勝手に持ち帰るとどうなるか

先日、気になる記事がありました。

ブッフェやバイキングなど自由に食べられる飲食店で勝手に持ち帰ったら法的責任を問われるかという記事を読んだのです。

「食べ放題」「飲み放題」の飲食物、勝手に持ち帰った客は法的責任問われる?(オトナンサー)

記事中では、佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士が法的な観点から次のように回答しています。

飲食店が事前に客に持ち帰り禁止であると伝えていなくても、客が勝手に飲食物を持ち帰れば、窃盗罪に問われる可能性があるということです。

この問題について考えていきましょう。

飲食店とは何か

飲食店とは何でしょうか。

飲食店を営業するには自治体の保健所から飲食店営業許可をとる必要があります。食品衛生法によれば飲食店営業とは「食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業」のこと。ちなみに、飲食店営業よりも簡易的な喫茶店営業は、2021年6月1日から飲食店営業に統合されました。

食品衛生法施行令(e-Gov法令検索)

日本標準産業分類によれば、飲食店は「中分類 76 飲食店」、テイクアウトやデリバリーの店は「中分類 77 持ち帰り・配達飲食サービス業」と明確に分類されています。

日本標準産業分類(総務省)

行政的にも法律的にも規定されているように、飲食店は店内で食べることが明確にされています。店内飲食する店と持ち帰りする店は、店舗の造りからしても違うので区別は明確でしょう。そうであるからこそ、飲食店がコロナ禍で店内飲食に加えて、テイクアウトやデリバリーを開始したことが話題になったのです。

ブッフェやバイキングが店内飲食を前提としていることは明白なので、持ち帰ることがいけないと知らなかったという言い訳は通用しないでしょう。

食べ残しを持ち帰りさせるべきか

世界的にSDGsが重要視され、食の業界ではフードロス(食品ロス)削減が求められています。2019年10月1日に食品ロス削減推進法も施行され、日本でもだいぶ意識されるようになりました。

したがって、ブッフェやバイキングで食べ残した時に、もったいないので持ち帰れないかという話もよく議題に上がります。しかし、それには高いハードルがあるのです。

まず、客が持ち帰ってどういった衛生状態になっているのかわからない食品を食べて、食中毒が起きると飲食店が困るという問題があります。国の指針によれば、持ち帰りはあくまでも客の自己責任とありますが、日本では食べ残しの持ち帰りが浸透していないので、飲食店は躊躇してしまいがちです。

食品ロス削減推進法基本方針について、御紹介します(農林水産省)

外食時のおいしく「食べきり」ガイド(消費者庁・農林水産省・環境省)

ブッフェやバイキングにおける食べ残しの持ち帰りでは、食品衛生よりもっと大きな問題があります。

それは、故意ではない食べ残しと故意の食べ残しを峻別できないことです。食べ残したものを持ち帰ってもよいとすれば、わざと食べ残す客も現れるでしょう。もうお腹一杯なのに、帰り際にわざと料理をとってきて、食べ残したからと持ち帰ることも十分に考えられます。そうなると、ほぼ際限なく何でも持ち帰れることになってしまうでしょう。

もしもブッフェやバイキングで持ち帰れるようにするのであれば、無料ではなく、持ち帰る飲食物の分量に対してお金を支払う従量課金を導入するしかありません。それと同時に、ひどい食べ残しにペナルティを科す仕組みも必要です。

大量の食べ残しが問題

持ち帰りの是非を考えることも重要ですが、そもそもブッフェやバイキングで大量に食べ残す人がいることが大きな問題です。退店する際に、テーブル一杯に食べ残している客は少なくありません。

必要以上に食べ残すと、飲食店はもちろんのこと、客も損害を被ってしまいます。なぜならば、飲食店が本来想定していた以上に食べ残しが多くなれば、損失が多くなり、値上げせざるを得なくなるからです。一部の行儀悪く食べ残す客のために、他の客が損をしてしまうことになるのは、とても公平であると思えません。

ブッフェやバイキングで大量の食べ残しが起きるのは、大食いや早食い競技の影響、および、元をとらなければならないという強迫観念が原因のひとつ。どちらとも、ブッフェやバイキングを扱うメディアによる責任が大きいと考えています。

中国で大食い動画に罰金160万円の衝撃! 日本も検討するべき5つの理由(東龍) - 個人 - Yahoo!ニュース

自分らしいスタイルで食事を楽しめるシステム

ブッフェやバイキングは本来、自分らしいスタイルで食事を楽しめるシステム。栄養バランスや好みを考え、コースをつくって食べていきます。自分のペースで適量だけとって最後までおいしく食べられるものです。

食育の一環として、小学校や中学校ではバイキング給食が行われることがあります。赤(血や肉をつくる食べ物)、緑(体の調子を整える食べ物)、黄(エネルギー源になる食べ物)の栄養バランスを考えながら、自分が食べきれる分量だけを取ったり、次の人が心地よくブッフェ台を使えるように配慮したりすることを学ぶのです。

ブッフェやバイキングにおける食べ残しをどうするかという問題を解決するのと並行して、そもそも食べ残しをしないようにする食育も非常に重要となるのではないでしょうか。