権藤氏野球殿堂入りを考える「漠とした長年の貢献より客観的な実績優先で」

権藤氏は侍ジャパンのコーチとしてWBCにも参加した。(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

野球殿堂入りエキスパート部門で権藤博が選出された。現役時代の強烈な印象やコーチとしての貢献、監督での日本一への評価だろうが、投手では通算82勝で監督としては219勝だ。もっと優先すべき者がいると思う。

競技者表彰は、「プレーヤー」と「エキスパート」

前回は、野球殿堂入り投票結果の「特別表彰」について触れた。今回は、もうひとつのカテゴリー(というかこっちがメイン)の「競技者表彰」について私見を述べたい。

「競技者表彰」には2種類ある。「プレーヤー部門」と「エキスパート部門」だ。前者は引退後5年以上21年未満の元選手を対象とし、後者はその資格を失った元選手に加え、元監督&コーチ、元審判を対象としている。

そして、今回はエキスパート部門では、権藤博が規定の75%以上となる76.7%の票を得て選出された。彼は候補としては長年停滞していたが、前回は65.6%と票を伸ばし今回に期待が高まっていた。

何が評価されての選出?

個人的な印象としては「評価のポイントがやや不明確だなあ」というものだ。

権藤は、現役時代はルーキーイヤーから2年連続で30勝以上という驚異的な活躍を見せた。当時の中日はとにかく権藤中心の投手起用だったようで、「権藤、権藤、雨、権藤」という有名なフレーズが生まれた。しかし、この酷使が祟り、目覚ましい活躍はこの2年間のみ。通算では82勝でしかない。日本の野球史を語る際に見落とすことのできない存在だとは思うが、積み上げた数字は殿堂入りには物足らない。

全盛期は短かったが凝縮されたパフォーマンスを見せた、ということであれば20勝以上4度で通算107勝の「怪童」尾崎行雄あたりはもっと評価されて良い(尾崎は殿堂入りしていない)。打者も含めるなら、ランディ・バース(今回は候補に入って落選)はNPBキャリア6年ながら、54本塁打での三冠王やNPB最高打率.389などの抜群の成績を残している。

権藤は指導者としての実績もある。1998年に横浜を率いて日本一になっている。しかし、監督としての通算勝利は219勝でしかない。コーチ時代が長く、投手の分業化をいち早く提唱したことは事実だが、このあたりの功績は定量化し難い。まずは、客観的な指標での評価を優先すべきではないか。結局指導者としては、監督としてリーグ優勝1回(通算236勝)&長期にわたるコーチとしての貢献あり、の伊原春樹あたりと大差ないのではないか。

すると、選手としても指導者としてもそれだけでは不十分だがニコイチで殿堂入り、というのも積極的には支持し難い。結局は、選手としては投手としても打者としても並みで監督としてもキャリアが長くはなくかつ大きく負け越している関根順三も2003年に殿堂入りしているので、それに倣った、ということか。

もっと目に見える数値優先で

ホンネのところは漠然とした「長年にわたる球界への貢献」ということになってしまうのだろう。何だか、業界内で長期在籍者を推薦し合う「叙勲」みたいであまり好感は持てない。

実は、もっと他に優先して選出してあげるべき存在がいると思う。今回の候補者の中では、ランディ・バースや柴田勲(2018安打&盗塁王6回)などはしっかり数字を出している。また、レロン・リー(NPB11年で打率.320)、ブーマー・ウェルズ(三冠王を含み首位打者2回、本塁打王1回&打点王4回)、土井正博(2452安打&465本塁打)や松原誠(2095安打&331本塁打)、長池徳士(本塁打王3回&打点王3回)などはもはや候補にすら挙げられていない。

エキスパート部門の在り方には、課題山積だ。