今だけ半額で、飲食店がノーショー(無断キャンセル)対策にもなるITツールを導入できる方法とは?
宴会シーズン
11月も半ばを過ぎ、今年も終わりに近づいてきました。この時期は宴会シーズンであり、多くの人が飲食店を予約しています。
昨年は<飲食店ITの賢人たちが語る「ノーショーやドタキャンはなくせるのか?」>で、ノーショー(無断キャンセル)やドタキャンはよくないことであると喚起しました。
つい先日、<席予約の無断キャンセル(ノーショー)で5割のキャンセル料は高い? 官民一体の施策に対する5つの考察>では、官民が一体となってノーショーについて勉強会を実施し、「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」を発表したことを伝えました。
「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」には様々な事例が挙げられており、ノーショーは全ての飲食店に損害を与え、そして日本経済を疲弊させる悪しき行為であると述べられています。それだけではなく、どのように対策していけばよいかというヒントもふんだんに含まれているのです。
ノーショー対策にITツールが有効
ノーショー対策では、予約確認の電話、デポジットの支払い、クレジットカード番号の登録がとても有効ですが、営業時間が長いので、飲食店がまめに電話を掛けるのは難しく、デポジットの支払いやクレジットカード番号の登録をオフラインで行うのは手間暇がかかります。
しかし、ITツールの力を借りれば、例えば予約台帳では、電話ではなくメールやSMSで予約を確認したり、事前支払いに対応したり、クレジットカードを記憶したりできるのです。
ITツールには様々なものがあり、ノーショー対策ができるだけではなく、業務を効率化してサービススタッフの負担を減らしたり、客の傾向を分析してマーケティングに役立てたり、経営状態を可視化して利益を向上させたりと、あらゆる分野で飲食店の助けとなります。
ただ、個店が多い飲食店では、IT全般に対する理解が高いとはいえず、ITツールを導入したり運用したりする費用を捻出するのも躊躇されがちです。
しかし、こういった理由で前向きではない飲食店にも、ITツールを是非とも導入してもらいたいと考えています。
なぜならば、今であれば、ITツールの導入に関してサポートを受けられたり、導入費用を最大で半分にしたりできるからです。
IT導入補助金
どうすれば、ITツール導入に際して、サポートを受けたり、費用を半分にしたりできるのでしょうか。
それは、経済産業省のIT導入補助金を利用することです。
予算は、昨年度が100億でしたが、あっという間に予算に達してしまったということで、今年度は500億円と大幅に拡大しています。
昨年度IT導入補助金を行った飲食店では、売上が約25%アップ、労働生産性が平均約37%アップという素晴らしい成果をあげています。採択率も9割を超えており、申請が通らないことの方が少ないので、積極的に申請してみるのがよいでしょう。
今年度の交付申請期間は、1次公募が2018年4月20日から6月7日、2次公募が2018年6月20日から8月3日となっており、最後の3次公募は2018年9月12日から12月18日となっています。
締切まで1ヶ月を切っているので、できるだけ急いだ方がよいでしょう。
IT導入補助金とは
IT導入補助金は飲食店のITツール導入を補助する手段であると紹介しましたが、そもそも、どういったものでしょうか。
IT導入補助金を申請できるのは中小企業であり、飲食店であれば、資本金5000万円以下もしくは常勤の従業員100人以下となっているので、個店を含む多くの飲食店が対象となります。
補助対象はソフトウェア、クラウド利用費、導入関連経費等となっており、補助率は2分の1まで、補助上限額は50万円、補助下限額が15万円です。
ITツールであれば何でもよいというわけではなく、ITツールを提供する事業者が、しかるべき手順を踏んで、IT導入支援事業者となっている必要があります。
ただ、IT導入支援事業者一覧によると、全国で7800以上のIT導入支援事業者がいるので、必要とするITツールを提供する事業者を見付けられるのではないでしょうか。
また、ITツール選定ナビで機能検索すると、「外国人」を指定すると204件、「予約管理、受付」を指定すると282件のITツールが表示されます。比較するだけでも大変なボリュームなので、IT導入支援事業者もITツールも対象数は十分であるといえるでしょう。
申請方法
では、申請方法はどうなっているのでしょうか。申請者である飲食店が行うべきことは、以下の通りです。
