県民投票前の沖縄で感じた「もっとプロ野球キャンプを観光資源として活用を」

空港にはキャンプ歓迎の横断幕が。

沖縄にはプロ野球キャンプ地のメッカとして更なる発展を遂げる潜在力がある。これまでの歴史的背景からしても、政治はその努力を惜しむべきではない。

雨に祟られるのも野球

この日訪れた日本ハムキャンプには平日にもかからわず多くのファンが詰めかけていた
この日訪れた日本ハムキャンプには平日にもかからわず多くのファンが詰めかけていた

Sometime you win. Sometime you lose. Sometime, it rains. (勝つ時があって負ける時もある。そして、雨で流れることもあるのが野球ってもんさね)

マイナーリーガーの悲哀と喜びを描いたケビン・コスナー主演の映画「Bull Durham」(邦題さよならゲーム)の中で、辛酸を舐めてきたマイナーリーグの老監督が吐き捨てるように語った台詞だ。

2月19日、ぼくはこのフレーズを思い出した。

この日、日帰りの弾丸ツアーで沖縄にキャンプを観に行った。ここ数年、春のキャンプは専らメジャーをカバーするためにアメリカに行っていたので、沖縄キャンプは4年ぶりだった。

当初の計画は、早朝便で沖縄入りし那覇空港から北東約100キロの国頭の日本ハムキャンプで台湾からの新戦力王柏融をチェック、午後はコザで広島対ロッテの練習試合を観戦、最後は空港近くの奥武山公園で巨人の練習ぶりを見届けレンタカーを返却し帰京する、というものだった。

ところが、国頭到着後1時間も経たないうちに雨が降り出し一時はどしゃ降りに。その後小止みになったがグラウンドは土の内野には水が浮いた状態となり、メイン球場での練習はあっさり終了となった。そして、コザに向かう車中のラジオで広島対ロッテ戦が中止になったことを知った。コザ到着時にはもう雨は止んでいたが、中止の決定は覆らなかった。グラウンドコンディション不良はここでも同じだったのだ。したがって、コザと奥武山では球場の外でぼうぜんと佇んだだけだった。しかし、これは雨の多い沖縄では「あるある」だ。もともと、降雨の可能性を無視し日帰りなどというリスクの多いプランを立てたこちらが愚かなのだ。

プロ野球キャンプの聖地としての沖縄

巨人のキャンプ地奥武山公園は空港からも近くアクセスは申し分ない
巨人のキャンプ地奥武山公園は空港からも近くアクセスは申し分ない

実は4年ぶりの沖縄行きを計画したのには訳がある。今後、沖縄がアメリカのアリゾナやフロリダのようにキャンプのメッカとなって欲しい、という勝手な思いがぼくにはあり、自分なりにその可能性を肌で感じたいと思ったのだ。

「今でも十分キャンプの聖地じゃないか」という意見もあると思う。しかし、それは違う。たとえばアリゾナでは、キャンプの老舗のフロリダに追いつけ追い越せと、自治体が積極的に公費を投入しキャンプ施設を整備し、長期計画でフロリダから球団を引っ張ってきた。そのキャンプ施設の豪華さ充実度はNPBのそれらとはケタ違いで、巨人の沖縄セルラースタジアム那覇を中心とする施設でも足元にも及ばない。それを可能にしているのはもちろん経済効果で、この時期の州外からの観光客によるものだけで2018年は6億4400万ドル(約740億円)を超えたと地元アリゾナ州立大学は発表している。

今では沖縄で計8球団が春のキャンプを張るが、巨人や広島、日本ハムのように2次のみという球団もあるし、オープン戦は数えるほどで3月の初旬から春遠い本州や北海道のドームで試合が組まれている。その意味では、沖縄キャンプにはプレシーズン全体としてもっと拡大の余地があるのだ。

