ノルウェーから来たデジタルプラットフォーマーCognite社、カギは人

北欧のIT企業といえば、スウェーデンの通信機器メーカーのエリクソン、自動車メーカーのボルボやサーブ、トラックメーカーのスカニアなどが思い浮かぶ。フィンランドでは通信機器メーカーのノキアの知名度が圧倒的だ。ノルウェーではファブレス半導体のノルディックセミコンダクタがすぐ浮かぶ。捕鯨漁の盛んなノルウェーに、IoTやデジタルトランスフォーメーションに欠かせないソフトウエアプラットフォームの企業、Cognite社が2016年に誕生、このほど日本にオフィスを置いた。

Cognite社はIoTシステムのデータを扱うソフトウエアプラットフォーム企業だ。IoTシステムでは、温度や湿度、振動や加速度、圧力(気圧)などのデータを拾うIoTセンサからデータを吸い上げ、ネットワークを通してクラウドに上げて、データを処理し、その結果をセンサのある現場ユーザーの元に届ける(図1)。デジタルトランスフォーメーションも実はこの仕組みが全く同じ。言葉としてIoTよりもデジタルトランスフォーメーションという言葉の方が最近はよく使われている。

図1 IoTシステム概略図 筆者作成
図1 IoTシステム概略図 筆者作成

ただ、一口にデータを処理するといっても、具体的にはセンサからのデータを収集し、欲しい情報との紐づけや管理を行い、保存する。その前後にさまざまなデータとの相関などを見つけるためのデータ分析を行う。センサデータはかなり重いためビッグデータとしてAIを使って解析することもあるし、多変量解析で計算することもある。さらに、データをスマートフォンやタブレット、PCなどでわかりやすい形(グラフ化)に可視化する。これらのデータ収集・管理・保存・解析・可視化、という一連の作業をソフトウエアのOS(Operating System)のように扱うのがソフトウエアプラットフォームだ。Cogniteは、このOSのようなプラットフォームを提供する会社である。

IoTシステムでは、IoTセンサを作っているメーカーやネットワークでクラウドにデータを送り出す企業、アプリケーションソフトウエアを書く企業など、さまざまな企業が協力するエコシステムがIoTシステムでは欠かせない。ソフトウエアプラットフォーム企業Cogniteも、このエコシステムの一員だ。

Cogniteがこのほど日本オフィスを開設したのは、「日本では製造業や重化学工業がしっかりしており、サービスやイノベーティブな製品で知られているからだ」と同社CEO兼創業者のJohn Markus Lervik氏(図2)は述べている。しかも日本の重工業はソフトウエアを使ってデジタル化を加速していることを知っている。実際、IHIやブリヂストンなどの重工業産業は、すでにIoTシステムを使って予知保全に取り組んでいる。IHIはセンサそのものも開発している。日本市場はCognite社にとって潜在顧客が多そうだ。だからこそ、日本法人がアジア太平洋地区のリージョナルヘッドクォータとなる。

図2 Cognite社CEO兼創業者のJohn Markus Lervik氏 ノルウェー大使館にて筆者撮影
図2 Cognite社CEO兼創業者のJohn Markus Lervik氏 ノルウェー大使館にて筆者撮影

これまで、IoTのソフトウエアプラットフォーマー(デジタルプラットフォーマー)には、Predixを提供しているGEや、PTC ThingWorx、Ayla Networksなどがいる。しかし、GE指向が強すぎたPredixや、PLM(Product Lifecycle Management)に強いPTC、民生に強いAylaと違い、Congniteは産業用のフォーカスしたプラットフォーマーである。CDF(Cognite Data Fusion)と呼ぶソフトウエアプラットフォームをクラウドベースで提供する。このため、PaaS(Platform as a Service)というビジネス提供企業である。これまでも、BP(British Petroleum)のような石油産業や製造業、電力会社などに強い。

しかも、同社の強みは何といっても、ソフトウエアの専門家と工業(産業)の専門家からなる集団だということである。GAFAのようなインターネットサービス企業で働いていた専門家もいるという。彼らの力を結集することで、データ分析にAIも組み合わせるとしている。同社のソフトウエアプラットフォームCDFでは、データを収集し、分析することでコンテキスト(context)化する、という特長もある。コンテキスト、すなわちさまざまなデータを融合させた、これまでの文脈や履歴から次の行動を示唆し提供する。それを可視化してユーザー企業に提供する。

事例として、ノルウェーの大手石油会社のAarbakke(オールバッカー)では、コンピュータ数値制御機械の寿命をいかにして伸ばしたか、を求めたケースがある。いわばスマートファクトリである。ここではアラームが鳴った時のログを集め、エンジニアは問題個所を同定しやすくした。リアルタイムのデータとこれまでの履歴データを統合し、CDFソフトウエアで可視化する。Aarbakkeではマスターログを見ながら目標とする保守時期を決め、故障する前に故障しやすくなる時期を予知できるようになったという。これによりダウンタイムを減らし、コスト削減になったとしている。

船舶産業でも、出向する船舶の燃料や速度、運航する航路などの最適化を図り、それらをアドバイスすることでコストダウンできたとしている。最適化することで燃費は改善するようになったという。

図3 コグナイト(株)の代表取締役社長兼本社のVPとなった徳末哲一氏 ノルウェー大使館にて筆者撮影
図3 コグナイト(株)の代表取締役社長兼本社のVPとなった徳末哲一氏 ノルウェー大使館にて筆者撮影

日本法人を設立し、コグナイト(株)の代表取締役社長兼本社のVPとなった徳末哲一氏(図3)は、CDFのパートナー企業にはグローバルな企業が多いが、やはり日本でも同様なエコシステムが必要だと考えている。システムインテグレータやアプリケーションパートナーと手を組み、顧客となるインダストリーパートナー(石油・ガス・電力・化学・製造業)にCDF製品を使ってサービスを展開していく。その際、コグナイトと名乗っても、日本社会では簡単に受け入れられないため、大手商社と一緒に営業活動を展開するとしている。

                                                       (2019/12/26)