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大谷翔平の故障離脱でこれから湧き上がる議論 「二刀流の是非」「力投やスプリッターのリスク」・・・

豊浦彰太郎Baseball Writer
二刀流や100マイルの剛速球&スプリッターのリクスがこれから論じられそうだ。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

メジャーのブレーキングニュースはいつも夜明けとともにやって来る(時差の関係だが)。今回は、エンジェルスの大谷翔平の故障者リスト(DL)入りだ。右ヒジの靭帯に損傷が見られるという。今季のMLBでここまで最大のセンセーションと言っても過言ではない大谷のDL入りは、これから内外のメディア、ファンの間でどんな議論や影響を及ぼすか、予測してみたい。

大谷の右ヒジの異常は、昨年オフのエンジェルスとの契約の際にも指摘されていた。その時は、程度の軽いGrade 1との診断だったが、今回はGrade 2だという。程度の深刻さそのものよりも「悪化していた」という事実の方が、重要なポイントだと思う。すでに、PRPと呼ばれる血小板治療を施したそうだ。これは、2014年にヤンキースで衝撃的なデビューを果たした田中将大が、その年の7月に大谷同様にヒジに故障が発生した際に受けた治療法だ。これにより、腱移植を行ういわゆるトミー・ジョン手術(平均で1年半のリハビリ期間を要する)を回避することができた。大谷の場合は、今後約3週間経過観測を行うという。その後の再検査で手術の要否が最終的に判断されるだろう。

現時点では大事に至らぬことを祈るのみだが、以下は、これから湧き上がるであろう大谷を巡る内外の議論と動きの予測だ。

二刀流の是非

これは避けられないだろう。投手大谷の離脱は、エンジェルスにとって中軸打者の損失でもある。万が一、トミー・ジョンを受けるということになると、少なくとも来季の後半までは大谷は打者としての出場すら叶わないことになる。また、昨季NPBで登板が少なかったのも打者走者としての故障が原因だった。改めて、Two-wayのリスクが浮き彫りになった。

トミー・ジョン手術の要否

今のところ今回は手術を回避できる可能性が高そうだが、「手術を受けて完治させるべき」との意見も出てくるだろう。なぜなら、大谷はまだ23歳と若く、エンジェルスは契約上6年もの長きに亘り大谷を拘束できるからだ。しかも、年俸はその実力やマーケティング効果からするとタダ同然だ。復帰を焦る必要はないとも言える。

力投傾向のリスク

近年の投手のヒジの故障多発傾向には様々な要因が指摘されているが、その中でも豪速球を初回からガンガン投げることの影響はその筆頭だ。これによりヒジは悲鳴をあげているというのだ。スピードガンのみならず数々の計測・分析機器の発達により、投手は「手抜き」ができなくなった。また、分業の浸透もこれに拍車を掛けている。先発完投時代のようにペース配分は許容されなくなった。これで良いのか?

スプリッターは「死の投球」か?

日本では、高校生ですらスプリッター(フォークボール)を多投するが、アメリカではこれはヒジを痛める原因になる「Death pitch (死の投球)」とされてきた。田中将大も2014年の故障以降、この球種への依存度を低めている。大谷が100マイルの剛速球とスプリッターを武器とすることが今後議論の対象になることは必至で、モデルチェンジを求める声も出て来るだろう。一方で、スプリッターと故障の因果関係は医学的に証明されてはいない。そして、投球数管理に厳しくスプリッターを避けながらも米国の投手にヒジの故障が絶えないのも事実なのだ。

日本人投手はアマチュア時代に酷使され過ぎ?

主として高校時代に連投・連投で日本人投手は壊されかけている、というのも米国では一般的な見方だ。そして、それを明確に否定するのは難しい。彼らとて日本時代の起用にまで影響を及ぼすことは不可能なため、この傾向はgivenとして受け入れるしかないのだが、日本人投手獲得の際はその賞味期限の判断に従来以上に神経質になるだろう。

大谷一本槍の日本メディアの困惑

日本のメディアは野球関係に限らず「大谷特需」を享受している。衛星放送でも「とにかく大谷」だ。彼の故障離脱により、放送カードは「手のひら返し」になるのだろうか。日本でのMLB中継はどうしても日本人選手所属チーム中心にならざるを得ないのだが、今季の「大谷命」傾向もチト異常だ。それが欠場により大胆に転換するとしたら、それも恐ろしい話だ。彼らは他の多くのMLBの魅力をスルーしていることの証でもあるからだ。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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