最高級食材の白トリュフはいくら? 一流ホテルの料理人が有する白トリュフの哲学

イタリア・アルバ産の白トリュフ@ピエール・ガニェール/著者撮影

白トリュフの季節が到来

世界三大珍味といえば<フカヒレは何のサメのどの部位か? フカヒレの豪華フルコースと現状>でも紹介したフカヒレ、キャビア、トリュフです。

どれも希少な高級食材ですが、フカヒレやキャビアでは日本ではあまり旬が感じられないのに対して、トリュフは日本でもその旬がはっきりと感じられる食材です。その旬とはこの秋から冬にかけてであり、今はトリュフの中でも最高の香りと値段を誇る、白トリュフの季節となっています。

イタリア産の白トリュフであれば、100グラム10万以上となっており、レストランでトッピングするとなれば、1グラム1500円から2000円となっています。この相場を知れば、白トリュフを食べたことがない人であっても、その希少性は十分に理解できることでしょう。

昨季は<一流ホテルの星付きフレンチで知る、今だけの高級食材「黒トリュフ」>で黒トリュフを、その前の季には<一生に一度は味わいたい超高級食材、白トリュフを使う理由とこだわり>で白トリュフを紹介してきました。

今年は一流ホテルの料理人がどのような哲学を有し、最高級の食材のひとつである白トリュフに対峙しているのかを、紹介していきましょう。

4ホテルのレストラン

今回紹介したいのは、次の4ホテルのレストランです。

  • コラージュ/コンラッド東京
  • けやき坂/グランド ハイアット 東京
  • アルヴァ/アマン東京
  • ピエール・ガニェール/ANAインターコンチネンタルホテル東京

モダンなフレンチからイタリアンレストラン、さらには、鉄板焼までもが白トリュフを使って、旬の味覚を提供しています。

それぞれどのようなこだわりがあるのか、コースや料理の詳細と共に紹介していきましょう。

コラージュ

ヒルトンは1963年6月に日本にオープンし、外資系の中でも日本人に最も馴染みの深いホテルのひとつです。そのよく知られたヒルトングループの中でも、ラグジュアリーブランドに位置し、フレンチから中国料理、日本料理など食が充実したホテルといえば、コンラッド東京が挙げられるでしょう。

<3つのキーワードからたぐる真夏でも食べたくなるホテルのフレンチ2017年>などでも紹介しているコンラッド東京のモダンフレンチ「コラージュ」では、この時期にだけ特別な白トリュフのメニューを提供しています。

2018年10月2日から12月中旬のディナーでは白トリュフをふんだんに用いた「白トリュフ リゾット パンチェッタ 奥久慈卵」を楽しむことができるのです。

アラカルトで注文することはもちろん、「グルマン コース」「デクーヴェルト コース」といった通常コースをアップグレードし、この白トリュフの特別メニューを体験することも可能となっています。

コース内容

白トリュフ@コラージュ(コンラッド東京)/ホテル提供
白トリュフ@コラージュ(コンラッド東京)/ホテル提供

シェフ・ド・キュイジーヌを務める松永晋太郎氏は食材に精通し、和のモダンラグジュアリーを体現した料理を作り上げる料理人です。この松永氏の哲学が凝縮されたコースが「グルマン コース」。

季節によって内容は変わりますが、白トリュフの時期は以下のようになっています。

  • 富山県産白海老 シャインマスカット 蕪 クリスタルキャビア
  • 長谷川農産マッシュルーム 十勝ハーブ牛 フォアグラ いぶりがっこ
  • ボタン海老 ヒジキ オカヒジキ 舞茸 または 白トリュフ リゾット パンチェッタ 奥久慈卵
  • 九州産クエ トリュフ 蓮根 エノキ
  • ビュルゴー家のシャラン鴨 牛蒡 紅あずま 無花果 または 松阪牛フィレ肉 瞬間燻製 北山農園野菜 黒にんにく
  • ショコラ テリーヌ アーモンドミルク トンカ豆 ラズベリー
  • コーヒー、紅茶
  • 小さなお菓子

