スナック大宮」と称する読者交流飲み会を東京・西荻窪、愛知・蒲郡、大阪・天満のいずれかで毎月開催している。2011年の初秋から始めて、すでに70回を超えた。お客さん(読者)の主要層は30代40代の独身男女。毎回20人前後を迎えて一緒に楽しく飲んでいる。本連載「中年の星屑たち」を読んでくれている人も多く、賛否の意見を直接に聞けておしゃべりできるのが嬉しい。

初対面の緊張がほぐれて酔いが回ると、仕事や人間関係について突っ込んだ話になることが多い。現代の日本社会を生きている社会人の肌からにじみ出たような生々しい質問もある。口下手な筆者は飲みの席で即答することはできない。この場でゆっくり考えて回答したい。

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「共働きがいい。でも、奥さんには家庭生活を優先してほしい」

「合コンで知り合った29歳の女性がとてもタイプでした。知的で、自立していて、バリキャリではなくゆるキャリ。ランチに誘って行ったのですが気負いすぎて話が弾まず、途中で切り上げられてしまいました。トークのテクニックの問題なのか、それとも相性の問題なのか、判断がつきません」(34歳の独身男性)

妻には外で働いてほしい。経済的にも助かるし、パートナーとしては頼もしい。恋人としても刺激がある。ただし、家事や子育てのほうを優先するのが大前提。長期出張や転勤、留学などはもってのほかだ――。

結婚相手候補の女性にこのような「ゆるキャリ」を求める独身男性は少なくない。専業主婦を希望されても受け入れがたいけれど、残業や海外出張、全国転勤が当たり前の「バリキャリ」女性でも困るという。基本的に残業はなく、多少低くても安定収入があり、会話も弾む女性を求めているのだ。

彼らは、外見以外のあらゆる社会的な条件が自分よりもちょっと下の女性を求める「下方婚」を望んでいるわけではない。学歴や年収、家柄などは自分よりも上でもかまわない。しかし、自分は仕事に忙殺されがちだ。相手も同じような立場だと家庭生活の維持に不安を感じるのだろう。共働きを求めながらも、「家のことは妻がするべき」という昭和的感覚は続いている。稼ぎのいい「バリキャリ」の妻と結婚して、自分は転職してでも「ゆるキャリ」夫を目指すという選択肢はない。

社名や肩書で「バリキャリかゆるキャリか」を決めつけない

正直に言って、筆者も同じような昭和的感覚の持ち主なので、冒頭の男性に対して「図々しい願いだね」などと厳しいアドバイスをする資格はない。しかし、同じ感覚だからこそ指摘したいことがある。いわゆるバリキャリ女性でも恋愛観や家庭観は意外なほど古風な人が少なくないという点だ。

例えば、本人はとりわけキャリア志向でもないが、能力は高いのでエリート街道を自然と進んでいるケース。責任感が強いので仕事はきっちりやり続け、その積み重ねで幹部候補生コースに乗っている。一方で、専業主婦としていつも家にいた母親と、仕事できて頼もしい父親への憧れが強い。自分も温かい家庭を作りたいと思っている。男性の同僚を押しのけて出世したいとは思わない。できればずっと現場でコツコツと働いていたい。

このような女性を真のバリキャリと言えるだろうか。筆者は、昭和的感覚を共有できる「隠れゆるキャリ」だと思う。能力的にはバリキャリなので、仕事と家事・育児を両立するマネジメント力を発揮することも期待できる。これこそが共働き時代の良妻賢母像だと思う。

冒頭の男性には、相手が所属する会社名や肩書などで「バリキャリかゆるキャリか」を判定するのをやめることを提案したい。すると、デートする女性の幅が広がる。「振られてしまった原因は何か」などと振り返る暇などない。いろんな人と会い、気楽におしゃべりして、自然と惹かれ合う女性と交際しよう。賢い女性ならばあなたの出世を邪魔するようなことは決してしない。むしろ、応援して支えてくれるだろう。