普通の独身男性が見当たらない――。こんなボヤキを30代40代の独身女性から聞くことが多い。前向きに働いていて、イケメンではなくても身だしなみに気を遣っていて、思いやりのあるコミュニケーションができる同世代の男性が少ない、いたとしても既婚者だというのだ。

 筆者は2019年の秋から「独身限定!スナック大宮」というイベントを隔月ペースで開催している。いわゆる婚活パーティーではなく、筆者の読者のうちで独身の人に声をかけ、結婚相談所などの「プロ」も招き、みんなで忌憚のないおしゃべりと交流をする会だ。マッチングを目的としていないからなのか、「普通の独身男性」で結婚願望もある人が参加してくれることも多い。彼らのリアルな状況と心境を聞き取り、筆者の意見も書きたいと思う。

 4人目は、通信関連企業に正社員として勤務する橋本俊彦さん(仮名、43歳)。神奈川県出身、年収700万円。ジョギングが趣味だという細身の男性だ。社会人になってから取得した国家資格を生かして補助金申請サポートの副業もしている。エネルギッシュそうな経歴だが、実際に会うと良くも悪くも薄い印象である。自分からあまり話そうとしないけれど、今回のように誘うと気軽に応じてくれる。つかみどころのない人物だ。飲みながらゆっくりと話を聞くことにした。

***橋本俊彦さん(仮名、43歳)の話***

なんとなく距離ができて、連絡を取り合うまでの時間が空くようになりました

 平日も基本的に自炊しています。家事は嫌いじゃないし、家に一人でいたほうが落ち着くからです。週に一度ぐらいは掃除をしています。

 神奈川の実家には両親が住んでいます。ともに元気です。月に一度ぐらいは顔を見せに帰っています。10年ぐらい前までは母から「いい人はいないのか」と結婚を急かされました。最近は何も言われません。あきらめたのかもしれませんね。妹は結婚していて子どももいます。

 付き合っている女性がいたこともありますが、親に詳しくは言いませんでした。直近では3年ぐらい前でしょうか。相手は5歳下のOLでした。友だちつながりの飲み会で会って、なんとなく連絡を取り合って飲みに行くようになりました。1年ぐらい付き合って、結婚の話が出る前に終わりました。自然消滅です。

 別れた理由ですか? 特にありません。なんとなく距離ができて、連絡を取り合うまでの時間が空くようになりました。私が結婚に進むことに自信がなかったのかもしれません。その人との結婚というよりも、結婚自体に自信がありませんでした。

 でも、一族を絶やしちゃいけないと思っているので、早く結婚して子どもが欲しいです。一人でいることにはあまり寂しさを感じません。でも、休みの日に1日中家にいて誰とも話さなかったりするとさすがに寂しいです。

4月に緊急事態宣言が出る直前、東京・新宿のダイニングバー「ル・タン」で語り合いました(筆者撮影)
4月に緊急事態宣言が出る直前、東京・新宿のダイニングバー「ル・タン」で語り合いました(筆者撮影)

あまり押されると「自分とは性格が合わないな」と気持ちが引いてしまいます

 人嫌いではないけれど、一人が好きだし、人付き合いが得意じゃありません。しゃべりに自信がなくて、相手を退屈させていないか気にしてしまうこともあります。逆に、聞くことは好きです。ずーっと聞いているだけでいいです。

 2年前、飲み会で知り合った4歳下の女性が私を気に入ってくれたことがありました。向こうから誘ってくれて、博物館やプラネタリウムに行った記憶があります。会うたびに「時間があったら誘ってください」と言われたのですが、私から誘ったことは一度もないまま自然消滅しました。私はあまり押されると引いてしまうのです。自分と性格が合わないな、と感じるから。距離感は適度な人がいいです。

 好きな人のタイプですか? 難しいですね……。気づかいをしてくれる人がいいです。集団の中でポツンと一人でいる人に声をかけてあげられる人、とか。あと、基本的には年下がいいです。年上が相手だと私が気をつかってしまうし、会社にいる年上の女性たちは気が強かったり視野が狭かったりします。ポリシーがありすぎる、というのでしょうか。もちろん男性にもそういう人はいますが、女性のほうが多い気がします。もうちょっと柔軟になってよ、と言いたいです。

 ゆくゆくは親の面倒を見なくちゃいけないと思っているので、首都圏からは離れられません。自信がないのは今でも同じですが、年齢的には最後のチャンスかなと思っています。

***大宮(筆者)より橋本さんへ***

偉そうなことを言いたいなら、せめて頼もしくて面白い男性になりましょう

 橋本さんと僕は同い年であるだけでなく、性格というか考え方が似ていると感じました。一見すると穏やかで柔軟そうな男性なのに、中身はわがままで親世代のような男尊女卑的な感覚を持ち続けているのです。女性からすると、「そんな偉そうなことを言いたいなら、せめて頼もしくて面白い男性であれよ」と言いたくなるでしょう。でも、僕たちにはリーダーシップもありません。

 僕もかつては「気遣い上手で気が弱そうな年下」女性が好きでした。でも、そのような人の本性は矢面に立つことが嫌いなだけで身勝手な人間だったりします。気をつかっているように見せかけて身近な人を思い通りにコントロールしようとするのです。橋本さんがそんな女性を好きならば話は別ですが、はっきり言って幸せな結婚生活にはならないと思います。

 橋本さん、良き相手と巡り合って楽しい結婚生活を送りたいのであれば、「性格が合う」ことは無視してください。橋本さんや僕のような面倒臭い性格の人間が2人で共同生活を営んでもいいことは起きませんよ。一致したほうがいいのは、金銭感覚や家族関係などの価値観です。性格はむしろ真逆のほうが、補完し合える良き関係を築けると思います。

独身限定!スナック@東京・渋谷の様子。橋本さんも参加者の一人です(提供:こんかつ山)
独身限定!スナック@東京・渋谷の様子。橋本さんも参加者の一人です(提供:こんかつ山)