アップグレードすると3品目が「白トリュフ リゾット パンチェッタ 奥久慈卵」となります。モダンフレンチで、リゾットがさりげなくこの位置に入るのは、白トリュフの季節だけの特別な構成であるといえるでしょう。

松永氏は「温前菜としてコースの真ん中で提供することで、コース料理のピークがメイン料理とリゾットで2回訪れる。ゲストの期待感も2倍になるのではないかと考えた」とリゾットの組み合わせどころについて説明します。

注目メニュー

白トリュフ リゾット パンチェッタ 奥久慈卵@コラージュ(コンラッド東京)/ホテル提供
白トリュフ リゾット パンチェッタ 奥久慈卵@コラージュ(コンラッド東京)/ホテル提供

コースの中で最も注目するべき料理は、やはり「白トリュフ リゾット パンチェッタ 奥久慈卵」です。

リゾットに最適といわれているイタリアを起源とするイタリア産カルナローリ米が用いられており、パンチェッタの塩味とパルメジャーノ レッジャーノの香り、さらには、その濃厚さから食べたら忘れられないという奥久慈卵のまろやかさが印象に残ります。

「トリュフは卵やチーズと相性がよいので、リゾットにして合わせた。カルボナーラのようなしっかりとした味わいで、満足していただけると信じている」と松永氏が自信を持つように、メインディッシュにも引けをとらぬ力強い一品となっています。

「松阪牛フィレ肉 瞬間燻製 北山農園野菜 黒にんにく」は、得意の瞬間燻製で松阪牛の旨味の余韻をさらに引き伸ばし、食味を高めています。付け合せには、松永氏がシェフ・ド・キュイジーヌになってから仕入れ始めた静岡県の北山農園からその日その日によって最良の野菜を届けてもらい、肉料理に合わせています。

こだわり

白トリュフ リゾット パンチェッタ 奥久慈卵、白トリュフ@コラージュ(コンラッド東京)/ホテル提供
白トリュフ リゾット パンチェッタ 奥久慈卵、白トリュフ@コラージュ(コンラッド東京)/ホテル提供

今回の白トリュフはどこの産地を使っているのでしょうか。

松永氏は「イタリアのアルバ産とマルケ産を使っている。毎週業者の方に両産地の白トリュフをいくつか持って来てもらい、その中から香りや状態のいい物を選んでいる。アルバ産は知名度が高く、ゲストも喜んでくださるので、なるべくアルバ産を使うようにしている」と選定理由を答えます。

今年の白トリュフについては「クオリティは昨年とさほど変わらないが、値段は昨年に比べて3割ほど安い」と説明し、「昨年、常連のゲストに提供した時に満足していただいたのがきっかけで、今年も引き続き提供することを決めていた」と昨年から白トリュフのフェアを行うことを考えていたといいます。

リゾットを作ることにしたのは「白トリュフのような特別な食材は、シンプルかつダイレクトに用いた方が、素晴らしさが伝わると考えている。もともとイタリア料理を学んでいたこともあり、シンプルなリゾットが最適であると思っている」と述べます。

白トリュフのリゾットは昨年も提供していましたが、ゲストからリクエストがあった場合にはラビオリなど別の白トリュフ料理を作り、柔軟に対応しています。

「ゲストの目の前でスライスするプレゼンテーションも満足していただている。今年も好評をいただいているので、来年も是非、白トリュフのフェアを行いたい」と話す松永氏は、日々食材図鑑を通読するほど素材を熟知した料理人であるだけに、来年はどのように白トリュフを組み込むのか、今から興味が持たれます。

アルヴァ

白トリュフの名産地といえば、何といってもイタリアです。イタリア・ピエモント州のアルバが最高の品質であるとされており、その旬を祝って「白トリュフ祭」が行われたり、求める人々のために「白トリュフマーケット」が開催されたりしています。

