鉄板焼は高級な日本料理

鉄板焼は目の前で調理してもらえるという贅沢な料理。旬の白身魚からアワビやイセエビといった魚介類、ブランドの黒毛和牛が焼き手による匠の技で調理され、提供されます。

すぐ目の前で食材が捌かれ、調理される様子は非常に臨場感があります。一度でも体験すれば、鉄板焼の醍醐味に魅了されるでしょう。

鉄板焼はステーキを日本風にしたものであり、高級料理として確立されています。訪日外国人が寿司と並んで体験したがっている日本料理であり、日本で神戸ビーフを食べるのがステータスとなっているほど。

あのドナルド・トランプ元大統領が2017年に来日した際に、安倍晋三元首相と会食したのも鉄板焼店だったのは有名な話です。

うかい亭の鉄板焼

この会食先に選ばれたのが、名店の「銀座うかい亭」。

運営するのは株式会社うかい。1964年に東京都八王子市高尾にいろり炭火焼料理「うかい鳥山」を開業し、そこから東京と神奈川を中心にレストランや美術館を展開します。

現在では鉄板料理「うかい亭」、懐石料理「うかい竹亭」、とうふ料理「とうふ屋うかい」、割烹料理「kappou ukai」、グリル料理「グリルうかい」、ブラッスリー「ル・プーレ ブラッスリーうかい」といったレストラン、洋菓子店「アトリエうかい」を擁するまでになりました。台湾にも出店し、海外でも成功を収めています。

うかいは様々な高級レストランを運営していますが、最も多い業態が鉄板料理の「うかい亭」。そこで用いられている黒毛和牛「うかい極上牛」は、鳥取県と兵庫県の山間にある田村牧場で、うかい亭のために育てられています。通常30ヶ月のところを、長期間しっかりと肥育され、繊細で旨味のある肉質となっているのが特長です。

「六本木うかい亭」の特別コース

六本木うかい亭 (C) 東龍
六本木うかい亭 (C) 東龍

「うかい極上牛」のサーロインを堪能するのが、他の鉄板焼店では体験できない贅沢。しかし実は、他にも「うかい亭」だけでしか体験できないものがあります。

それは 「六本木うかい亭」で行われている「オートクチュールコース」(38,500円~、税込・サ別)。

六本木 kappou ukai (C) 東龍
六本木 kappou ukai (C) 東龍

2018年3月29日、六本木ヒルズのけやき坂通りに 「六本木 kappou ukai」と共にオープンした鉄板料理店です。

この道35年にもなるサービスのプロフェッショナルの店長をはじめ、サービス陣は個性豊か。料理長の岡本譲氏は様々な「うかい亭」で経験を積んできた鉄板料理のスペシャリストです。

オートクチュールコースとは

この「オートクチュールコース」は他と何が違うのでしょうか。

それは、ゲストと対話して要望を叶えるということ。そのテーブルだけのためにコースが創られ、用意され、提供されます。その日そのテーブルだけのために組み立てられたコースなので、全く同じものは存在しません。食材の準備にも時間がかかるため、3日前までの予約が必要です。

今回の取材を例にして「オートクチュールコース」の流れを紹介しましょう。

予約時に「六本木うかい亭を代表するメニューをモダンに仕上げたもの」をリクエストしました。すると店長氏からすぐにメールがあり、うかい亭の看板料理である「鮑の岩塩蒸し」が提案されます。

コンセプトや軸となるメニューが決まってから、前菜や肉料理などに関してもイメージをすり合わせ、コースが完成しました。前菜2品にスープ、「鮑の岩塩蒸し」ときて、肉料理が2品、それからデザートという構成。秋の走りを表現したコースで、どの料理もモダンに仕上げてほしいというリクエスト通りになっていました。

このようにして組み立てられた「オートクチュールコース」のメニューを紹介していきましょう。

1品目の前菜

1品目の前菜 (C) 東龍
1品目の前菜 (C) 東龍

1品目の前菜 (C) 東龍
1品目の前菜 (C) 東龍

鉄板が調理に適した200度に達するまで、15分くらいの時間を要します。通常の鉄板焼店では、この間をもたせるために、1品目か2品目までは冷前菜が供されるものですが、「六本木うかい亭」は違います。最初の1品目から鉄板を用いた温かい前菜が味わえるのです。

その温かい1皿目が、タスマニアサーモンに蕎麦粉のガレットとキャビア。きれいに焼かれたガレットで野菜を巻き、その上にたっぷりのキャビアを載せています。主役のタスマニアサーモンは厚みがあるので、しっとりとしたテスクチャと旨味を存分に感じることができるでしょう。重厚なタスマニアサーモンと軽やかなガレットの組み合わせは相性がよく、食欲をかき立てられます。

