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55歳。80代の両親に運転をさせたくない。地方の実家に戻ることを検討中です~スナック大宮問答集45~

大宮冬洋フリーライター
愛知県蒲郡市での「スナック大宮」。左手前のメガネ男性が筆者です。(参加者提供)

スナック大宮」と称する読者交流飲み会を東京、愛知、大阪などの各地で毎月開催している。味わいのある飲食店を選び、毎回20人前後を迎えて和やかに飲み食いするだけの会だ。2011年の初秋から始めて、先月の愛知・蒲郡での開催で140回目に到達した。のべ2800人ほどと飲み交わしてきた計算になる。

 筆者の読者というささやかな共通点がありつつ、日常生活でのしがらみがない一期一会の集まり。30代半ばから50代半ばまでの「責任世代」が多い。お互いに人見知りをしながらも美味しい料理とお酒の力を借りて少しずつ打ち解けて、しみじみと語り合えている。そこには現代の市井に生きる人の本音がにじみ出ることがある。

 その会話のすべてを再現することはできない。お客さんの1人と改めて対話をした内容をお届けする。会話に参加する気持ちで読んでもらえたら幸いだ。

***ケンタロウさん(仮名。既婚男性、55歳)との対話***

東京在住のフリー校正者。在宅ワークもできるので地方移住を考えています

――ケンタロウさんのお仕事は僕と同じ出版関係だと聞きました。

 フリーの校正者です。校正専門の会社に登録していて、時給計算で月給をもらっています。会社のほうが資料もあって仕事がしやすいのですが、在宅ワークも可能です。地方で暮らしながら働いている人もいますし、私自身も新型コロナウイルスの感染が拡大していた頃は在宅をしていました。

 テレビドラマ化もされた『校閲ガール』の影響もあり、最近はこのマニアックな職業に興味を持ってくれる人が少なくありません。嬉しく思っています。

――東京での開催も多いスナック大宮。今回は僕の自宅がある愛知県蒲郡市でやりましたが、東京在住のケンタロウさんがわざわざ参加してみようと思った理由を教えてください。

 私の両親は愛知県出身です。父が勤め人だった頃は転勤族だったので、私自身は愛知に住んだことはありません。父の定年後は出身地の蒲郡市に戻りました。今は既婚の妹が近くに住んでくれているのですが、旦那さんの仕事の関係で来年からは海外に住むことが決まっていて、長男の私としては親の近くにいてあげたいと思っています。80代の両親はそろそろ運転免許証を返納してほしいので……。

 そんなことを考えながら蒲郡市の商工会議所を訪れて、こちらでも校正の仕事が見つかりそうかを相談しました。「同じように東京から引っ越して来たライターさんがいる」と大宮さんの名前を教えてもらったのがきっかけです。実際に会ってみたいし、校正の仕事をもらえたら嬉しいなと思ってスナック大宮に参加しました。

スナック大宮の会場は地元の人に愛されている個人経営の飲食店です。今回は蒲郡駅前「たむら」で地魚を使った和食コースを出してもらい、県内外から集まった17名で堪能しました。(参加者提供)
スナック大宮の会場は地元の人に愛されている個人経営の飲食店です。今回は蒲郡駅前「たむら」で地魚を使った和食コースを出してもらい、県内外から集まった17名で堪能しました。(参加者提供)

東京はちょっと息苦しい。気さくでのんびりした雰囲気の仲間がほしい

――おそらくライターも校正者も蒲郡では他に一人もいません。需要があるかは別ですが(笑)、希少な存在であることは確かです。スナック大宮に参加したご感想もお聞かせください。

 気さくでのんびりした雰囲気の人が多くていいなあ、と思いました。東京で出版業界の人たちと集まると会話の内容も限られていて、ちょっと息苦しかったりするので……。スナック大宮にはいろんな業界の人が参加していて、蒲郡に移住してからもこういう仲間ができたらいいなと思いました。

 蒲郡という町自体も訪れるたびに好きになります。山も海も近いし、私は中日ドラゴンズファンだからです(笑)。友だちも欲しいので、本屋も兼ねた喫茶店でも始めようかなと思っているところです。

――さきほどご高齢の両親に運転をさせたくないとおっしゃっていましたが、ケンタロウさんご自身は車の運転はするんですか? ちなみに僕は車を持っていないし運転は苦手です。移動は妻や友人の車に乗せてもらうか徒歩。ライターとしてよりも「いつも歩いている人」として蒲郡駅前で知られています(笑)。

 実は、校正者になる前はトラックの運転手をしていました。魚を積んで築地市場に通っていたこともあります。職業としてはもう無理ですが、運転自体は好きです。東京から蒲郡までも自家用車で行くことがほとんどなので、眠くなるのを防ぐためにヒッチハイカーを乗せることもあります。大宮さん、嫌じゃなかったら今度東京から一緒に蒲郡に帰りましょう!

蒲郡駅前の風景。大きな商業施設は1つしかありません。徒歩4分で何もない港にたどり着く「余白」の多い街です。(筆者撮影)
蒲郡駅前の風景。大きな商業施設は1つしかありません。徒歩4分で何もない港にたどり着く「余白」の多い街です。(筆者撮影)

移住者が友だちを作る方法。自分らしい場を地域で作り、共感する人に集まってもらう

 以上がケンタロウさんとの会話だ。丁寧で優しいけれど、人懐っこくて前向きな印象を受けるケンタロウさん。50代半ばという年齢で出身地ではない地域に移り住んでも孤立せずにやっていけるタイプに感じた。

 ただし、出版業界の場合は取引先や同業者も東京に集中しているので、地方では仕事つながりの仲間は作りにくい。筆者もケンタロウさんも既婚者だけど子どもはいないため、保護者つながりで人間関係を築く道も閉ざされている。どうすればいいのだろうか。

 筆者の場合は、『蒲郡偏愛地図』というフリーペーパーを勝手に作って配布するという活動を思いついた。今では手伝ってくれる人も増えて、打ち合わせや取材、打ち上げと称して会食できる友だちもできた。ケンタロウさんが本当に移住して来たら校正を担当してもらおう。

 ケンタロウさんが実家に住みながら開業しようとしている「本屋兼喫茶店」はとてもいいアイディアだ。ポイントは妥当かつトガったコンセプトの店にすることだと思う。ケンタロウさんは出版業界人なので、本屋を兼ねるという点は妥当である。自分が校正を担当した書籍を中心に扱って、ときどき校正講座を開いたりしたらより個性が出る。

 そして、喫茶の料金は高めに設定するべきだ。少なくとも安くはしない。既存の喫茶店などとの棲み分けができるだけでなく、客が自然と一定の層に絞り込まれる。店主のケンタロウさんを中心としたコミュニティを形成しやすくなり、気の合う人と知り合いやすくなるだろう。

 人はパンのみにて生きるにあらず。特に地方で豊かに楽しく暮らすためには、家族以外に人間関係の広がりを持つことが重要だと思う。

好奇心旺盛だけど穏やかな人が集まってくれるのがスナック大宮。利害関係抜きで気楽に語り合っています。(参加者提供)
好奇心旺盛だけど穏やかな人が集まってくれるのがスナック大宮。利害関係抜きで気楽に語り合っています。(参加者提供)

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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