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ブルージェイズが青木宣親を戦力外にしたのは必然で、本人にもむしろ良い措置だろう

豊浦彰太郎Baseball Writer
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

青木宣親は、ブルージェイズをDFA(Designated For Assignment 戦力外の意味)となってしまった。ご存知の通り、青木は7月末のノンウェイバーのトレード期限前に、アストロズからブルージェイズに放出された。以前にも記したように、ブルージェイズとしては特に青木を欲していた訳ではなく、アストロズにおいても戦力的に浮いた存在になりつつあった。仮にアストロズに残留していたとしてもこの時期にDFAとなった可能性は高く、ブルージェイズに於いても、今回のDFAがなかりせばこのまま飼い殺しでオフには再契約をオファーされない、というのがシナリオだったと思われる。その意味では、この措置は青木には良かったのではないか。プレーオフへの出場の可能性を残しかつ控え外野手を欲している球団が、獲得に乗り出す可能性がない訳ではない(8月中に獲得した選手は、ポストシーズンで出場選手登録が可能だ)。

そもそも、青木がブルージェイズに移籍したのは、同球団が今季不調で年俸1300万ドルの左腕フランシスコ・リリアーノの引取先を求めたのがきっかけだろう。先月末の時点で、ポストシーズン進出の可能性が極めて限られたジェイズにとって、高年俸で今季不調のリリアーノは余剰以外の何者でもなかった。リリアーノの獲得を目指す球団は極めて限られたと思われるが、その中の1つがアストロズだった。全体としては不振ながら、左打者には比較的有効だった彼を、左腕不足のブルペンを強化する駒と位置づけたのだ。

リリアーノを手放したがっているジェイズの足下を見たアストロズが、交換条件として提示したのが、戦力的に不要な青木の引き取りだったとぼくは見ている。外野陣が充実しているジェイズにとって、青木を獲る必要性は限りなく皆無だったと思われるが、リリアーノという重荷から解放されるには致し方なしだったのだろう。リリアーノの今季年俸は前述の通り1300万ドル、それに対し青木は550万ドル。トレード時点での残額比較でも、年俸負担はそれなりに軽減される。

いつも日本人選手には甘い(現実を見ようとしない)日本メディアの中には、「ブルージェイズにとって青木は必要な戦力」というような楽観的な報道もあったが、現実はそうではなかったのは明白だ。この1か月間34打席しか機会を与えていないし、その間OPS.888と好成績を残しながら球団はDFAとしているからだ。

メジャーでは、9月1日から出場選手枠がそれまでの25人から一気に40人に拡大する( 別に40人まで拡大しなかればならない訳ではないが)。ブルージェイズとしては、使いたい選手がいたとしても数日待てば、青木をDFAにしなくてもそれが可能だった。そのまま青木を放置し、オフになると100万ドルのキャンセルフィーを払って、来季オプションの600万ドルを破棄することもできた。しかし、ここでDFAにしておけば、冒頭述べた通り、プレーオフに向け控え選手層を強化したい球団がトレードを求めてくる可能性もある。そうすると、今季の残年俸やオフに支払うキャンセルフィーを節約できるし、交換相手に必要な戦力を得ることができるかもしれない。その意味では、このタイミングでのDFAも必然であり、青木自身にとってもベターではないか。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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