MLBによるマイナー球団削減案、強硬すぎると独禁法免除も危ういことに?

マイナー球団の4分の1削減を打ち出したコミッショナーの意図は・・・(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

MLBがマイナー球団の削減を打ち出したが、対象の球団や自治体だけでなく議員達も反発している。彼らを敵に回すと、独禁法免除という特別待遇にも飛び火しかねない。

MLBによる削減案

MLBのロブ・マンフレッド・コミッショナーが、現在約160球団あるメジャー傘下のマイナー球団のうち、42を削減するプランを発表したことが議論を呼んでいる。

削減(厳密には提携関係の解消と表記すべきだろう)の対象球団はすでに公表されており、ルーキーリーグとショートシーズン1Aの球団が中心だ。その中には、ぼくも訪れたことがあるレッドソックス傘下のロウル・スピナーズ(マサチューセッツ州)や、日本のファンにもお馴染みのスタテンアイランド・ヤンキース(ぼくは行ったことはないが)も含まれている。

もちろんこの削減はまだプランの段階で、決定には至っていない。来季一杯でMLBとマイナーリーグを統括するNAPBLとの協定が更新時期を迎えるので、その機を捉え実行に移したいという。また、マイナーのリストラだけではなく、劣悪と言われるマイナーリーガーのプレー環境、労働条件の改善も提案に含まれている。また。現在6月に行われているアマチュアドラフトの開催を8月に変更することもセットになっている(ドラフト後に開幕するルーキーリーグやショートシーズン1A球団メインの削減とは、タマゴとニワトリだ)。そのドラフトでの指名も現行の40数巡目から20~25巡目までに削減するという。

「待遇改善のため」は方便?

マンフレッドの言い方は、「マイナーリーグの待遇改善の費用を捻出するため、球団数を減らす」ということだが、これは方便だ。低いサラリーの見直しやバスが中心の移動負担の軽減、遠征先ホテルのアップグレード等の待遇改善のほとんどは、単にメジャー球団が予算を投入すればすぐにでも解決する。その費用は決して少額ではないかもしれないが、総収入が100億ドルに達するMLBには、4分の1の傘下球団の削減を断行しなければ捻出できないレベルではないはずだ。

それでも、今回の削減案をマイナーリーグをメジャーの「ファーム」としてのみ捉えると、結構説得力を持つ。現在、全30球団が最低でも6球団を傘下に抱え、中にはヤンキースのように8球団を保有するケースもある。おそらく、そこまで多くなくても人材の育成・供給機関としての機能は果たせるだろう。他の北米4大スポーツと比べると、MLBは育成機関の維持負担が大きい。また、各メジャー球団にとって、傘下のマイナー球団の配置は地理的に理想的なものではないケースが多い。

マイナーはファームのみにあらず

しかし、マイナーリーグは単にファームであるだけではなく、ローカルエンターテインメントであり、地域社会の共有財産でもある。すでに削減対象になっている自治体や対象地域を地盤とする議員達からの反発も表面化している。100名を超す国会議員が連名でMLBに削減撤廃を求める書簡を提出したという。また、民主党の次期大統領候補でもあるバーニー・サンダースのような影響力の強い人物も異論を唱えている。

ビジネス・ネゴシエーションには必ず落としどころがある。マンフレッドは、猛反発しているマイナーリーグ球団関係者や自治体、議員達を押し切ってまで42球団も削減しようとしているのだろうか。「42」をぶち上げて、その半分もしくはそれ以下?あたりをゴールとして設定しているかもしれない。具体的な数値はさておき、傘下球団の再編成は毎年のように行われている。その拡大解釈の範囲に収めるかもしれない。その一方で、削減をチラつかせながら自治体に本拠地球場のアップグレード費用を負担させようとしているのかもしれない。

独禁法免除に飛び火も?

いずれにせよ、MLBにとって本件であまり強硬すぎるスタンスを取ることにはそれなりのリスクがあると思う。MLBは1世紀にわたり独占禁止法である反トラスト法免除法理を受けている(野球以外で同様の特権を享受しているプロスポーツはない)。また、マイナーリーグは国が定める最低賃金の適用を免除されている。これらは、長年にわたるロビー活動の成果なのだが、マイナー球団の削減を強硬に推し進めようとすると、それに協力した議員達を敵に回すことになる。

もちろん、反トラスト法免除という米球界の根底に関わる問題も含めて争うのは、双方にとって意図するところではないはずだ。必ず落としどころがある。そう考え、ぼくは本件を見守っている。