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議会もテレワークで国会を運営する国

津田建二国際技術ジャーナリスト・News & Chips編集長

新型コロナウイルスの影響を避けるため、議会でさえテレワークにした国がある。インド洋に浮かぶ美しい国、モルディブ共和国だ(参考資料1)。モルディブの国民議会では、マイクロソフトのビデオ会議ソフトであるMS Teamsを使って議会を運営している(図1)。立法議員の数は87名と世界でも最も少ない国の一つではあるが、テレワークで立法府である国会で運営しているのだ。議会がそのままオンラインで中継されると同時にテレビでも中継されるという。

図1 モルディブ共和国はテレワークで議会運営 出典:Microsoft Asia
図1 モルディブ共和国はテレワークで議会運営 出典:Microsoft Asia

立法府では、2019年の1月にテレワークのソリューションを採用した。セキュリティ機能とさまざまな用途に使える機能で協働できるツールだからである。新型コロナウイルスが広まってきたために、3月30日にTeamsを使ってバーチャル会議を始めた。「議員が物理的に議会にいなくても、議会は通常に運営できます。議論や投票のような議会の機能や、委員会の会合も通常通り行っています」と議会のメディア&コミュニケーション担当ディレクターのハッサン・ザイヨー氏は語っている。

こういったツールをいち早く使いこなし、感染をできる限り防止するという姿勢を国民に見せつけることで、国民に意識は大きく変わってくる。残念ながら、日本では議会はおろか、会社や学校でさえ、ビデオ会議ツールの導入が遅れている。中国でさえ都市封鎖の時にオンライン授業を行う学校があった。日本はやはり世界から遅れている。政府が非常事態宣言を出し、不要不急の外出は控えるように要請したことで、ようやくテレワークが現実的になってきた。テレワークが新型コロナウイルスの感染拡大によって、認められようとしているのは皮肉なことだ。働き方改革ではテレワークの声がほとんど無視されてきたからだ。

本来テレワークは、オフィスに行くよりも生産効率が良い場合に取られる手段であり、外出自粛のためということは、本来の働き方改革の姿からはおそらく遠いことではないだろうか。

 筆者は10年以上も前の話しだが、以前勤めていたリードビジネス・インフォメーション時代に米国に出張した時にオフィスに行かないというテレワークを経験した。シリコンバレーにはハイテク企業が密集している。クルマで15~20分走れば、すぐに相手の企業に到着する。ある日、広告営業のアメリカ人のクルマでクライアント数社を訪問した。当日の朝、彼女は自宅から私のホテルまでピックアップしてくれ、1社目を訪問した後で、必ず上司に電話をいれ、報告していた。2社目を訪問した後も、同様に電話を入れクライアント情報を上司と共有した。このようにして3社か4社訪問した後で、オフィスによらずそのまま帰宅した。聞いてみるとオフィスに寄るのは1週間に1日か2日のみ。ほとんど、自宅⇒クライアント⇒帰宅、という行動パターンであった。

 広告営業の人間は、ほとんどこのパターンだが、編集のジャーナリストはクライアントを直接あるいは電話やテレコンなどでインタビューした後、自宅にこもって記事を書くことが多い。やはりオフィスに行くことは少ない。

 最近ではMS Teamsの他にもZoomやCiscoのWebExなど、Skypeよりも使いやすいツールが出てきたため、筆者も日本にいて米国を取材することも増えている。かつては電話取材だったが、最近ではYouTubeによる記者会見の場もできたため、米国に行かなくても取材できる機会が増えている。ただ、情報量としてはやはり直接会う方が多い。それも目的とするテーマだけではなく、その後の一緒にする食事では図々しくも私生活のことを話し合う機会も多い。その時こそ、その国の文化や社会の仕組みなどを知ることができる。

 テレワークは、仕事上は効率が高いかもしれないが、仕事のバックグラウンドを知る上ではやはり、フェイス2フェイスで会うことに越したことはない。ただし、効率だけを優先するならテレワークの方が取材効率は高いと思う。雑念に煩わせることがなく仕事に集中できるためだ。日本でオフィスを行かずに仕事ができるテレワークの時代は新型コロナが終結しても続くだろうか。

参考資料

1. Keeping legislative wheels turning during COVID-19、Microsoft Asia News Center,(2020/04/14)

国際技術ジャーナリスト・News & Chips編集長

国内半導体メーカーを経て、日経マグロウヒル(現日経BP)、リードビジネスインフォメーションと技術ジャーナリストを30数年経験。その間、Nikkei Electronics Asia、Microprocessor Reportなど英文誌にも執筆。リードでSemiconductor International日本版、Design News Japanなどを創刊。海外の視点で日本を見る仕事を主体に活動。

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