<相次いでリニューアルしている高級ホテルのレストランで注目しておくべき3つの特徴>では、極上リゾートホテルとして根強い人気を誇るアマンが大手町にオープンしたアマン東京を紹介しました。

アマン東京のレストランが2018年1月26日にイタリアンレストラン「アルヴァ(Arva)」へと新しく生まれ変わり、大きな耳目を集めています。

世界で多くのゲストを感動させているアマン東京のイタリア料理であれば、当然のことながら白トリュフにも相当のこだわりを持っています。

コース内容

リゾット パルミジャーノレッジャーノと白トリュフ@アルヴァ(アマン東京)/ホテル提供
リゾット パルミジャーノレッジャーノと白トリュフ@アルヴァ(アマン東京)/ホテル提供

エグゼクティブシェフの平木正和氏はイタリアで17年を過ごし、そのうち13年を山と森と海に囲まれたヴェネトの州都であるヴェネチアで5つ星「バウアーホテル」で総料理長を務めるなど経験を積んできました。

白トリュフのことを本場イタリアで知り尽くした平木氏は、2018年10月19日から「秋の収穫-ピエモンテの白トリュフ」を行い、白トリュフ尽くしのコースを提供しています。

  • 南瓜とミックスリーフのインサラータ タレッジョチーズと白トリュフ
  • 相模原産有精卵と雲丹 サンダニエーレプロシュットと白トリュフ
  • ラビオリ インカのめざめ フィンフェルリ茸と白トリュフ
  • リゾット パルミジャーノレッジャーノと白トリュフ
  • 鹿児島県産黒毛和牛フィレ肉のグリリアータ ポルチーニ茸と白トリュフ
  • ミッレフォーリエと白トリュフ

前菜から魚料理、肉料理、さらにはデザートまでと、白トリュフ尽くしであるといえるでしょう。

メニューには記載されていませんが、最初に提供されるアミューズから白トリュフが使われており、白トリュフを楽しんでもらいたいという平木氏の思いが伝わってきます。

注目メニュー

相模原産有精卵と雲丹 サンダニエーレプロシュットと白トリュフ@アルヴァ(アマン東京)/著者撮影
相模原産有精卵と雲丹 サンダニエーレプロシュットと白トリュフ@アルヴァ(アマン東京)/著者撮影

それぞれのメニューにはどのような特徴があるのでしょうか。

アミューズはパルメザンチーズ、メレンゲを加えたアーモンドのクロッカンで、その上にさりげなく白トリュフのスライスをのせています。甘塩っぱい味わいと小気味いい食感、さらには白トリュフの芳香が華やかなシャンパーニュとよく合うでしょう。

「南瓜とミックスリーフのインサラータ タレッジョチーズと白トリュフ」はマリネしたミックスリーフ、ニンニク、タイム、ローリエなどのハーブを使ったサラダです。ウォッシュタイプでパンチのあるタレッジョと、これに負けない香りを放つ白トリュフとが合わさって、お互いを引き立て合っています。「バランスを考えるのもよいが、強いもの同士を合わせるのも味の妙」と平木氏が述べるように、ありそうであまりなかった取り合わせです。

「相模原産有精卵と雲丹 サンダニエーレプロシュットと白トリュフ」はポーチドエッグと白トリュフの定番の組み合わせに、赤ウニを加えた意欲作。平木氏が「卵による大地のクリーミーさとウニによる海のクリーミーさが出会い、アクセントは生ハムの塩気」と述べるように、とても印象に残る一品です。

「ラビオリ インカのめざめ フィンフェルリ茸と白トリュフ」は、ラビオリでジャガイモのピューレやエシャロットを包み込みました。日本でもジャガイモと白トリュフはよく組み合わせますが、あまりラビオリにジャガイモを包んだりしません。平木氏に訊くと「イタリアでは、ラビオリにジャガイモを包むことは定番」といいます。本場のイタリア料理を知っている料理人ならではのパスタ料理といえるでしょう。

