「大谷翔平、カネより夢でメジャー」は美談ではない。これでポスティング改定交渉はMLBの全面勝利?

(写真:アフロスポーツ)

9月13日、「大谷翔平メジャー挑戦」のニュースが日本中を駆け巡った。いや、日本だけではない。アメリカのメディアもこぞってこのニュースを取り上げ、「アメリカはこう言っています」ということが大好きな日本メディアも、彼の地での報道ぶりをニュースとして取り上げた。

今回のポイントは「カネより夢」だろう。MLBでは昨年11月末に合意された新労使協定で、海外FA(ポスティング経由のNPB選手もこの範疇に入る)は25歳以上でかつプロトップリーグでの経験が6年以上でないとマイナー契約しか結べなくなった。大谷を手に入れるには完全な自由競争下では2億ドルは必要とも噂されていたが、そんな稀代のスター候補がマイナー契約しか手にできず、契約金もマックスで1000万ドルでしかないというおかしな事態となった。

「カネより夢」は一見美談だが、ぼくにはちょっとひっかかるものもある。2年待てば2億ドルを手にできるかもしれないのに、マイナー契約を結び、メジャー昇格後も原則3年間はメジャー最低年俸に甘んじなければいけない現実をどこまで彼自身が認識しているのか疑問だ。彼は、「そんな価値観で野球に取り組んでいない」のかも知れない。しかし、メジャーは「そんな価値観」の世界だ。プレーヤーとしては超一流でも、まだ23歳の若者だ。今後新しい世界とそこで一緒に過ごす仲間達の金銭感覚に触れた後、ホゾを噛むことになりはしないだろうか。もう一度言うが、メジャーは間違いなくカネ、カネ、カネの世界だ(それが悪いとも思っていないが)。また、彼ほどの選手が自分を安売りしてしまうことの後進への影響もチト心配だ。

また、もうひとつ大事な点がある。今年の5月にMLB機構はポスティング制度の改定をNPBに申し入れており、まだその締結はなされていないということだ。MLBの改定案が具体的にどのようなものかは明らかではないが、100%MLBの利益拡大を図ったものであることは想像に難くない。そして、NPBはそのMLB案を受け入れない権利を有しているが、このような早い段階から、大谷は行きたい、日本ハムは行かせたい、ということが既成事実になると、MLBの改定案をハナっから受け入れることが前提になってしまう。交渉は本来両者の合意があって初めて成り立つものだが、それをすでに否定している、それが今の状況だ。

NPBは大谷を渡米させるために(それも本来の価値に見合わぬ条件で)、MLBファーストの改定案を無条件で受け入れてしまうことになりそうだが、これこそ4年前の田中将大の移籍をめぐるポスティング改定騒動での愚だった。