小学校の先生による「箸の持ち方がおかしいとお嫁にいけない」炎上事件から考える、箸の重要な3つの意義

(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

箸の持ち方

みなさんは箸をどのように持ちますか。

少し前に箸の持ち方が大きな話題となりました。

「お箸の持ち方がおかしい。お嫁にいけんよ」

小学校1年生の女の子が、学校の先生に言われたという言葉が、Twitterで大きな注目を集めています。

出典:お箸の持ち方がおかしいと、お嫁にいけない?あるお母さんのツイートが話題(BuzzFeed)

小学校の先生が女子児童に「お箸の持ち方がおかしい。お嫁にいけんよ」と注意したことをきっかけにし、女児の母親が以下のようにTwitterで反論したことから議論が巻き起こりました。

「娘が小学校の先生から『お箸の持ち方がおかしい。お嫁にいけんよ』と言われたというので、朝から母はヒートアップ。お箸の持ち方が変だから結婚したくないとかいう人とそもそも結婚せんでいいし、いや、結婚する相手を決めるのは娘やし、女が選ばれる時代なんてとっくに終わってる」

出典:お箸の持ち方がおかしいと、お嫁にいけない?あるお母さんのツイートが話題(BuzzFeed)

私は結婚や恋愛についての専門家ではありませんが、箸の持ち方は食の重要な要素なので、この話題について考えてみたいと思います。

箸の正しい持ち方

そもそも正しい箸の持ち方とはどういったものでしょうか。正しい箸の持ち方は次の通りです。

2本ある箸のうち、上の箸は鉛筆と同じように親指、人差し指、中指の3本で持ちます。下の箸は、親指の付け根で挟み、薬指の第一関節の上に載せます。

持つ位置は箸先から3分の2くらいで、箸頭を3センチメートルくらい開けるとバランスがよいでしょう。

持ち方だけではなく、動かし方も重要です。

下の箸は動かさず、上の箸だけを動かします。この時、親指は添えるだけにして、中指と人差し指を使うのがポイントです。

以上のような持ち方と動かし方をもって、正しい箸の使い方ができているといってよいでしょう。

正しくない箸の持ち方

では、正しくない箸の持ち方とはどういったものでしょうか。

親指と人差し指と中指だけを使いペンのように持つペン箸、2本の箸をまとめて持ってしまう握り箸、箸の先がクロスしてしまう交差箸(ばってん箸、クロス箸)があります。

他にも、人差し指がしっかりと添えられていない人差し箸、中指を箸の間に挟んでしまう平行箸もあります。

これ以外にもありますが、いずれにせよ、先に説明した正しい箸の持ち方や動かし方をしていないものは、全て正しくありません。

正しい箸の使い方の重要性

話を戻しましょう。

箸の正しい使い方はとても重要であり、教えられるべきであると考えています。その理由は次の観点からです。

  • 食器としての機能
  • 共食におけるマナー
  • 大切な日本の食文化

これらをひとつずつ説明していきましょう。

食器としての機能

箸は食事を食べるための道具です。この道具をしっかりと使いこなせないようでは、食事を正しく美しく食べることができないでしょう。細かい箸捌きもできず、食べる時の効率もよくありません。

ペン箸や交差箸は箸先が開きにくいので、小さいものをつかめず、握り箸はそもそも箸を開いたり閉じたりすることが難しいので、刺したりかきこんだりすることしかできないでしょう。

人差し箸は人差し指が使われていないので、食べ物をつかむ力が弱くなってしまい、平行箸は不安定なのでスムーズに箸を動かせません。

このように正しくない握り方をして、箸を上手に動かせないと、それを補うために、食事の所作全体がいびつになってしまいます。

そして、食べ物をつかみにくかったり、取り落としそうになったりすると、不自然に所作が早くなったり雑になったり、背中が丸まったり犬食いになったりしてしまうのです。

そもそも、和食は箸を使って食べることを前提にしているので、箸が上手に使えなければ、自然体で美しく食べることが難しいのは当然のことでしょう。

箸は和食を食べるのに必要な機能を担っているだけに、持ち方や使い方を習得することは重要であるといえます。

共食におけるマナー

誰かと一緒に食事することを共食といいます。

「同じ釜の飯を食う」という言葉があるように、寝食を共にすることは人間関係において非常に重要です。

心理学でミラーリング、つまり、同じ行動をする相手に好感を抱きやすいという効果があることはよく知られています。こういった観点からすれば、同じ食事を同じような箸の使い方で食べることは、対人関係において重要なことではないでしょうか。