「リゾット パルミジャーノレッジャーノと白トリュフ」は「パルミジャーノレッジャーノがとてもおいしいので、鶏の出汁はあえて加えていない」として、チーズと白トリュフを堪能できるリゾットに仕上がっています。

「鹿児島県産黒毛和牛フィレ肉のグリリアータ ポルチーニ茸と白トリュフ」はバーナーで炙って表面をカリっとさせた黒毛和牛に、白トリュフをたっぷりとスライスしました。白トリュフの芳醇な香りによって、黒毛和牛のコクのある脂でさえも軽やかに感じられます。

「ミッレフォーリエと白トリュフ」はパイを折り重ねて表現したダイナミックなミルフィーユ。ミルキーなアイスクリームが白トリュフの妖艶な香りを包み込んでいます。白トリュフはスイーツにも相性がよいことを証明する一品でしょう。

こだわり

鹿児島県産黒毛和牛フィレ肉のグリリアータ ポルチーニ茸と白トリュフ@アルヴァ(アマン東京)/著者撮影
鹿児島県産黒毛和牛フィレ肉のグリリアータ ポルチーニ茸と白トリュフ@アルヴァ(アマン東京)/著者撮影

白トリュフ尽くしのイタリア料理を紹介してきましたが、平木氏は白トリュフのどういったところにこだわりをもっているのでしょうか。

「白トリュフはアルバ産に限らず、イタリア・ピエモンテ州のものを使っている。イタリアで本物の白トリュフを使ってきたからこそ、産地によるのではなく、自分の目で確かめて、最高の白トリュフを仕入れている」と自信を持っています。

さらには「白トリュフをスライスしてかけるのは、技術と経験が必要なため、白トリュフのことを最もよく知る人間でなくてはならない。そのため、私がゲストのテーブルまで訪れてスライスするようにしている」と自身の哲学を披露します。

今年の白トリュフについては「昨年はあまり質がよくなかったが、今年は例年通り」と見解を述べ、「白トリュフの季節になると、わくわくしてくる。イタリア人にとって、白トリュフはそれだけ大切な食材」と真摯に話します。

毎年白トリュフのフェアを行っていますが、今年に関しては「『アルヴァ』として新しくオープンしたことによって、より自由にアイデアを盛り込めるようになった。ベースは同じだが、昨年のコースとは全く別物」として、平木氏のクリエイティビティを以前よりも発揮できるようになったといいます。

どの料理がお勧めかという質問に対しては「白トリュフにあった料理しかご提供してない。あえて挙げるとすれば、ポーチドエッグの料理。卵と白トリュフという定番の組み合わせに、ウニも加えた挑戦的なメニューなので、是非とも食べていただきたい」と力を込めます。

「来年も引き続き白トリュフのフェアを開催していきたい」と述べる平木氏は、本場イタリアの白トリュフ料理を日本で存分に体験させてくれる貴重な料理人なのではないでしょうか。

けやき坂

白トリュフを使う料理といえば、フランス料理やイタリア料理が真っ先に挙げられるでしょう。基本的にトリュフはヨーロッパの食材であり、イタリアやフランスが名産地であるので、当然のことです。

日本でもトリュフがとれないことはありませんが、日本料理の食材でもなく、食用として流通することはほとんどありません。しかし、そういった状況であっても、日本料理、それも、焼くことを主とする鉄板焼で白トリュフを用いているレストランがあるのです。

その鉄板焼とはグランド ハイアット 東京「けやき坂」です。

2018年10月1日から11月30日にかけて、ディナーで白トリュフフェアを行っており、白トリュフばかりではなく、黒トリュフ、さらには日本におけるキノコの王様である松茸を堪能できる「国産松茸、トリュフコース」が提供されています。

また、通常のコースをアップグレードして白トリュフの料理を組み込んだり、全てのメニューに白トリュフのスライスを行ったりもしているのです。

コース内容

北海道産 ホタテ貝のソテー ポルチーニ ガーリック バター醤油@けやき坂(グランド ハイアット 東京)/著者撮影
北海道産 ホタテ貝のソテー ポルチーニ ガーリック バター醤油@けやき坂(グランド ハイアット 東京)/著者撮影

