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コロナ禍で住宅ローンの返済が苦しくなった人や、今後苦しくなりそうな人はどうする?

豊田眞弓永続家計アドバイザー/FP/大学非常勤講師
「母さん、早め早めに手を打ち、家計と折り紙つけて」「そうね。って、それ折り合い」(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

コロナ禍で収入減や失業に直面した人で、住宅ローンを抱えている人は、大きな不安を感じているのでは? 2020年夏の民間企業の1人当たりボーナス額は前年比▲9.2%との予測(みずほ総合研究所)もあります。

住宅ローンの返済に行き詰ったらどうなるのでしょう。わが家を守るために、どうしたらいいのか?などについて、整理しておきましょう。

■わが家を守りたいなら延滞厳禁!

家計における固定費で最も大きなものは住居費です。コロナ禍でさまざまな補助金や支援がある中で、救済の手段がほぼ講じられていないのが、住宅ローンではないでしょうか。

ちなみに、賃貸であれば、「住居確保給付金」という制度があります。

<住居確保給付金>

新型コロナウイルスによる離職・廃業から2年以内または休業等により収入が減少し住居を失うおそれがある人は、原則3カ月間(求職活動等を誠実に行っている場合は最長9ヵ月まで延長可)、家賃相当額が支給されます。東京都特別区の目安で単身世帯53,700円、2人世帯64,000円、3人世帯69,800円。

*収入要件(月):住民税均等割が非課税となる収入の1/12+家賃額を超えないこと(東京都特別区の目安で、単身世帯13.8万円、2人世帯19.4万円、3人世帯24.1万円)

*資産要件:東京都特別区の目安で単身世帯50.4万円、2人世帯78万円、3人世帯100万円以内。

参照:厚生労働省資料

住宅ローンを抱えて収入減に陥った人には、こうした給付タイプの支援はありません。返済が負担でも、自力で切り抜けていくしかありません。

まず、家を守りたいのであれば、延滞は厳禁です。住宅ローンは、延滞をすると延滞損害金(年14.0~15.0%)がかかる場合があるほか、金融機関によっては金利優遇が受けられなくなることもあります。

住宅ローンの金利は、一般的に、「基準金利(店頭金利)」から「優遇金利」を引いたものが適用されています(フラット35など一部ローンを除く)。そのため、優遇金利が適用されなくなると、返済額が跳ね上がり、返済はさらに苦しくなります。

コロナ禍による収入減で住宅ローン返済が厳しくなった人は、延滞をする前に、住宅ローンを借りた金融機関等へ相談をすることが大事です(フラット35の場合は住宅金融支援機構へ)。

■住宅ローンが返せないとどうなる?

もしも、住宅ローンが返せずに延滞をしてしまい、それを続けた場合はどうなるのでしょう。大まかな流れを知っておきましょう(金融機関で異なると思われますので、心配な場合は借りている先でご確認ください)。

・延滞1カ月

通常、返済する予定だった住宅ローンの元金部分に遅延損害金が発生します(遅延日数分)。さらに、金利優遇が受けられなくなる金融機関では、翌月から店頭金利が適用されて返済額が増え、返済はさらに苦しくなります。

・延滞2~3カ月 

金融機関から催告書や督促状が届きます。

・延滞4~6カ月

金融機関から、「期限の利益の喪失」に関する通知が届き、残っている住宅ローン債務の一括返済を求められます。保証会社を利用している住宅ローンでは、保証会社が金融機関に対して「代位弁済」し、以降は保証会社から請求されます。

延滞3カ月超は信用情報機関に載り、一定期間、借入れやクレジットカードの使用などが制限される可能性も。

・延滞7~12カ月

住んでいたマイホームは競売にかけられたり任意売却(残債がある状態で抵当権を解除しての売却)を行うことになります。

「わが家を失う」というだけでもショックですが、それだけで済まない場合もあります。競売や任意売却をしても住宅ローンが完済しきれずに残ってしまうと、その債務を抱えて生きていくことになります(無担保のローンになり、金利も高くなります)。

「返せない」状況に陥ると悪循環に巻き込まれていくため、とにかく1回目の延滞を避け、その前に金融機関に相談すべきなのです。

■金融機関等での選択肢は?

