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中日入団テスト合格の松坂大輔、その機会すらない村田修一、「松坂世代」明暗の背景

豊浦彰太郎Baseball Writer
トミー・ジョン手術以降はフォームからもダイナミズムが消えたが。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

松坂大輔が中日の入団テストに合格したようだ。右肩の故障でソフトバンク在籍の3年間で1軍登板はわずか1試合のみだった彼が、一発のテストで合格判断を得たということは、基本的には「テスト」は形式的なものだった可能性が高いとも言えそうだ。

松坂大輔が中日の入団テストに合格 背番号は本人希望で「99」

本当に松坂の戦力としての潜在性を評価したいなら、一日限りの投球練習によるテストよりも微に入り細に亘るメディカルチェックだと思うし、キャンプやオープン戦を通じた一定期間のパフォーマンスを評価する方が適していると思う。ということは、中日が松坂に対し求めたものとしては、戦力としての部分以外のものがあるということだろう。

しかし、中日を責める気はない。契約条件が仮に巷でうわさされているように2000万円だとすると、松坂の実績がもたらす話題性からするとタダ同然だからだ。言い換えれば、松坂獲得は戦力的にはノーリターンかもしれないが、その分ノーリスクだ。営業面での効果も勘案するならノーリスク・ハイリターンとすら言える(もちろん活躍して欲しいが)。

松坂のケースと比較すると、オフに巨人からFAとなった同じ「松坂世代」の村田修一がいまだにテストの声すら掛かっていないのは摩訶不思議だし、ここにNPBの問題点もうかがい知れる。過去3年まったく働いていない松坂とは異なり、村田は昨季も118試合で14本塁打だしその前年に関して言えば全試合に出場し25発も放っている。別に彼は巨人時代同様の年俸(昨季は2.2億円)を求めている訳ではないのだ。編成上、三塁手や一塁手、指名打者のレギュラーが必要ない球団であっても、長いシーズン思わぬ故障者や不調者は発生するものだ。それこそ、松坂並みの低年俸で「とりあえず獲っとくか」と名乗り出る球団がないのはどういうことか。NPBでは編成において戦力強化や年俸総額制限の他にも背後に要因が存在するということか。だとすれば少々不健全だ。

本来なら、FA市場で村田のようなある意味では「難しい商品」を売り込むのは、メジャーリーグのように選手本人ではなくやり手の代理人であるべきだ。とても残念だが村田は絶望かもしれない。これは2年前の松中信彦のケースにも言えることなのだけれど、交渉のプロではない選手が黙々とトレーニングを続けること「だけ」が契約先を探す手段になった段階で可能性は限りなく小さい。

ぼくは、松坂や村田のようなケースでは(再三アメリカのケースとの比較で恐縮だが)キャンプでの招待選手という制度があれば、それがお互いのためにベターなのにと思う。球団は、キャンプ&オープン戦での状態を見極め採用するかどうかを決めればよい。球団側にリスクはないのだから、招待選手数に制限を加える必要もない。そうなれば就職口を探す選手にもメリットがある。そして、くどいようだがビジネスマンではない選手を効果的に売り込むには代理人制度の確立が必要だ。

少なくとも現時点での松坂と村田の明暗は、突き詰めればこの2人が「松坂世代」であっても「村田世代」ではなかったことに帰すべきだろう。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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