史上最高益ながらハーパーらが残っている・・・MLBのFA市場停滞は経営側の出し渋りのせいか?

当初ナショナルズから3億ドルをオファーされるも断ったとされるハーパー。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

MLBもキャンプが始まったが超目玉ブライス・ハーパーを始め大物FAがまだ残っている。2季連続のFA市場停滞に選手組合は怒り心頭でストの懸念も報じられているが、市場の原理原則を踏まえると経営側の出し渋りとは言えない。

まだ残っている大物達

メジャーリーグはいよいよ2019年のキャンプ(スプリング・トレーニング)の幕が開いた。ファンにとってはこの上ない喜びの季節の到来だ。しかし、もうひとつ気持ちは晴れない。どうも、まだストーブリーグが終わった気がしないのである。

それもそのはず。まだ、まだ、超大物FA選手が市場に残ったままだ。最大の目玉コンビの2015年MVPのブライス・ハーパー(ナショナルズからFA)&4年連続33本塁打以上のマニー・マチャド(ドジャースからFA)の契約が決まらないことのみに注目が集中しがちだが、彼ら以外でも投手では2015年サイ・ヤング受賞のダラス・カイケル(アストロズからFA)、8年連続31セーブ以上のクレイグ・キンブレル(レッドソックスからFA)、野手では過去2年で66本塁打のマイク・ムスタカス(ブルワーズからFA)、球宴選出・ゴールドグラブ受賞とも4回のアダム・ジョーンズ(オリオールズからFA)らの大物が残っている。

経営側のせい?

この状況に、選手組合や代理人はカンカンだ。球界は史上最高の利益を挙げているのにこの状況はケシカラン、ということだ。「もはやストライキも辞さず」という物騒な声すら挙がっている。

しかし、ここで冷静に考えてみたい。果たして、本当に球団経営者たちはケシカランのか?ということだ。まず断っておくが、ここから先は、球団同士の談合はないという前提で語る(80年代にはFA契約を巡る談合があったが、その時オーナー達は最終的に相当痛い思いをしている)。

いまだにハーパーやマチャドが残っているのは、球団側が出し渋っているからとは言い切れない。契約は双方の合意があって初めて成立する。契約交渉の実態は当事者達しか分からない。別に経営側の肩を持つつもりはないが、一概に「どちらが悪い」と決めつけるのは危険である。

ストライキの大義名分なし

「利益が過去最高なのだから、オーナーたちはFAへの契約も奮発すべきだ」というのは、一見筋が通っているようでそうではない。もし、MLBがサラリーキャップ制度(総収入に対する年俸総額の比率に上限を設定すること、NFLでは下限も設定している)を採っているならその通りだが、実際はそうではない。それどころか、オーナー側がサラリーキャップ制を導入しようと試み選手組合が激しく反対したのが、1994~95年のポストシーズンすら中止に追いやった史上最悪のストライキの発端だった。総収入が伸びている時だけサラリーの総収入の伸びへの連動を訴えるのは、ご都合主義の誹りは免れない。

また、MLBなどのいわゆるアメリカ4大スポーツは、新規参入の自由を認めていない経営形態のため完全なる自由競争にさらされているとは言い難いが、MLB球団という企業経営においてはなるべく人件費を抑えようとすることは資本主義社会の当然の力学だ。今をときめくアップルもアマゾンも、現場労働者の賃金を低く抑えることでその巨大な収益を稼ぎ出しているのだ。MLBの場合は、それらの企業の現場労働者とは異なり、人件費の対象たる選手はそもそも一般市民には縁遠い莫大なサラリーを得ているのだから、人道的な意味での給与水準に関する同情の余地は少ない。

また、本当にストライキを行うならその争点を明確にしなければならない。1994~95年はサラリーキャップの導入反対が、それに次ぐ長いストライキだった1981年(シーズンが50日間にわたり中断した)の場合はFA移籍への補償制度への反対が、選手組合のストライキの目的だった。しかし、現在においてはそれはない。単に自分たちが期待する条件のFA契約が次々と発生しない漠然とした不満があるのみだ。明確に定義できる争点が存在しない以上ストをやりようもないし、ファンに支持もされないだろう。