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2021年に大反響だった飲食店とコロナの記事トップ5 あの密告制度、東京五輪の悪影響……

東龍グルメジャーナリスト
(写真:アフロ)

コロナ禍の飲食店

新型コロナウイルスの感染が拡大したため、2021年1月8日から9月30日までの間、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発出されました。それによって、東京をはじめとした日本の都市で経済活動が著しく制限されたことは記憶に新しいです。

業態別のコロナ関連倒産件数では飲食店が最多。昨年は大きな苦境に陥っていた飲食店の記事をいくつも書いてきました。特に反響のあった記事を上半期でまとめたのが以下の記事です。

2位は「営業時間を短縮しない!」決断 2021年上半期に反響があった飲食店×コロナの記事トップ5(東龍) - 個人 - Yahoo!ニュース

飲食店が被害を受けたのは2021年の上半期だけではありません。下半期も被害を受けており、そのうちの前半は緊急事態宣言が発出されていました。

当記事では2021年の1年間を通して反響のあったコロナ関連の記事を振り返ります。

5位/グルメサイトを通じた感染症対策の評価

最初に紹介する記事はこちら。

「国はわかっていない!」と飲食店も困惑 客によるグルメサイトを通じた感染症対策の評価が全くダメな理由(東龍) - 個人 - Yahoo!ニュース

東京都などに発出されているまん延防止等重点措置が、2021年7月11日に期限を迎えるにあたり、それが延長されるかどうかといった時期でした。結局のところ、後述するように7月12日からは緊急事態宣言に切り替わり、飲食店は引き続き受難の時期を耐えることになります。

この状況下で驚きのニュースが飛び込んできました。それは、飲食店が感染症対策を講じているかどうかを、利用者がグルメサイトを通して回答し、国から情報提供を受けた自治体が違反店を指導するということ。

7月中にも始められる予定でしたが、飲食業界からは「信じられない……」「本当なのか?」「国はわかっていない!」という反応が見受けられました。まさに消費者からの密告制度ともいうべき愚策で、私もこの施策には賛同できなかったので、理由とともに反対意見を述べています。

4位/協力金の先払いへの疑問

次は協力金の先払いについて。

緊急事態宣言による禁酒令で飲食店だけ瀕死! 協力金の先払いに疑問を抱くワケ(東龍) - 個人 - Yahoo!ニュース

前述したように、2021年7月12日から8月22日まで緊急事態宣言が発出されました。鞭とバランスを取るための飴なのか、今回は自粛期間が終了する前に協力金を申請できるとアナウンス。

ただ、東京都のこれまでにおける協力金の支給状況を鑑みると疑問符が付きました。いずれも当時の状況となりますが、4月12日から5月11日の実施分は申請受付中であり、5月12日から5月31日の実施分は7月15日から申請受付開始。6月1日から6月20日の実施分、6月21日から7月11日の実施分については、まだ申請受付開始日すら決まっていませんでした。

ただでさえ協力金の支払いは遅延しているのに、支給が完了していない実施分をどうするのか、申請すら開始されていない実施分をどうするのか、全く不明です。もしも7月12日から8月22日の実施分だけが先に支給され、それ以前における実施分の支給が滞るのであれば、単なるパフォーマンス以外の何物でもありません。

ちなみに現在では、最後の協力金がリバウンド防止措置期間である10月1日から10月24日実施分。こちらは93%に支払いが完了しており、あともう少しといったところです。

3位/東京五輪の悪影響

3位は世界から注目された東京五輪。

日本が史上最多メダルも……東京五輪が飲食店を追い詰める4つの理由(東龍) - 個人 - Yahoo!ニュース

東京都に緊急事態宣言が発出され、飲食店の経営がより一層逼迫している一方で、東京五輪の開会式は2021年7月23日に開催されました。競技はそれよりも前の7月21日から開始されており、閉会式の当日8月8日まで実施。

日本が史上最多のメダルを獲得したのは非常に喜ばしいことでしたが、飲食業界の関係者は複雑な思いを抱いていました。なぜならば、国や自治体は飲食店に理不尽なほど厳しい措置をとっていましたが、東京五輪には呆れるくらい寛容だったからです。

記事では、飲食業界が感じていること、および、東京五輪が飲食店に及ぼした好ましくない影響について述べました。

2位/営業時間の短縮を拒否

次は2021年始めに公開された記事です。

緊急事態宣言が発令も「営業時間を短縮しない!」 有名飲食店の決断が賛同されるワケ(東龍) - 個人 - Yahoo!ニュース

1月7日に2021年初めてとなる2回目の緊急事態宣言が発令されました。飲食業界が大きな懸念を示していましたが、当初報道されていたように、20時までの営業時間短縮と11時から19時までの酒類提供を要請。これに対して、グローバルダイニングは緊急事態宣言の期間中も通常営業をすると発表したのです。

創業者であり、代表取締役社長でもある長谷川耕造氏は同日に公式サイトへ投稿。4つの理由を挙げた上で、通常営業の決断に至ったと述べました。その後、グローバルダイニングは3月18日に東京都から時短営業の命令を受け、それに応酬する形で3月22日に東京都を提訴。12月13日に東京地方裁判所で5回口頭弁論が行われたところで、2022年3月14日に結審する予定です。

今から思い返してみれば、飲食業界の中で温度感は異なっていたものの、この頃から国や自治体と飲食業界の信頼関係が瓦解していったといってよいでしょう。

1位/酒類提供の禁止

昨年最も反響があったコロナ関連の記事は、酒類提供の禁止でした。実は1位と2位になった記事は、2021年上半期に反響があった1位と2位の記事と同じです。

酒がそんなに悪いのか! 飲食店が緊急事態宣言の酒類提供の禁止に本気で激怒するワケ(東龍) - 個人 - Yahoo!ニュース

東京都は2021年4月12日からまん延防止等重点措置の期間となっていましたが、感染拡大を受けて、4月25日から5月11日までは緊急事態宣言に。

これまで20時までの時短営業と19時までの酒類提供となっていましたが、ここで初めて酒類提供の禁止が要請されます。飲食店の経営にとっても、食文化にとっても重要な役割を果たすお酒の提供が禁止なったことで、甚大なインパクトを与えました。禁酒令、禁酒法と皮肉られたことからも、飲食業界全体にマイナスの影響があったことは明白です。

酒類提供を禁止しても新型コロナウイルスの感染拡大は全く収まらず、その一方で、10月1日から緊急事態宣言が完全に解除され、酒類が提供できるようになってからも特に感染は拡大しませんでした。酒類提供と感染拡大の相関関係を全く示されないまま現在に至っているのは周知の事実です。

2022年はどうなるのか

新型コロナウイルスのオミクロン株の影響で、昨年末から新規感染者数が少しずつ増えています。未曾有の事態にあって、国や自治体はどのように判断し、どのような施策を行うのでしょうか。

飲食業界だけではなく、日本にいる多くの方が疑問に思っていたことが、反響のある記事につながっていました。国や自治体には、非科学的な根拠で、飲食業界だけを狙い撃ちした感染症対策は、もう終わりにしてもらいたいと思います。

安倍晋三内閣や菅義偉内閣とは異なり、岸田文雄内閣は話を聞く耳と柔軟性があるようなので、期待したいです。2022年は、感染拡大が終焉すること、そして、飲食業界の内外から納得のいく措置が取られることを切に願います。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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