マナーという観点から鑑みると、食事のマナーは、共に食事をとる相手に不快な思いをさせず、互いに気持ちのよく過ごせるようにするための潤滑油のようなものです。

特に箸は日本人にとって重要な食器なので、箸の持ち方や使い方は、同席者にとって、他の食器よりも大きな関心が寄せられます。その証左に、箸のマナー違反は「嫌い箸」「忌み箸」と命名されているくらいです。

嫌い箸の例を挙げると、食べ物に刺して食べる「刺し箸」「突き箸」、箸が宙で彷徨う「迷い箸」、料理の中で箸を動かす「探り箸」、箸を口の中でなめる「ねぶり箸」、上下を逆さまに持って使う「逆さ箸」、同じ料理ばかりを食べ続ける「重ね箸」、箸で食器を引き寄せる「寄せ箸」など、本当にたくさんのものが存在しています。

したがって、正しい箸の使い方をすることは、共食において非常に重要なことなのです。

大切な日本の食文化

箸は日本の食文化を象徴する大切な食器です。

2013年12月に和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、和食および日本料理、つまり、日本の食文化が尊いものであると世界から認識されるようになりました。

それに伴って、料理だけではなく、日本で使われている食器、箸や陶器などの和食器にも耳目が集まっています。

そのような状況で、当の日本人が箸を満足に使えないようでは、日本の食文化の促進できないのではないでしょうか。

箸が日本の食文化に与える影響は非常に大きいです。

それを示すかのように、箸が用いられた慣用句はたくさんあり、例えば以下のものがあります。

  • 箸が転んでも可笑しい年頃
  • 箸が進む
  • 箸にも棒にも掛からない
  • 箸の上げ下ろし
  • 箸より重い物を持たない
  • 箸を付ける
  • 箸を取る
  • 箸を持って食うばかり
  • 箸をつける
  • 箸を置く
  • 箸を休める

日本の神話「古事記」から拝借すれば、スサノオが流れてきた箸を拾う話がありますが、これは大昔から箸は日本人にとって重要な道具であったからではないでしょうか。

日本の大切な食文化の一部である箸を扱えるようにするのは、日本人および日本で生活する者にとって、極めて意義があることです。

食文化の伝播

先に共食について紹介しましたが、農林水産省の<みんなと楽しく食べること>にもあるように、共食の利点として「食事マナーを身に付けることができる」ことが挙げられています。

政府広報オンラインの<「食べる力」=「生きる力」を育む 食育 実践の環(わ)を広げよう>では、共食は親や祖父母から子供に箸の正しい持ち方や食事のマナー伝える良い機会であると紹介されています。

したがって、親であれば食事の際に、日本人にとって重要な箸の使い方を、未熟な小学生児童に教えるのが、本来あるべき姿ではないでしょうか。

箸の持ち方への関心

世界の食事方法を大別すると、手を使う手食が40%、ナイフ、フォーク、スプーンを使うナイフ・フォーク・スプーン食が30%、箸を使う箸食が30%であるといわれています。

どの食事方法が優れているか、劣っているかということはありませんが、自分たちが用いている食事方法について関心を持ち、継承していくことは重要なことではないでしょうか。

なぜならば、人間は自分たった一人で生きているわけではなく、一人で突然生まれてきたわけではないからです。

その土地で食べられているものや食事方法があってこそ、祖先の命があり、そして自分たちの命があるということに想像を馳せてみれば、箸の持ち方に対して真摯に向き合う気持ちが芽生えてくるのではないでしょうか。