2品目の前菜

2品目の前菜 (C) 東龍
2品目の前菜 (C) 東龍

2品目の前菜 (C) 東龍
2品目の前菜 (C) 東龍

次の料理は北海道産のズワイガニを用いたもの。老若男女から愛されるカニクリームコロッケをプレートに配し、その上には炭火で焼いたズワイガニの脚。旨味がある赤パプリカのロメスコソースが添えられており、合わせるとズワイガニの味わいが強調されます。

カニクリームコロッケは、蟹身がたっぷりで味わいが凝縮。クリームばかりが感じられる通常のカニクリームコロッケとは別次元の味わいです。

1品目の肉料理

1品目の肉料理 (C) 東龍
1品目の肉料理 (C) 東龍

1品目の肉料理 (C) 東龍
1品目の肉料理 (C) 東龍

最初の肉料理は、自信をもつ「うかい極上牛」のサーロインを薄切りにしてさっと焼いた一品。軽く火を入れているだけなので、自然な和牛香がふんだんに感じられます。ソースはマデラ酒とフォアグラの旨味が詰まっているので、極みのサーロインに負けていません。

スープ

スープ (C) 東龍
スープ (C) 東龍

スープ (C) 東龍
スープ (C) 東龍

ワイングラスで供された、にゅうめんです。スープはカツオとスッポンのコンソメがベースとなっています。ブルゴーニュグラスなので、滋味のある香りがふんだんにとれるでしょう。

岩手県直送のマツタケが秋の訪れを感じさせ、底にある白子が味わいに濃厚さを与えています。スダチのゼストも非常に爽やか。

温かい料理がワイングラスで提供されることはもちろん、にゅうめんが鉄板焼の序盤で食べられるのは新鮮です。

魚料理

魚料理 (C) 東龍
魚料理 (C) 東龍

魚料理 (C) 東龍
魚料理 (C) 東龍

「うかい亭」のシグネチャーディッシュともいえる「鮑の岩塩蒸し」。アワビを昆布で巻き、たっぷりの塩で固めて15分程度蒸し焼きにしています。

シグネチャーディッシュなので「うかい亭」のどの店舗でも提供されていますが、オーソドックスなペリグーソースやブールブランソースを合わせるのではなく、新しい試みが用いられていました。

アワビの持ち味を引き出すため、シンプルに調理し、合わせバターと青柚子胡椒だけを添えて。繊細な火入れなので、磯の味わいや訴求力のあるテクスチャが失われておらず、アワビのポテンシャルが最大限に引き出されています。

2品目の肉料理

2品目の肉料理 (C) 東龍
2品目の肉料理 (C) 東龍

2品目の肉料理 (C) 東龍
2品目の肉料理 (C) 東龍

メインとなる肉料理は、「うかい極上牛」のフィレを用いた牛肉のたたき。通常であればメインディッシュにはサーロインをステーキにしたものが提供されますが、モダンなものをというリクエストに応えて、フィレのたたきになりました。

「うかい極上牛」のフィレは、生で食べても非常においしいほどの鮮度と肉質。食べる直前にアツアツのポン酢がかけられます。それによって香りが立ち上がり、肉の中心が適温になるのは、鉄板焼ならではの仕上げ方。

お食事

お食事 (C) 東龍
お食事 (C) 東龍

お食事 (C) 東龍
お食事 (C) 東龍

料理最後のお食事です。鉄板焼ではガーリックライスが定番ですが、こちらでは季節の土鍋ご飯を提供しています。ふっくらと炊いた秋田県のお米に、2時間漬けたタマゴ、そしてたっぷりのキャビア。キャビアに始まり、キャビアで終わるという非常に贅沢な構成です。

デザート

デザート (C) 東龍
デザート (C) 東龍

六本木けやき坂を近くに眺められるラウンジに転卓してデザートを楽しめます。初秋ということで、和栗をふんだんに用いたモンブラン。

小菓子 (C) 東龍
小菓子 (C) 東龍

その後に提供される小菓子は、焼き立てのマドレーヌ。マドレーヌはランチ限定であり、ゲストが料理を食べ終える時間に合わせて焼き上げられます。そのままでもおいしいですが、添えられた生クリームとレモンのコンフィチュールを合わせれば、味が変わるのでより楽しめることでしょう。

鉄板焼の初心者も安心

「オートクチュールコース」は他の鉄板焼では見たことのないオリジナリティ溢れるメニューばかりでしたが、改めてその素晴らしさを紹介しておきましょう。

最初に言及したいのは、鉄板焼の初心者でも安心だということ。「オートクチュールコース」では完全にゲストの希望がベースとなったコース料理となっています。そのため、通常の鉄板焼では考えられないような構成でも問題ありません。

鉄板焼をよく知らなくても、ただ単に、どの食材をどのように食べたいと伝えるだけでよいです。鉄板焼が初めてという場合でも、安心して楽しめるでしょう。

鉄板焼の上級者でも新しい体験ができる

「オートクチュールコース」は初心者にオススメですが、実は鉄板焼の上級者にもオススメできます。なぜかといえば、これまで食べたことがないメニューを体験できるからです。

