酒がそんなに悪いのか! 飲食店が緊急事態宣言延長の酒類提供の禁止に全力で憤慨するワケ

(写真:つのだよしお/アフロ)

3回目の緊急事態宣言が延長

3回目の緊急事態宣言は東京都、大阪府、京都府、兵庫県に対して、2021年4月25日から5月11日にかけて実施される予定でした。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が収まらず、変異株の感染も増えていることから、この4地域では5月31日までに延長。さらには、愛知県、福岡県に対しても5月12日から31日まで実施されることになりました。

東京都に関していえば、1回目の緊急事態宣言は2020年4月7日から5月25日、2回目の緊急事態宣言は2021年1月8日から3月21日までと、どちらも1ヶ月半以上の期間を要していただけに、まだピークが見えない現在の状況を鑑みれば、延長は容易に予想できたことでしょう。

期間が延長されるのは仕方がないとして、問題はその施策内容です。3回目の緊急事態宣言では、飲食店は20時までの時短営業に加えて、酒類提供の禁止という強力な措置がとられました。

酒類提供の禁止に関して、飲食業界から大きな反発があったのは記憶に新しいところです。しかし、延長するにあたり、20時までの時短営業と酒類提供の禁止に変わりはありませんでした。

飲食店と酒類

前回の記事でも掲載しましたが、飲食店での酒類の取り扱いについて説明しておきましょう。

酒類はシュルイと読みますが、言葉だけを聞いてもわかりにくいので、テレビなどではよくサケルイと読まれています。酒税法では、発泡性酒類、醸造酒類、蒸留酒類、混成酒類と、酒類を4種に分類。

保健所から飲食店営業許可をとっていれば、全ての酒類を提供することができます。喫茶店営業許可では酒類を提供できません。

酒類の提供とは、あくまでも店内で飲む酒類を提供することなので、持ち帰ってはいけません。酒類を販売するには、税務署から酒類販売業免許を取得する必要があります。

業態によっては酒類を提供する時間にも気をつけなければなりません。バーなど食事を主としない飲食店が0時から6時まで酒類を提供するには、警察署に「深夜における酒類提供飲食店営業」を届け出る必要があるからです。ただし、ファミリーレストランやラーメン屋など食事を主とする飲食店は除きます。

国や自治体に対する怒り

延長となる5月12日以降も酒類提供が禁止となったことから、飲食業界からは大きな落胆や経営に対する不安、国や自治体への怒りが感じられます。

ノンアルコールドリンクを増やしたり、ノンアルコールペアリングをもっと開発したりしなければと考える一方で、思った以上に売上が減少しているので、もうどうしてよいかわからないと途方にくれる飲食店も少なくありません。

夜の営業や酒類の提供が本当に新型コロナウイルスの感染拡大に関与しているのかどうか、科学的な説明を求める声もますます大きくなっています。飲食業界で力を合わせて立ち上がり、国や自治体に直訴しようという動きもあるほどです。

飲食業界は窮状に陥っていますが、何が飲食店を苦しめているのか改めて説明していきましょう。

時短営業による売上減少

2度目の緊急事態宣言、そして、まん延防止等重点措置によって、飲食店は今年の始めからずっと時短営業を強いられてきました。

ただでさえ、感染症予防のために、客席数を減らしてテーブル間隔を増やしている中で、営業時間まで短縮されたことにより、売上がさらに減少しました。営業時間が21時や20時となったので、客席回転数が減っただけではなく、フルコースを楽しむことが難しくなり、客単価も減少したのです。2店目に訪れるといった使い方もできなくなりました。

業態によって影響の大きさは異なりますが、基本的に飲食店は物販ではなく箱物なので、営業時間が少なくなれば、売上も減少することは確実。それでもまだ、協力金がもらえるならばと、飲食業界は何とか耐え忍んでいました。

協力金の支給が遅れている

しかし、その肝心の協力金の支給が遅れています。

5月5日時点で、1月14日から2月7日分の支給率は、大阪府が約51%、東京都が約85%。4月27日時点で、神奈川県における3月8日から4月9日分の支給率は約43%です。東京都では3月8日から31日分の協力金申請が4月30日に開始されており、4月1日から11日分の協力金申請に関するポータルサイトは5月12日に開設されます。

※4月1日から11日分の協力金は5月12日に申請開始と記載していたのを修正しました(2021/05/10)

売上の減少が続いている飲食店に対して、早急な協力金の支給は絶対不可欠。仕入れた食材の支払いサイト(猶予期間)や家賃を考慮すれば、協力期間終了後の1ヶ月以内には支給してもらいたいものです。

