資格取得のために恋愛を封印して来ました。再び恋愛をする道筋がわかりません

8年間でのべ2400人と飲み交わしてきたスナック大宮のこぼれニュースコラムです(写真:アフロ)

スナック大宮」と称する読者交流飲み会を東京、愛知、京都などの各地で毎月開催している。2011年の初秋から始めて、すでに120回を超えた。お客さん(読者)の主要層は30代40代の独身男女。毎回20人前後を迎えて一緒に楽しく飲んでいる。本連載「中年の星屑たち」を読んでくれている人も多く、賛否の意見を直接聞けておしゃべりできるのが嬉しい。

 初対面の緊張がほぐれて酔いが回ると、仕事や人間関係について突っ込んだ話になることが多い。現代の日本社会を生きている社会人の肌からにじみ出たような生々しい質問もある。口下手な筆者は飲みの席で即答することはできない。この場でゆっくり考えて回答したい。

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「仕事で必要な資格を取得するために恋愛を封印して来ました。多くのものを失くし、再び恋愛をするには何をしたらいいのかわかりません」(40代半ばの独身女性。介護職)

多くの「自分磨き」は、現実に傷つきたくない人のための逃げ道です

 恋愛しているどころじゃない、という時期は人生に何度かあると思う。本音を言えば愛し合い支え合えるパートナーがほしい。でも、その前提となる生活基盤や心の安定が築けていないと感じるうちは、誰かを好きになって愛情を注ぐ余裕が生まれない。

 筆者の場合は、10代のほとんどが「恋愛の封印期」だった。女の子には人一倍関心があるのに、どのように接したらいいのかわからず、自信も全くなく、モテない哀しみをひたすら受験勉強に傾けていた。暗い青春だったと我ながら思う。

 30歳前後で仕事の方向性に悩んだ頃も、本来ならば恋愛を封印すべきだった。しかし、血迷って結婚してしまった。苦しい現実から目を背けたかったのかもしれない。1年足らずで結婚生活が破たん。自分たちだけでなく様々な人に迷惑をかけた。

 だからこそ、冒頭の話を聞かせてくれた女性には共感する。介護の仕事で必要な資格とは、介護福祉士やケアマネージャーだろうか。いずれも介護の現場で働く人のキャリアの維持と向上には不可欠であり、先送りにしていいものではない。その取得に集中するのは当然だろう。

 無事に資格取得を果たした後、しばらく骨休めをしたら、楽しみながらパートナー探しを始めたい。ここで気を付けたいのは、「もっと自分を磨かないといけない。人と会うのはその後でいい」という気持ちに流されないこと。外見に関しては、新しい服を買って美容室に行くぐらいで十分だ。しかし、人によってはダイエットやトレーニングなどにハマり過ぎて、手段が目的化する。社会人大学院などの勉強系に行く人も少なくない。

 あえて言えば、このような「修業」は現実に傷つかないための逃げ道であることが多い。ただ逃げているだけだと自己嫌悪感が募るので、「いまは準備中なのだ」という言い訳をしたいのだ。料理練習と仕込みだけをしていつまでも開店しない飲食店のようなもので、そのうちに食材が腐って店も古くなってしまうだろう。

 仕事で必要な資格を得るために集中するのと、勝負を避けるための言い訳に精を出すのとでは、同じようにがんばっていても中身には雲泥の差がある。新しい道を拓きたいのであれば、いつまでも準備体操をしていないで、一歩踏み出さなければならない。パートナーを見つけたいなら、出会いの場に参加しなければ何も始まらない。失望や失恋もあるだろう。それこそが本当の学びであり、リアルな経験抜きに得られるものなどはないと知るべきだ。