形骸化進む国内FA、理由の一端は選手のメリットを獲得できぬ選手会にあり?

(写真:毎日新聞デジタル)

日本ハムの武田勝投手が、FA権を行使せず残留することが決まった。今季自己最少の9試合の登板に終わり、球団からは野球協約限度額の40%(1億円以上の場合)を遥かに超える7000万円減の年俸4000万円プラス出来高を提示されたが、これを受け入れたという。一部メディアは「チーム愛を優先させた」としてあたかも美談であるように報じている。

このオフは、FA権を有する選手の「宣言見合わせ」が相次いでいる。これは、武田のように不振でFA市場では高値が付きそうもない選手だけではない。打点王を獲得したヤクルト畠山和洋のような目玉選手もあっさり残留を選択している。楽天の嶋基宏、ソフトバンクの摂津正も、FA宣言しなかった。せっかくの権利を行使しない選手が続出しているという事態ははっきり言って異常だ。この制度を活用しようとしているのは、このオフで言えば松田宣浩(ソフトバンク)のようなメジャー移籍を目指す選手のみだとも言えるだろう。どうして選手は、かくも保守化しているのか?

理由は二つあると思う。まずは、FAになっても年俸が一気に高騰する可能性が低いことが挙げられる。それはルールのせいだ。現行の規定では、FA選手と契約する場合は前年度の年俸が上限とされている。もっとも、基本額にはキャップ被せられてもボーナスには制限がないのだが、制約があることには違いない。これは、FAとなるのは「好きな球団に行きたい」のが動機で「高額な契約を手にする」のが目的ではないとの認識に立っていると言わざるをえない。これはおかしい。ドラフト前に「巨人、巨人」と騒いでいた昭和の高校生ではあるまいし。加えて、FA選手を獲得した球団は、有力選手の場合は金銭もしくは人的補償を提供しなければならない。要するに、FA選手を獲得するのは必ずしも得策ではないのだ。したがって、奪い合いにはなり難い。

もうひとつは「FA資格」というプロセスだ。FA資格を取得した選手であっても、手続き上は「宣言」というともすれば心理的には抵抗感を感じさせるプロセスを経なければならない。このことも、影響を与えているだろう。そして、多くの球団が「一旦FAを宣言した選手とは契約交渉を行わない」という方針を打ち出していることが、拍車をかけていると言えよう。

こういうことを論じると、「オーナー連はけしからん」という風に球団側の姿勢に対する問題の指摘になりがちだ。しかし、ぼくはそれは違うと思う。彼らもビジネスを行っているのであり、自らが経営もしくは所属している組織の利益になるよう事を運ぼうとするのは当然だ。「野球界のあるべき姿はこちらだから」と、選手の利益を考慮してあげるべきだと考えるのはビジネス力学上ナンセンスだ。

そうなると、本質的には選手会側が本来果たすべき機能を 全うしていないのが原因、と言わざるを得ないだろう。MLBとは異なり、日本ではFA制度は選手の利益のためというよりは、一部の資金力のある球団が補強を有利に進めることができることを目指しスタートしたとも言える。おそらく、ぼくも含めて一般のファンには分からぬ諸事情もあるのだろう。しかし、結果のみで判断するなら、FA制度発足以降、目に見える成果を何も勝ち取っていない現在の選手組合は、制度が形骸化しつつある現状の責任の一端を負うていると思う。