住宅ローンについて、返済が厳しくなったことで金融機関等に相談をすると、どのような方法があるのでしょう。

まず、フラット35については住宅金融支援機構に相談をします。

【フラット35(住宅金融支援機構)】

収入が一定以上減少したなど条件を満たしたときは、次のような返済条件の変更が可能です。

・返済期間の延長(最長15年、完済時の年齢上限80歳)

・最長3年間は元金の支払いを据置いて利息だけ支払う(返済期間は変わらず)

・ボーナス払いの見直し

その他、機構団信特約料が別払いの場合には、その支払い猶予などもあります。

参照:住宅金融支援機構サイト

フラット35以外の住宅ローンは借入をした金融機関に相談しましょう。

【民間住宅ローン(各金融機関)】

金融機関によって対応が異なりますが、次のような返済猶予や条件変更に応じてくれるところもあります。

・返済期間の延長(内容・条件は金融機関で異なる)

・返済猶予(内容・条件は金融機関で異なる)

・金利タイプの変更(例:固定金利期間選択型→変動金利型)

・ボーナス払いの見直し 

中には、条件変更の手続きでかかる費用(数千円)を免除してくれる金融機関もあります。

返済期間の延長や元金の据置では、総返済額は増えるデメリットがあることも知っておく必要があります。

また、下の試算例(金利1.4%)では、ボーナス払いをなくすだけだと毎月の返済額が上がってしまうので、ボーナス払いをなくして返済期間を5年期間延長すれば、毎月の返済額を微増に抑えることができます。

(試算例)

残債2800万円(うちボーナス払い500万円)、残返済期間28年、金利1.4%(固定金利型)について、ボーナス払いをなくした場合。

現状:月82,782円、ボーナス月191,016円(総返済額3387.6万円)

→ボーナス払いなし(28年):月100,779円(総返済額3386.2万円)

→ボーナス払いなし&5年期間延長(33年):月88,334円(総返済額3498.0万円)

→ボーナス払いなし&変動金利0.5%へ(28年):月89,320円(総返済額 N/A) 

試算:FP電卓

ボーナス払いをなくして変動金利に変更をしても、毎月の返済額は微増で済みます。この場合、金利変動リスクも抱えることになりますが、変動金利の基準金利に影響する政策金利は景気が良くならないと上がらないと見られています。

参照:住宅ローン、借りるなら固定金利か変動金利か?(2020年)

返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)等の問題がなければ、他の金融機関への借換えが可能な場合があります。

また、55歳以上で条件が合えば、リバースモーゲージを活用する方法もあります。

■打つ手なしの場合は…

コロナ禍以前から返済が厳しく、すでに期間延長や据置きなどの条件変更を利用していた人の中には、打つ手がないというケースもありそうです。

その場合は、収入の回復や支出削減を急ぐ必要があります。それが難しいのであれば、家計のダメージが広がらないうちに手放すことも考える必要があるかもしれません。

一時しのぎに高金利の無担保ローンなどに手を出すのは絶対に避けたいもの。

■当面の危機を乗り切ったら、収入増や支出削減を!

住宅ローンの条件変更などで当面の危機を乗り切ったら、収入増や支出削減により、家計再建に取り組む必要があります。

特に、家計のリスク回避のため、どのような状況であっても生活費3~6カ月分の生活予備費を持つというのがキホンです。コロナ禍で収入減に見舞われた家庭では、生活予備費をしっかり確保していたかどうかで大きな差となったはず。

家計再建では、まず生活予備費の確保を目指しましょう。そこまで終えてひと段落です。

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永続家計アドバイザー/FP/大学非常勤講師

<生涯永続できる家計の実現を!> マネー誌・女性誌等のライター・コラムニストを経て、独立系FPへ。講演・研修、コラム執筆や監修、個人相談などを業務としている。ライフワークとして、子どもから高齢者まで幅広く金融経済教育に携わっている。亜細亜大学ほかで非常勤講師、子どもマネー総合研究会理事を務める。趣味は講談、投資、猫に添い寝。

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