パワーは本物で左腕はお手上げ、「バースの再来」には程遠い阪神新外国人ボーアの正しい使い方

2017年球宴本塁打競争では、あのアーロン・ジャッジと戦い一本差で敗れた。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

阪神が、エンジェルスからFAとなったメジャー92本塁打の大砲、ジャスティン・ボーアを獲得した。そのパワーは魅力だが、数多くの欠点も抱えている。起用にはそれなりの配慮が必要だろう。

生粋のパワーヒッターだが、多くの欠点も

ボーアのパワーは本物だ。主としてマーリンズ在籍の2015~18年(18年は途中でフィリーズに移籍)の4年間で83本塁打を放っている。2017年には球宴ホームランダービーにも参戦した(ファーストラウンドでヤンキースのアーロン・ジャッジに1本差で敗れた)。

そんなパワーヒッターが、31歳で来日することになった。これには、今季は52試合で打率.172で8本塁打と不調だったということ以外にも理由がある。

まずは、左打ちの彼は左腕投手には手を焼いている、というかからきしだ、ということが挙げられる。メジャー通算では、対右腕の打率/出塁率/長打率(これをスラッシュラインという)は.260 / .344 / .489となかなかのものだが、左投手には.217 / .304 / .326でしかない。特に長打率の差が尋常ではない。実際、それは本塁打の頻度にも顕著に現れており、右投手からは1556打席で84本(18.5打席/本)だが、左投手からは382打席で8本のみ、47.8打席/本というペースでしかない。

その結果、メジャーでのスタメン出場446試合中、390試合は右投手が先発のゲームだ。要するに、基本的にはプラトーン起用が限界との烙印を押された選手なのだ。

守備の面でも見るべき点がない。近年メジャーではスタークラスでも複数のポジションをこなせる選手が少なくないが、彼の場合守れるのは一塁だけだ。外野はマイナー時代に「守ったことがある」レベルだ。脚力のなさもあり、日本でもポジションは一塁手とパ・リーグ本拠地での交流戦時の指名打者に限定されるだろう。

選球眼や日本好きは利点

もちろん、期待できる点もある。

まず、比較的よく四球を選ぶことが挙げられる。 メジャー在籍6年間の通算四球率は11.2%で、これはその間のメジャー平均値8.2%を明確に上回っている。しかも傾向としては、絶不調の今季を別にすれば基本的に年々向上する傾向にあった。

近年、メジャーでそこそこ実績があり、まだ明確に衰えを見せる段階ではないにもかかわらず、日本に流れて来る選手が少なくない。

彼らに共通しているのは出塁率の低さだ。この欠点を抱えている選手はメジャーでは極端に敬遠される。パイレーツで4番を打ったギャレット・ジョーンズ(元巨人)、新人として20本塁打放ったオフにはリリースされ来日が決まったクリスチャン・ビヤヌエバ(元巨人、来季はメキシカンリーグ)などが代表例だ。来季ヤクルトでプレイするアルシデス・エスコバーも、とにかく四球を選べない(彼の真骨頂は遊撃手としての守備力だが、今のメジャーでは遊撃手でも総合的な打力が求められる)。

ボーアはその系列に属するフリースインガーではない。ギャレットやビヤヌエバですら、NPBでは多少選球するようになった。もともと四球を選べるボーアはこの点では期待できそうだ。

また、彼はイチローに心酔し、オフには一緒にトレーニングするため来日したこともある。異国での生活や日本文化がストレスになるタイプではないかもしれない。

辛抱強く起用して欲しい

ベストな使い方は一塁手としてのプラトーン起用だ。来季は三塁メインと言われているジェフリー・マルテを、相手先発投手がレフティの試合では一塁で起用した方が良いのではないか(その際、ボーアは試合後半の代打要員だ)。

現実には、球団は相手先発投手の左右にかかわらずスタメン出場させるつもりかもしれないが、それなら日本野球に慣れるまで辛抱強く使ってあげることが大切だ。基本的には器用な打者ではないので、そのパワーを発揮するまでにそれなりの期間が必要だと思う。数週間使ってダメだった、ということでそのまま二軍落ち、というパターンは避けたいところだ。

彼の得手不得手をしっかり認識し、過大な期待は避ける。そして適材適所の起用を辛抱強く継続する。そうすれば、「バースの再来」には程遠いだろうが、貴重な戦力になると思う。