「この大会のためにやってきた」  サランスクのピッチで柴崎岳が考えていたこと。

ピッチの中央から前後左右にパスを散らした。(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 日増しに存在感が増している。

 

 コロンビア戦、柴崎岳は日本の攻守の中心になっていた。

 長短のパスを繰り出す。サイドへ展開し、縦方向への意識も忘れない。

 守備でも相手の陣形を頭に入れ、次を予測してコースを限定、インターセプトを狙った。

 西野監督も試合後に柴崎のゲームメイクをたたえるなど、日本代表で欠かせない存在になりつつある。

「より多くボールに触ろう、なるべく自分が関わっていこうと思ってやっていた。自分の持ち味や普段のプレーは出せている」と柴崎は振り返る。

 

 3月のベルギー遠征後のことだ。負傷から復帰後、久々の代表での試合に手応えを感じつつも、考えていることがあった。

「もっと存在感を出して、ボールを受ける回数を増やしたい」

 それから2ヶ月。監督交代とメンバーの入れ替えで代表に変化がもたらされる中、7番がボールを操る場面は試合を重ねる度に増えていった。

狙い続けたスペース「どこかで間は空いてくる」

 コロンビア戦、前半は予想外の展開に攻めあぐねた。当然ながら、前半頭から数的優位に立てる状況を想定していた選手はいない。鍵はハーフタイムの修正だった。

 後半のキックオフ直前、ピッチの上で柴崎は大迫と香川の3人で話し、連携を確認した。

「ポジショニングと連携の話をしました。大迫選手からこういうボールが欲しいと要求もあった。前線の連携は改善できると思っていた」

 

 まずは右サイドだ。

「バイタルエリアの前で、スクエアにボールを回しながら相手がずれていくのを待っていた。ハセさんが持った時は特に、僕や右サイドの(原口)元気くん、(酒井)宏樹くんも中に入ってきた。得点の匂いを感じながら、どこかで間は空いてくるだろうと」

 後半は意図的に左サイドにもポジションをずらした。

「左サイドで乾くんと(長友)佑都さん、(香川)真司さんとの連携を作りたかった。(本田)圭佑さんも入ってきたので、左利きの選手が右サイドで持ちやすいというのもあって、僕はなるべく左のポジションを取るようにした。守備の部分でもカバーできたし、全体的にうまく回った」

 冷静なゲームメイクはコロンビアを横に揺さぶった。周囲の状況を把握し、展開していく。足と同じくらい頭を使った。

 守備面ではディフェンスリーダーの吉田麻也と話しながら、前掛かりになりすぎないように調整した。全体を俯瞰できる人材が中央にいたことは、1点をめぐる攻防が続く中で大きな意味を持った。

 

 何をすればチームが機能するかー。

 残り15分、スライディングで相手に激しくぶつかった時も、考えたのは同じことだった。

負傷交代時に考えていたこと

 右足に激痛が走った。

 真っ先に頭に浮かんだのは残り時間とチーム状況だった。負傷の状態も危ぶまれたが、問題はないという。ボランチのポジションは現チームでも競争が激しい。しかし個人よりも、頭にあるのは常に全体のことだった。

「足は大丈夫。少し疲れてたのもあったし、スコアは2-1だった。俺があの状態で出続けるより、(山口)蛍が出た方がいい。押されてた展開だったから、あの状況なら自分よりフレッシュな蛍くんの方が体力的に戦える部分もある。チームに迷惑をかけるわけにもいかないし、そっちの方がいいと」

 普段からあまり動揺することはなく、客観的に物事を眺める。それでも、初めて立つワールドカップの舞台には気持ちが高ぶった。

「ああ、この大会のためにサッカーやってきたんだなと。子供の頃の夢だったし、いつかワールドカップに出たいと思ってた。その舞台が現実になって、目の前にあった。試合をやっている時は特に感じないけど、ふとした時にそう感じたね」

 

 試合当日、友人が自らのこれまでの歩みをまとめたショートムービーを送ってくれた。チームでもモチベーションビデオを見た。「見た時は目頭が熱くなる感じもあった」という。

受けて、さばいて、リズムを作って

 頭にあるのは、初めてのワールドカップの舞台に、できるだけ長くとどまること。

 勝ち点3を手にした瞬間、すでにセネガル戦のことを考えていた。

「自分がやることはコロンビア戦と変わらない。ボールを受けて、さばいて、リズム作って。守備ではしっかり戦う。セネガルは身体能力の高い選手だらけだし、強烈なストライカーもいる。勝てば突破を決められるから、ここで決めるくらいの気持ちでやりたい」

 

 セネガル戦、勝ち点3は理想だが、流れによっては勝ち点1も大きな意味を持つ、デリケートな90分になる。

 存在感を放つ柴崎の頭脳は、次戦も展開を司ることになるだろう。

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