平成から令和へ。ゴールデンウィークの飲食店は好調? 知られざる大型連休における4つの苦労
ゴールデンウィークの旅行客が過去最高
元号が平成から令和へとかわり、新しい時代が幕を開けました。
平成最後で令和最初のゴールデンウィークをどのようにして過ごしていますか。
2019年の4月27日(土)から5月6日(月)にも渡る10連休のゴールデンウィークが始まり、既に半ばとなりましたが、以下のように国内旅行も外国旅行も好調ということです。
国内と海外ともに旅行費用も増えており、旅行日数も多くなっているというのです。
前例のない10連休ということで、国内および国外への旅行が促進されるのは、理解できることでしょう。
飲食店は好調
では、飲食店の集客はどのような状況なのでしょうか。
旅行や移動が多いとされる大型連休では、飲食店の集客が鈍ると思われることがあります。
しかし実は、ゴールデンウィーク、お盆を含めた夏休み、年末年始といった長期休暇では、学校や会社や工場に依存していなければ、飲食店は賑わうというのが、飲食業界の常識です。特にイベントの開催場所付近であれば、非常に混雑することになります。
長期休暇に混雑する主な理由は、次の日も休みであれば外に出掛けやすくなったり、せっかくの長い休みなのでよいものを食べに行こうと考えたりするからです。
ただ、2019年のゴールデンウィークは10連休と前例のないほど長期に渡っており、旅行客も過去最高を記録しているだけに、これまでとは異なる様相を呈するかもしれません。
そこで、ホテルやレストランの関係者に尋ねたところ、10連休の間の飲食店は最後となる祝日の5月6日(月)を除いては満遍なく集客できており、例年以上というのです。またホテルの客室稼働率は非常に高くなっています。
なぜ今年のゴールデンウィークは非常に好調なのでしょうか。
前もって告知
最初に挙げる大きな理由は、10連休になることが前もって十分に告知されていたことです。
早いところでは、一昨年2017年12月に放送されたANN NEWSで、2019年は10連休になりそうだと取り上げられていました。
3連休を超えるような大型連休であったとしても、メディアが宣伝していなければ、多くの人は日が近くなるまではあまり意識しないものでしょう。
それが、1年半以上も前から、前例のない10連休が訪れると報道されていれば、一生に一度の長期休暇なので遠いヨーロッパに旅行してみようだとか、海外旅行の経験のない方でも近くのアジアくらいなら訪れてみようだとか、海外は難しくてもせめて国内旅行に行ってみようだとか、考えるものです。
旅行を計画していない人でも、さすがに10連休は長いので、何もしないで自宅にいるのはもったいないと思っています。
上記のぐるなびによるアンケートによれば<31.9%が例年より外出機会が増加><ゴールデンウィークのおでかけ予定は「グルメスポット」や「ショッピング」が上位に>という結果になっているのです。
オフィス街や工場、学校の近くにある飲食店では、10連休の多くを休業にしていることも少なくありません。
東京都内の人の数は減っているかもしれませんが、外食しようとする人が多く、ゴールデンウィークを休業にする飲食店もあるために、オープンしている飲食店がより好調になっているのではないでしょうか。
令和のプロモーション
次に挙げられるのは、多くの飲食店、特にホテルのレストランでゴールデンウィーク期間を含む魅力的な令和プロモーションが行われていることです。
例えば、新元号が令和であると発表されたのは4月1日11時ですが、その日の16時にはグランド ハイアット 東京が、4月1日から6月30日にかけてステーキハウスとして名高い「オーク ドア」でマグナムボトルのワイン付いた「ゴールデン ジャイアント バーガー」を販売すると周知しました。
金粉をまとわせたバンズで黒毛和牛やフォアグラ、トリュフなどの高級食材を挟み、直径25cm、高さ15cm、総重量3kgにもなるラグジュアリーな巨大バーガーとなっており、6名から8名が食べられるボリュームとなっています。付属するマグナムボトルのワインは、シャンパーニュ、白ワイン、赤ワインから選べるのも特徴です。
同日の夜にはザ・リッツ・カールトン大阪が、令和をイメージしたカクテル「薫(かおる)~REIWA~」を4月1日から「ザ・バー」で販売すると発表しました。
翌4月2日には、ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテルが平成最後のサンセットクルーズや令和を印字したチョコレートなど多彩な商品を、横浜ベイシェラトン ホテル&タワーズは令和を記念した「祝 平成 & 新元号記念プラン」をゴールデンウィーク期間限定に販売すると発表しています。