酒類の提供が禁止

時短営業で売上が減少し、協力金の支給も遅延しているところに、とどめを刺したのが酒類提供の禁止。

ただでさえ客単価が下がっているところに、お酒まで提供できなくなれば、客単価はさらに下がることは明白。しかも最近では、料理とお酒のペアリングで食体験を高めようとする試みが主流なので、売上がダウンしただけではなく、飲食店での楽しみ方も損なわれてしまったといってよいでしょう。

種類によりますが、酎ハイやサワー、ハイボールなど利益率が高いお酒もあります。料理の値段と利益率を低くして、お酒で儲けるビジネスモデルの飲食店では、とてもやっていけません。

利益率が低いお酒であったとしても、調理しなくても提供でき、何杯も飲んでもらえるお酒を提供できないのは、非常に苦しいところです。

ノンアルコールドリンクで頑張ればよいのではという指摘もありますが、よほどの高級紅茶や古樹茶でもないかぎり、アルコールドリンクの売上減少分を補えることはないでしょう。もしも売上をカバーできたとしても、料理とノンアルコールドリンクが合うかどうかとは、また別の問題となります。

酒類提供の禁止が飲食店に大打撃を与えているのは、客単価の減少によって売上が激減しているだけではなく、食体験の毀損も強いられているからです。飲食店をオープンするにあたって、必ず料理とお酒は共に考えられるもの。決して切り離せるものではありません。

それにもかかわらず、国や自治体の態度をみていると、お酒は料理と簡単に切り離せ、まるで飲食店になくても問題ないものであるかのような扱いを受けているので、飲食業界はひどく憤慨しているのです。

他の業種との違い

他の業種と扱いが異なるのも不満に思っていることでしょう。

今回の緊急事態宣言延長では、大型商業施設は休業要請から20時までの時短営業となり、プロ野球やJリーグなどの大規模イベントは無観客から5000人もしくは収容人数の50%まで観客を入れられるようになりました。他の業種では規制が緩和されましたが、飲食店には厳しい措置がとられ続けています。

国や自治体は、新型コロナウイルスの感染が拡大した当初、風営法の1号営業に該当する飲食店を「接待を伴う飲食店」や「夜の街」と呼んだり、昨年末の新規感染者数の増加を「Go To イート(Eat)」のせいにして「Go To トラベル(Travel)」をかばったりするなどしました。

2回目の緊急事態宣言では、他の業種にはほとんど何も要請せず、飲食店に時短営業を要請するのみ。しかも、その時短営業の効果にも疑問符がつき、飲食業界からは納得いかないという声が挙がっていました。

人流を止めるというのであれば、大型商業施設や大規模イベントにも引き続き制限をかけたり、リモートワークの実施を企業に強制したりすることが必要でしょう。

東京2020オリンピックで来日する関係者は何万人ともされていますが、海外からの人流であれば許可できるというのは、疑問であるとしかいいようがありません。

国や東京都は、しっかりと感染症対策を行えばオリンピックを開催できると主張しています。その論理を用いるのであれば、きっちりと感染症対策している飲食店は通常営業してもよいのではないでしょうか。

グローバルダイニングの売上が好調

東証2部の上場企業グローバルダイニングは時短営業の要請を拒否し、3月22日に行政による過剰な権利制約が続いているとして東京都を提訴しました。

請求額がわずか104円であり、実質的な補償を求めたものではないことからも、東京都と飲食店の溝は深いといわざるをえません。

時短営業や酒類提供の禁止に従わなかったグローバルダイニングは、2021年1月から3月の売上が好調で黒字となっています。これには賛否両論がありますが、国や東京都のリーダーシップが不足していることだけは確かです。

日本の禁酒法への不満や怒り

1985年5月7日、ソ連共産党中央委員会が「飲酒・アルコール依存症克服対策について」を採決し16日に発布しました。

ミハイル・ゴルバチョフ共産党書記長が「しらふが正常」をスローガンにして禁酒運動を指導。酒類の生産を制限したり、価格を引き上げたり、公共の場で酔っている人を逮捕したりしました。

このようなことが行われた結果、ウォッカの密造酒づくりが横行し、貴重な収入源であった酒税収入が激減。同年秋には元に戻したという歴史があります。

ソビエト連邦と比べれば、日本の禁酒法である飲食店での酒類提供の禁止はそこまで厳しい措置ではありませんが、施策に対する飲食業界や国民の不満や怒りは当時のソビエト連邦と同じかそれ以上ではないでしょうか。その不満や怒りはもはや爆発寸前であるだけに、国や自治体は酒類提供の禁止について真摯に考え直す必要があります。