「けやき坂」料理長を務める本多良信氏は、オリジナル和牛である「けやき坂 ビーフ」を開発して2017年11月から提供を始めたり、鉄板焼カウンターでソルベを作ったり、黒トリュフの塩釜焼を考案したりと、常に先進的な試みを行っています。

今回紹介したいのは既存のコースをアップグレードした次のコースです。

(白トリュフは入荷の関係もあるので事前にお問い合わせください)

  • 京都府産 堀川ごぼう ゴルゴンゾーラソース
  • 北海道産 ホタテ貝のソテー ポルチーニ ガーリック バター醤油
  • 鰹のパン粉焼き 春菊のジェノベーゼ
  • 東京都産 けやき坂 ビーフ テンダーロイン と サーロイン 各50g
  • 牛肉とアスパラガス入り ガーリックライス または 銀杏と赤鶏のフライドライス 木の芽の香り
  • 味噌椀 香の物
  • 鉄板モンブラン アングレーズソース バニラアイスクリーム添え
  • コーヒー または 紅茶

「ホタテ貝は白トリュフのスライス」は白トリュフのスライス、「けやき坂ビーフ」は黒トリュフのスライスを行っており、白トリュフはもちろん、香りを深めている黒トリュフも楽しめます。

ただでさえ高級なイメージのある鉄板焼で、白トリュフも黒トリュフも堪能できるのは、極めて贅沢であるといえるでしょう。

注目メニュー

鰹のパン粉焼き 春菊のジェノベーゼ@けやき坂(グランド ハイアット 東京)/著者撮影
鰹のパン粉焼き 春菊のジェノベーゼ@けやき坂(グランド ハイアット 東京)/著者撮影

料理の詳細は次の通りです。

最初のアミューズは石川県の小芋と国産キャビア。国産キャビアは最近増えてきており、外国産に比べて輸送に数も少ないので、塩分が低くてフレッシュです。

「京都府産 堀川ごぼう ゴルゴンゾーラソース」は、堀川ごぼうを本多氏が得意のカダイフで巻き、鉄板でソテーし、ブルーチーズのソースを合わせた意欲的な料理。ゴボウ、カダイフ、ブルーチーズは新しい取り合わせでしょう。

「北海道産 ホタテ貝のソテー ポルチーニ ガーリック バター醤油」はソテーしたホタテ貝に相性の良いバター醤油を合わせ、そこにイタリア・ピエモンテ産の白トリュフをスライスしています。バター醤油の味わい深さと、白トリュフの華やかで鮮烈な香りはよいコントラストです。

「鰹のパン粉焼き 春菊のジェノベーゼ」は「カツオのたたきをナイフとフォークで食べたらどうなるか」という本多氏の発想が原点でした。ブロック状のカツオはスライスされたものよりも旨味が感じられます。ジェノベーゼソースは、バジルが使われておらず、春菊、クレソンによって作られているので和風の趣があるでしょう。

「東京都産 けやき坂 ビーフ テンダーロイン と サーロイン 各50g」は、「けやき坂」オリジナルの本多氏が自信をもつ黒毛和牛。フィレとサーロインを食べ比べできるだけでも嬉しいですが、さらには、フランス産の黒トリュフを目の前でスライスしてもらえます。

「鉄板モンブラン アングレーズソース バニラアイスクリーム添え」は7割くらい火を入れたジェノワーズ生地を鉄板で仕上げたデザート。ラムを染み込ませてフランベするので、鉄板焼ならではの実演も楽しめます。

こだわり

東京都産 けやき坂 ビーフ テンダーロイン と サーロイン 各50g@けやき坂(グランド ハイアット 東京)/著者撮影
東京都産 けやき坂 ビーフ テンダーロイン と サーロイン 各50g@けやき坂(グランド ハイアット 東京)/著者撮影

