際技術ジャーナリスト・News & Chips編集長

新年あけましておめでとうございます。

 最近はいろいろな所でデジタルトランスフォーメーション(DX)から派生した「何とかトランスフォーメーション(XX)」という言葉がよく見られるようになった。ただし、バズワードのように使われていないこともない。何がトランスフォーメーション(転換、変換)なのかが明確ではないからだ。

 DXではっきりしていることは、これまでコンピュータや通信技術を使うだけではなく、センサをベースにして、従来は意識に上らなかった事柄を明確に可視化し、それを元にビジネス上の生産性や生活の向上を目指す、従来システムからの転換を意味した言葉である。DXで重要なことは、コンピュータや通信を使って便利になる、ということではなく、さらにセンサからのデータを利用してこれまで気づかなかったことを気づかせてくれて、さらにビジネス効率や生産性を上げるように転換するのである。だから、DXは使う側が主体となってはっきりとした狙いを持っていなければ無駄に終わる。DXがうまくいかないという企業は、何をどう改善するのかという目標設定が明確でないからだ。

 ではグリーントランスフォーメーション(GX)はどうか。何を転換するのであろうか。単なるCO2削減だけに留まらないことが従来とは異なる点だ。つまり環境保護と経済との両立である。従来なら、環境保護か経済優先か、という二者選択だった。別の捉え方では、「環境に配慮した先端技術を使い、産業構造を変革(トランスフォーメーション)する取り組み」と定義した例もある。環境と経済を両立させるためには、産業構造を変える必要がある。

図1 SDGsの17項目からなる持続可能な開発目標 国連で決めたもの
図1 SDGsの17項目からなる持続可能な開発目標 国連で決めたもの

 さらに最近は、サステナビリティトランスフォーメーション(SX)という言葉を使ったお年賀メールをいただいたが、「気候変動や地球温暖化、環境汚染など、喫緊課題であるサステナビリティへの対応」という限り、従来のSDGs(国連が決めた持続可能な社会に向けた17項目の開発目標)と変わらない。バズワードあるいは、言葉遊びのようで、却って信ぴょう性が疑われる。

 何をどう転換するのかを明確にしない、あいまいなトランスフォーメーションという言葉は使うべきではないと思うが、いかがだろうか。

国際技術ジャーナリスト・News & Chips編集長

国内半導体メーカーを経て、日経マグロウヒル(現日経BP)、リードビジネスインフォメーションと技術ジャーナリストを30数年経験。その間、Nikkei Electronics Asia、Microprocessor Reportなど英文誌にも執筆。リードでSemiconductor International日本版、Design News Japanなどを創刊。海外の視点で日本を見る仕事を主体に活動。

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