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NPB最高峰イベント日本シリーズ初戦の始球式は、時の人よりカープOBがふさわしい

豊浦彰太郎Baseball Writer
(写真:長田洋平/アフロ)

注目の2016年日本シリーズ、第1戦の始球式を務めたのはオリンピック4連覇を果たし国民栄誉賞を受けたレスリングの伊調馨さんだった。時の人ではあるが、プロ野球界にとって年間で最も大事なイベントである日本シリーズだ。もっと、野球愛を感じさせる人選はできないものだろうか。

第2戦はリオ・パラリンピック同メダリストの女子車いすテニスの上地結衣さんだ。思い出してみると、昨年のシリーズ初戦の始球式はラグビーの五郎丸歩さんだった。

この人選は、日本シリーズスポンサーのSMBC(三井住友銀行)の意向を強く反映したものだろう。同銀行はオリンピック・パラリンピック、そしてラグビー日本代表の公式スポンサーだからだ。実際に、大役を務める選手たちには素直に敬意を表したいが、率直に言ってこの舞台にふさわしくないと思う。

ぼくは毎年この時期に言っているが、長いシーズンの中には話題の人やプロモーションを兼ねた芸能人の登場も良いと思う。しかし、日本シリーズはシーズン開幕戦などと同様に、ファンにとってはとても大事な思い入れのあるイベントだ。始球式も野球愛を感じさせる人選であるべきだと思う。

昨日の初戦で言えば、広島最後の日本一の1984年のメンバーにご登場願うのはどうだろう。また、先日他界された山本一義さんのご遺族の方でも良かったのではないか(ご遺族の方のご意向を確認せずに書いている非礼はお許し願いたい)。

SMBCほどの大企業にとっても大切なのは、知名度の浸透ではなく好感度の高揚だろう。日本シリーズを見ている人たちは、ライト層も含め広い意味での野球ファンだ。彼ら(われわれと一人称で言うべきか)に良いイメージを持ってもらうには、場内の売店でコーポレートカラーの緑のグラデーションで塗り分けられた気持ち悪い野球ボール(去年のシリーズで神宮で見つけ戦慄した)を売ることよりも、野球ファンの琴線に触れる始球式の人選を行う方が効果的ではないか。何なら、広島のレジェンドOBを担ぎ出し、「彼らはSMBCがこの舞台にふさわしいと感じ、選出させてもらいました」とアナウンスすれば良い。そして、緑のボールは愛社精神あふれる社員にでも配布したらどうか。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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