白トリュフはイタリア・ピエモンテ産、黒トリュフはフランス産と、鉄板焼とは思えない洋食の素晴らしい食材が使われていますが、本多氏は「夏に入った頃には、秋に白トリュフを使おうと考えていた」と早くから白トリュフのことが念頭にあったといいます。

理由を尋ねると、本多氏は「よくご提供している黒トリュフの料理はゲストに喜んでいただいているので、白トリュフもきっと喜んでいただけると信じていた。鉄板焼でできないことや鉄板焼に合わない食材はないと考えているので、常にチャレンジしている」と答えます。

白トリュフのよいところに関しては「香りが華やかなので、素材の味を引き出す鉄板焼によく合っている。目の前でスライスして仕上げるパフォーマンスも喜んでいただいている」と白トリュフは鉄板焼に相応しいと話します。

ビストロ料理のオールデイダイニング「フレンチ キッチン」やイタリア カフェ「フィオレンティーナ」など、白トリュフを用いていそうなレストランがグランド ハイアット 東京にはありますが、今季は「けやき坂」でだけ白トリュフフェアが行われています。

このことに触れると「クリスマスでも白トリュフを用いた料理を提供する予定。白トリュフは冷たい料理やスープにも合いそうだ。来年も白トリュフのフェアを是非行いたい」と力強く話す本多氏は、フランス料理やイタリア料理だけではなく、鉄板焼でも白トリュフの魅力を表現できる稀有な料理人でしょう。

ピエール・ガニェール

2018年1月20日に逝去したポール・ボキューズや、2018年8月6日に亡くなり、<逝去の報道で激震を与えた料理界の巨匠ジョエル・ロブション氏は何がすごいのか?>で紹介したジョエル・ロブション氏が存在していない今日のフランス料理界において、巨匠と呼ばれる料理人に誰が挙げられるでしょうか。

私は、フランスの権威ある専門誌「Le Chef」で、2015年にミシュランガイドの星を獲得している料理人によってベストシェフに選出された、ピエール・ガニェール氏が筆頭に挙げられると思います。

ピエール・ガニェール氏のレストランは日本にもあります。ANAインターコンチネンタルホテル東京「ピエール・ガニェール」はミシュランガイド2つ星を獲得し続けており、飽くなき美食の追求を行っているのです。

この「ピエール・ガニェール」では、2018年10月7日からこの時季にしか味わえない「白トリュフコース」を提供しています。

コース内容

白トリュフの香る泳ぐホタテ貝のラメル 蕪のジュレと磯の香るアイスクリームを添えて@ピエール・ガニェール(ANAインターコンチネンタルホテル東京)/著者撮影
白トリュフの香る泳ぐホタテ貝のラメル 蕪のジュレと磯の香るアイスクリームを添えて@ピエール・ガニェール(ANAインターコンチネンタルホテル東京)/著者撮影

「ピエール・ガニェール」でエグゼクティブを務めているのは赤坂洋介氏。2010年のオープン時にジョインし、2011年にエグゼクティブシェフに任命された、ピエール・ガニェール氏からの信頼が非常に厚い料理人です。

その赤坂氏が腕を奮う「ピエール・ガニェール」では白トリュフをふんだんに使ったコースを体験できます。

  • 白トリュフの香る泳ぐホタテ貝のラメル 蕪のジュレと磯の香るアイスクリームを添えて
  • 白トリュフの香るヴィアローネ・ナノ米のリゾット ラングスティーヌとイベリコハム パリブトン アンディーブのサラダと共に
  • 白トリュフの香るパルメザンクリームで絡めたフランス産プーレ・ノアール カボチャのニョッキと芽キャベツを添えて
  • 栗のスフレと白トリュフの香るアイスクリームを添えて
  • オパリスで覆ったヴァニラのパルフェ カシスの小さなタルト
  • グレープフルーツとヘーゼルナッツのキャラメリゼ