経済産業省のサイトに集約しており、用意されているツールに様々な情報を入力します。その後は指定したITツールの事業者が代理申請を行い、最後に契約および支払いを行うという流れです。
ポイントになる点
経済産業省のIT導入補助金は飲食店にとても心強い制度であり、私も経済産業省の担当者と話し合いの場を持ち、意見を交換させていただきました。
- 現場の悩みを解決
- オプションや役務も対象
- オンラインで完結
- 事業実施効果報告の回数
- SECURITY ACTIONへの宣言
その中でIT導入補助金という制度に関しては、以上が特に言及するべき点であると考えています。
現場の悩みを解決
飲食店は作った料理や飲み物を提供する業態であり、職人気質の世界であったり、個店が多かったりするという特性上、デジタルというよりもアナログな業界です。したがって、調理やサービスに関する技術を高めることは得意であったとしても、経営やオペレーションをシステム化して効率を向上させることはあまり得意であるとはいえません。
ただ実際のところは、そもそも、どういったITツールがあり、それを導入すると、どのような効果があり、経営にどういった作用をもたらすのかを知らない飲食店も多いです。
経済産業省はIT導入補助金を行うにあたり、同時にITツールの導入促進も行っています。業種別 お悩み解決ITツール機能では、業種別にそれぞれが抱える悩みを掲載し、その悩みを解決するにはどういったITツールが効果的であるかを紹介しているのです。
飲食業では、以下のような10の悩みを取り上げています。
スタッフが不足している、人気店なのに利益がでない、味に自信があるのに集客できない、メルマガを配信してもリピートにつながらないなど、飲食店にありがちな悩みばかりです。
実際の悩みからソリューションとしてITツールを紹介しているので、ITに疎い飲食店であっても理解しやすいでしょう。
ITツールで生産性向上事例も掲載されており、同じ業種の施策はとても参考になるはずです。
オプションと役務も対象
IT導入補助金で対象となっているものは、ITツール製品それ自体だけではなく、それに付属するオプションや役務(サービス)も含まれています。
補助対象となるITツール(製品)
- 新たに導入するソフトウェアやサービスが補助対象です
- クラウドサービスの補助対象はSaaSです
- 新規ホームページ制作の扱い
- ホームページ宣伝経費の扱い
- 汎用性の高いソフトウェアの扱い
- 継続な生産性向上が望めないソフトウェアの扱い
- カスタマイズの範囲
- スクラッチ開発は補助対象外
- 補助対象経費の金額が変動する場合は補助対象外
- ハードウェアは補助対象外
- 交付申請時の注意事項
オプションには、機能拡張やアカウントID追加も含まれています。必要な機能を加えてさらに効率化を図ったり、アカウントを増やして複数人で対応したりできるので、とても有益です。
補助対象となるITツール(オプション)
- 機能拡張/データ連携ソフト
- HP利用料
- アカウントID追加/クラウド年間利用料追加
役務が含まれているのも、よいことでしょう。ITツールを導入しただけで使いこなせなくては意味がないので、業務コンサルや導入研修も対象にして、リテラシーを向上させるのは意味があります。
補助対象となるITツール(役務)
- 保守・サポート費(最大1年分)
- 導入設定、業務コンサル、マニュアル作成、導入研修
- セキュリティ対策
最低限の機能だけ導入してみたら実はあまり効率化できなかったり、スムーズに使えないので簡易的な機能しか利用しなかったりすれば、ITツールの効用が半減してしまいます。
ITツール本体だけではなく、オプションや役務も補助対象となっていることにより、ITツールの効果をより確実なものにしているといえるでしょう。
オンラインで完結
IT導入補助金に関する申請や報告といった作業が、全てオンラインで完結することも言及しておくべきことです。
飲食店はただでさえ拘束時間が長く、あまり空いている時間がありません。従って、申請するために膨大な書類を用意して役所まで持って行き、それを何度も繰り返すとなると、非常に敷居が高くなってしまいます。
しかし、申請における全てのツールがオンライン化されており、紙の書類を用意したり、役所に訪れたりする必要がないので、アイドル時間に申請作業を行うことができます。
経営診断ツールへの入力は財務情報も必要なので少し難易度は高いですが、同じページに動画で操作方法が説明されていたり、交付申請の手引きの中に詳しいマニュアルがあったりと、手厚くサポートされているので、オンラインでも安心でしょう。
