阿部容疑者(49歳)の推定年収は280万円。それでも会社を恨まずに働けるか
●今朝の100円ニュース:「食品防御」課題浮き彫り(日本経済新聞)
マルハニチロホールディングスのグループ会社工場での冷凍食品農薬混入事件。逮捕された阿部利樹容疑者の月収が報道されていて驚いた。19万円だ。阿部容疑者はボーナスや早出手当のカットに不満を募らせていたという。年収280万円ほどだったと推測できる。
年収280万円。若者の一人暮らしでも切り詰めた生活を迫られる金額であり、49歳の阿部容疑者には妻子がいた。趣味の改造スクーターやコスプレが浪費のように報じられているが、無趣味だったとしても生活は困窮していただろう。
だからと言って、腹立ちまぎれに食品に農薬を混ぜる行為は正当化できない。今後、本人と家族もいよいよ窮乏することになるだろう。犯行が事実だとしたら愚かとしか言いようがない。
今朝の日経新聞によると、マルハニチロホールディングスの第三者検証委員会の委員長は「人間の悪意は止めることができないとの認識にたった管理体制が必要」と発言。同じ記事では、今回の事件を商機と見たソニーは360度撮影が可能な監視カメラを発表。工場や店舗などの「監視需要」を狙うらしい。
監視を強めれば人間の悪意を封じ込められる、という認識は甘いと僕は思う。悪意が危険な領域まで高まってしまった人は、監視されている場所では何もしなかったとしても、さらに陰湿で卑劣な方法で社会全体に「復讐」をしようと試みるだろう。全国民の全生活を24時間監視しない限り、今回のような犯罪の発生を防ぐことはできない。工場内の監視を強めるほど社会のリスクは高まる気がする。
では、どうすればいいのか。会社としても個人としても「恨まれないこと」が重要だと思う。自社や自分に対して悪意を抱いている人が自爆的な復讐へ走るのを防がなければならない。49歳の妻子持ちの男性が年収280万円で働き続ける状況を放置すると、不平不満を危険な悪意にまで高めてしまう。マルハニチロホールディングスは、監視体制を強めるよりも無理筋の経営を改めることから始めるべきだと思う。
嫌われてもいい。バカにされても構わない。運良く成功したら嫉妬されるのも仕方ない。でも、無理をして恨まれることだけは避けたいとつくづく思う。