全く新しいメニューをリクエストするのもよいですし、これまで食べてきたメニューの中で気に入ったものをアレンジしてもらうのもよいでしょう。

鉄板焼を食べ尽くしたという方であっても、新たなメニューを考えてもらえるのは嬉しいところです。

3度楽しめる

一度の訪問で、3度楽しめるのも大きな魅力です。

最初の楽しみはリクエスト時。食べたい食材や料理を伝えて内容を詰めていきます。どのようなコースができあがるのかと、ワクワクすることでしょう。

その次は、実際に訪れて、食材を目の前にコースが説明される時です。メールなどでやりとりしていたオリジナルのコースが、この食材を用いてどのように仕上げられるのかと、胸が高鳴ります。

最後の楽しみはもちろん、食べた時。実際に目で見て口にして、それが予想していたものと同じであったかを確認しながら味わいます。想像したものと同じであれば嬉しいですし、思っていたものと違っていたとしても、どのようなアプローチでそのように至ったかを知るのも興味深い体験です。

これだけたくさんの楽しめるポイントがある鉄板焼は、他にありません。

マエストロの称号

ここまで「オートクチュールコース」の素晴らしさについて述べてきましたが、これ以外の「六本木うかい亭」の魅力も説明していきましょう。

まずマエストロがいるのは大きな特長です。「うかい亭」の鉄板料理人でプロフェッショナル中のプロフェッショナルとして認められると、マエストロの称号を取得できます。

料理長やマエストロによって、調理やサービスの技術が伝承され続けているので、トップレベルの料理とおもてなしを提供できているのです。

優雅な空間と素晴らしいテーブルウェア

鉄板カウンター (C) 東龍
鉄板カウンター (C) 東龍

6つの鉄板カウンターがあり、1つの鉄板カウンターを1組のゲストだけが利用します。空間に余裕があり、プライベート感もあって非常に優雅。けやき坂も間近に望めます。

テーブルウェアも素晴らしいです。箸とシルバーはクリストフル。プレートはカマチ陶舗や日本でも人気のデンマークのロイヤルコペンハーゲン、フランス・リモージュの名窯であるアビランドです。グラスはフランスのレーマン、オーストリアのリーデルやロブマイヤーと非常に豪華。希少な佐賀県唐津の中里太郎右衛門氏の器も使われています。

世界的に有名なものから一点物まで、様々なテーブルウェアを体験できるのです。

うかいはレストランの他に、箱根ガラスの森美術館も運営しています。優れたガラス製品を所有しているうかいであるからこそ、目利きも確かであり、料理に相応しい心に残るテーブルウェアを揃えられるのでしょう。

オートクチュールコースが考案された背景

鉄板焼は基本的に単価の高い業態ですが、名の知れた黒毛和牛、アワビやイセエビを出していればよいという雰囲気があるのも事実。どうして労力を要する「オートクチュールコース」を提供するようになったのでしょうか。

「オートクチュールコース」は2020年当初に開始されました。店長はきっかけを次のように話します。

「わずか6室のみという、プライベート感あふれる空間を生かしたかった。以前は、おまかせコースだけをご提供していたが、接待が多いこともあり、事前にメニューを知りたいというご要望をいただいていた。そこで、ご要望に応えながらも、贅沢なコースをご提供できないかと思案していた」

おまかせコースはその日入荷した最高の食材で構成されているので、非常に素晴らしいメニューとなります。ただ、個別の要望に応じたり、事前に内容を決めたりすることができません。

アラカルトを提供する案もあったといいますが、バランスよくオーダーすることが難しかったり、食品ロスが生じやすくなったりすることから、この案は見送られます。

そこで考案されたのが、昔から店長があたためてきた「オートクチュールコース」だったのです。これならばゲストの要望に応えられ、事前にメニューも決まります。オーダーメイドなので、最高の食材を用意できる上に食品ロスも少なくなるのです。

より多くのゲストに体験していただきたい

「オートクチュールコース」のやりとりに関しても工夫を施しています。ゲストと連絡する際には、メールを使うことが多いのです。

「電話では遠慮がちになるが、メールであれば希望を伝えやすくなる。記録にも残るので、ご要望を見逃すこともない」

今後については次のように述べます。

「この『オートクチュールコース』は六本木店だけでしか体験できない。もっと広めていって、より多くのゲストに喜んでいただきたい」

目の前でつくってもらえる上に、その料理が自分たちだけのために考えられたものであれば、この上なく幸せになることでしょう。「六本木うかい亭」には、このような特別な鉄板料理があること、そして鉄板料理の新たな醍醐味があることを、より多くの方に知っていただきたいです。