飲食店が申請した後は、対象となるIT導入支援事業者が内容を確認し、修正があれば、申請者だけではなくIT導入支援事業者も修正することが可能です。
飲食店が全て行わなければならないのではなく、IT導入支援事業者がサポートしてくれるので、飲食店の負担はだいぶ軽減されています。
事業実施効果報告の回数
IT導入補助金を利用した飲食店は、事業実施効果報告の義務が発生します。
昨年度および今年度の1次公募と2次公募では、事業実施効果報告を事業終了後5年間(計5回)行う必要がありましたが、今年度の3次公募からは1年分(1回)に緩和され、飲食店の手間はかなり省かれました。
3次公募の事業実施効果報告が1年分に緩和したことから、同年度の1次公募と2次公募も後から共に1年分に変更されています。
先に述べたように、飲食店は拘束時間が多いので、いくら補助金を受けられたとしても、5年間も報告が続くというのであれば、IT導入補助金の申請をためらう飲食店もいるでしょう。
毎年報告の時間を割かせることで飲食店の生産性を下げることになっては本末転倒です。
経済産業省としては、効果報告がなければ飲食店によるフィードバックを得られないので、制度を分析して改善を行うことは難しいです。したがって、事業実施効果報告を求めることは当然ですが、期間や回数を軽減して、飲食店の心理的な敷居を下げたことはよい結果を生むと思います。
SECURITY ACTIONへの宣言
IT導入補助金を受けるにあたり、飲食店はオンライン上で事前にいくつかの申請を行わなければなりません。
ITツールを導入する際に補助金を受ける制度なので「IT導入支援事業者の選定」や「ITツールの選択」は当然であり、飲食店が自身の状況を申告するにためにも「経営診断ツールでの診断」も理解できます。
ただ、「SECURITY ACTIONへの宣言」の実施という項目に関しては、これは何だと思う飲食店が多いのではないでしょうか。
以下の通り、ITツールを導入するのであれば、セキュリティ対策の継続や向上を目指す必要があるので、IT導入補助金の申請に必須になったと述べられています。
ただ、未だにITツールでさえ導入していない飲食店に対して、いきなり情報セキュリティといってもあまりピンとこないのではないでしょうか。
以上の通り、セキュリティ宣言の内容自体は、ごく当たり前のことであり、難しいものではなく、これからの時代にはますます情報セキュリティに対する意識は重要となります。ただ、「SECURITY ACTIONへの宣言」のせいでIT導入補助金の申請に対して敷居を高くしまってはいけません。
したがって、「SECURITY ACTIONへの宣言」がどういったものであるか、さらには、難しかったり、手間がかかったりするものではないのだと、もっと説明した方がよかったと思います。
IT導入補助金による労働生産性
経済産業省は、以下のように労働生産性を定めています。この労働生産性を高めるために、IT導入補助金も実施されています。
事業実施効果報告の成果をみてみると、IT導入補助金を受けた飲食・サービスの業態では粗利が+29.9%、従業員数が+2.8%、勤務時間が-1.9%となっており、そして労働生産性が+26.4%と大きく伸びています。
つまり、ITツールを導入することによって、どの要素も飲食店にとってよい方向に改善されており、生産性が向上しているのです。
制度への批判よりも普及へ
昨年度は100億円の予算がすぐに達成してしまったので、今年度は500億円と5倍に伸長しました。これに反し、今年度は昨年度よりも補助内容が薄くなっています。
- 補助率
昨年度:3分の2/今年度:2分の1
- 補助上限額
昨年度:100万円/今年度:50万円
- 補助下限額
昨年度:20万円/今年度:15万円
<IT導入補助金が400億円余る、経産省の誤算>などの記事にあるように、昨年度に比べれば今年度は、予算が大幅に増えているものの、補助金額が減っていることもあり、予算にはまだ余裕があるということです。
そのことに対して見積もりが甘い、実態を知らない施策だ、官僚的な考えで予算を拡大して消化することが目的になっているなど、一部厳しい論調も見受けられます。
しかし、このIT補助導入金が、飲食店にとって有益であり、ノーショーやドタキャンの対策にも役立つことは、明白なことでしょう。せっかく国が用意している制度なので、飲食店がこの機会を見逃すのはもったいないです。
メディアやジャーナリストなどの識者は、予算の消化状況などから制度を批判するだけではなく、IT導入補助金のような制度が存在し、これが飲食店に対してどのような恩恵をもたらすのかもしっかりと伝えていき、飲食店の助けとなるように努めていく必要があるのではないでしょうか。