この日レンタカーの中では、ラジオから5日後に迫った普天間飛行場の名護市辺野古への移転に関する県民投票への参加を呼びかけるメッセージが再三流れていた。この週末の県民の判断には、決して大袈裟でなく沖縄の今後がかかっている。琉球王国時代は薩摩藩からの侵略の危機に晒され、戦時中は政府や軍からいわば捨て石にされた。その後も米軍配置の負担を押し付けられた沖縄県民が、自らの意思を表明するのがこの投票だ。

おそらく政府は米軍の辺野古移設を法律に則って粛々と進めるに違いない。沖縄の意思は別にして、日本全体の利益のためにはそれがベストとの考えに立脚しているのだ。

最終的にはそうなるのかも知れないし、沖縄も米軍があってこその恩恵もあるのだと思う。しかし、元大阪市長の橋下徹氏などは、沖縄は歴史的に他県以上に多くの犠牲を強いられてきたのだし、日本のみならず米国にとっても安全保障の戦略上大変重要な位置付けにあるのだから、それを政治的交渉のツールとして最大限活用し、それなりの経済支援・投資を引き出すべきだと論じている。

ぼく自身はとても沖縄問題を論じるほどの知識も見識も持ち合わせていないのだけれど、その理屈で考えるなら、秋から翌年春にかけての秋季キャンプやウィンターリーグ、春キャンプ地として日本のみならず韓国や台湾からも今まで以上に観光客が押しかけるオフの野球の聖地化を目指してはどうかと思うのだ。ベースボールを美しい海に象徴される自然や歴史遺産に並ぶ観光資源に育成していくのだ。

現在の設備では不十分

雨がやんでいるのにグラウンドが使えない、のはもったいない
雨がやんでいるのにグラウンドが使えない、のはもったいない

そのためにはもっと充実した設備が必要だ。奥武山やコザはまだしも、浦添や国頭などは残念ながら一昔前の地方球場の域を出ていない。ここに近代的な設備とファンを唸らせる美しさやアメニティを併せ持つ球場および付随するトレーニング施設を作るのだ。そこでキャンプを張る球団のファン以外も「訪れたい」と思わせる魅力的な施設でなければならない。「薄っぺらな意見だ」と言われるかも知れないが、それこそ今までの苦労の代償として国が積極的に支援することはできないのか。一時は「ディズニーランドを誘致する」などと菅官房長官が述べていたが、東京にもあるディズニー系施設よりも、「沖縄ならでは」の観光資源の方が良いと思う。

もうひとつのコスナーの代表的な野球映画である「フィールド・オブ・ドリームズ」の中での名フレーズではないが、If you build it, he will come.(それを作れば、彼は(この場合は観光客だが)やって来る)かもしれない。その観光客が押し寄せるならホテルはもっと増えるだろうし、彼らは宿泊以外でも沖縄におカネを落としていくはずだ。そして、高速道路や鉄道などの交通インフラの整備にもつながるかも知れない。

そして、ぼくが夢に描く「野球街おこし」のためには、ぜひとも実現してほしいことがある。

それはキャンプで使う球場は全て、内野部分は土むき出しではなく塁間以外は芝生にして欲しいということだ。2月でも温暖な沖縄はキャンプ地にうってつけだが、唯一アタマが痛いのは雨が多いことだ。

天気には勝てない。今後雨を少なくすることもできない。だからと言って、雨対策でドーム化してしまっては元も子もない。キャンプを観にわざわざ春遠い本州や北海道からやって来る人達は、降り注ぐ陽光と暖かい風に球春を感じたいのだ。

だから、キャンプ地には芝生の内野が欲しい。ぼくが訪れた19日にしても、雨はとっくに止んでグラウンドには日差しが差していたのに、メイングラウンドでは全てのメニューを中止にせざるを得なかったのだ。これは、内野を芝生化すれば格段に改善されるはずだ。

繰り返すが、24日の投票結果に依らず、歴史的、政治的に沖縄はここまでの負担の代償として相応の経済発展のための資金投入を求める権利があると思う。その投資先として、沖縄を秋から翌年の春にかけての日本の野球の聖地とするプロジェクトを提案したい。それには、内野の芝生化が見落とすことのできないポイントであることも付け加えて。

写真は全て著者撮影