4月5日には、パレスホテル東京が、令和を迎えるにふさわしい「新たな時代への窓をひらく」をテーマにしたコラボレーションとして、4月22日から「パレスホテル東京×舘鼻則孝氏」を実施するとアナウンスしました。
これ以降も令和にちなんだフェアや商品がたくさん発表されています。
一休.com、OZmallといった大手のレストラン予約サイトでも、この超大型連休の売上を伸ばそうと、ゴールデンウィーク特集にとても力を入れているので、目にしたことがある人も多いことでしょう。
新元号が令和と決まるといなや、魅力的で興味をそそるプロモーションがすぐに発表されたことで、飲食店に訪れるモチベーションを高めることにつながったのではないでしょうか。
飲食店の苦労
大型連休で、飲食店の集客は好調であると紹介し、その理由を述べてきました。しかしその裏では、飲食店にとって大型連休ならではの苦労もあるのです。
飲食店の苦労や対策をみていきましょう。
スタッフの確保
集中した繁忙期が続くことから、スタッフの確保が重要となっています。最終日はそこまで忙しくないのでカウントしないとしても、混雑日は9日間も続くことになるのです。
キッチンスタッフやサービススタッフが少なくなると、料理の提供やレスポンスが遅くなったり、料理や接客の質が下がったりしてしまいます。
そうならないように、スタッフを確保しておかなければなりません。それにはシフトを早めに組んで調整したり、時給を上げて希望者を募りやすくしたりすることが必要です。それでも足りなければ、バックオフィスの社員が現場に出て手伝うことも考えなければなりません。
チェーン店であれば他店舗からのヘルプで乗り切るという方法もあるでしょう。チェーン店でなくとも、親しい個店では、互いの飲食店で手伝うこともあります。
スタッフの確保はオペレーションの最優先課題なので、飲食店は早い段階から努力しているのです。
新規客の増加
ゴールデンウィーク期間中には、普段よりも多くの新規客が訪れる可能性が高いでしょう。もちろん、飲食店にとっては新しい顧客を開拓することにつながるのでチャンスであることは間違いありません。
しかし、そこで飲食店の魅力が伝わらなければリピーターになってもらえないので、忙しいながらもしっかりとアピールする必要があります。
初めての客が多いということで、お勧めメニューやドリンク、コースを説明したり、トイレの場所や営業時間を訊かれたりすることも多いでしょう。その際にサービススタッフが適切に応対できなければなりません。
いつもよりたくさんの新規客が訪れることを見越して、サービススタッフに改めて教育しておくことが大切です。
関係業者の確認
飲食店は多くの関係業者と取引を行っており、食材や飲み物を購入して配送してもらったり、機材や什器のメンテナンスしてもらったりしています。
ゴールデンウィークでは通常とは異なる勤務体系になることも多いので、しっかりと確認しておき、飲食店の運営に支障がないように計画しておかなければなりません。
もしも機材や什器に不具合があった場合には、修理にきてもらえないこともあるので、事前にチェックしておくことが重要です。
銀行の休業
日本でもようやくキャッシュレスが促進されてきていますが、クレジットカード加盟店手数料の負担があったり、古い体質の現金主義であったりすることから、飲食業界ではまだ現金払いが中心となっており、小さい飲食店であればあるほどこの傾向が強いです。
したがって、お釣りをたくさん用意しておかなければなりませんが、銀行は休業しています。もちろん、ATMは稼働していますが、全ての日に稼働しているとは限らなかったり、ATMの現金が不足したりする可能性もあるでしょう。そのため、事前に普段よりも多額のお釣りを準備しておかなければなりません。
売上金を入金する場合には、土日祝日は手数料がかかるからといって、後でまとめて入金することもあるでしょう。しかし、10日間の売上金となると額が大きくなるだけに、店内に保管しておくことはセキュリティ的な観点から好ましくありません。手数料がかかっても普段通りに入金するべきです。
キャッシュレス化が進んでいない日本の飲食店では、ゴールデンウィーク期間中、現金の管理が大変となります。
飲食店への理解も大切
5月1日の新天皇の即位というハレの日に際して、10連休という超大型連休が設けられました。ハレの日にご馳走を食べることは、食文化を育んできた人として極めて自然な行為であり、親しい人たちと共に素晴らしい食体験を得られるよい機会です。
ただ、その裏では、いくら好況で嬉しい悲鳴とはいえ、休まずに営業している飲食店があり、大型連休ならではの苦労もあります。
飲食店に訪れる際には、飲食店の苦労や混雑を十分に理解しておき、心の余裕をもって大切な人との食事を楽しんでもらえたら幸いです。