冷前菜に始まって、リゾットや肉料理、さらにはデザートにまで白トリュフが使われており、全てに「白トリュフの香る」が冠されていることからも、いかに白トリュフに焦点が当てられているかが分かります。

注目メニュー

白トリュフの香るヴィアローネ・ナノ米のリゾット ラングスティーヌとイベリコハム パリブトン アンディーブのサラダと共に@ピエール・ガニェール(ANAインターコンチネンタルホテル東京)/著者撮影
白トリュフの香るヴィアローネ・ナノ米のリゾット ラングスティーヌとイベリコハム パリブトン アンディーブのサラダと共に@ピエール・ガニェール(ANAインターコンチネンタルホテル東京)/著者撮影

料理の詳細は次の通りです。

「白トリュフの香る泳ぐホタテ貝のラメル 蕪のジュレと磯の香るアイスクリームを添えて」は新鮮さで評価の高い岩手県産の「泳ぐホタテ貝」を薄切りにしています。刻んだ白トリュフをトッピングしていますが、蕪のジュレにも白トリュフの香りを付けてあり、白トリュフの色香が皿全体を包み込んでいます。

「白トリュフの香るヴィアローネ・ナノ米のリゾット ラングスティーヌとイベリコハム パリブトン アンディーブのサラダと共に」には、煮崩れせず、リゾットに適したヨーロッパで唯一のIGP(地域保護表示)ライスであるナノ米が使われています。「白トリュフ料理でリゾットは外せない」と赤坂氏が述べるように、白トリュフにリゾットは定番です。しかし、定番だからといって、それだけに留めていません。ソテーしたラングスティーヌとイベリコ豚のハムも合わせ、海の幸と山の幸とを邂逅させているので、フランス料理らしい奥行きのある味が展開されています。

「白トリュフの香るパルメザンクリームで絡めたフランス産プーレ・ノアール カボチャのニョッキと芽キャベツを添えて」は、食味が非常に素晴らしいフランス産黒毛鶏プーレ・ノアールを使ったメインディッシュ。プーレ・ノアールは脂質が少なく、きめ細やかな肉質と旨味が特徴ですが、白トリュフが加わって華やかさも備えています。

「栗のスフレと白トリュフの香るアイスクリームを添えて」は栗のスフレと白トリュフのアイスクリームを合わせた一品。赤坂氏が「栗とトリュフはよく合う。香りと温度差を楽しめる」と述べるアシェットデセールです。

こだわり

白トリュフの香るパルメザンクリームで絡めたフランス産プーレ・ノアール カボチャのニョッキと芽キャベツを添えて@ピエール・ガニェール(ANAインターコンチネンタルホテル東京)/著者撮影
白トリュフの香るパルメザンクリームで絡めたフランス産プーレ・ノアール カボチャのニョッキと芽キャベツを添えて@ピエール・ガニェール(ANAインターコンチネンタルホテル東京)/著者撮影

赤坂氏に白トリュフのこだわりを尋ねると「最高級と謳われているイタリア・ピエモンテ州のアルバ産の白トリュフをご提供している。せっかく食べていただくのであれば、是非とも最高級とされているものを召し上がっていただきたい。今年の白トリュフは質が非常によいので、満足していただけるはず」と答えます。

白トリュフの料理を考える際には「組み合わせにあまりこだわらず、シンプルに白トリュフを味わえるようにしている。食材同士のコンビネーションよりも、白トリュフがしっかりと食材に合い、楽しんでいただけるかが大切」と哲学を話します。

昨年と違うところは「より素材を生かした構成になっている。ここ数年は複雑にしすぎず、食材のポテンシャルを引き出すようにしているが、ここ1年くらいはこの傾向をさらに強くしている。シンプルな中にもサプライズがあったり、奥深さがあったりする料理を志向した」と変化について話します。

加えて「トリュフのスライサーが新しくなった。より薄く削ることができるようになり、香りがより引き立つようになっている」と、調理器具も進化させたとします。

特にお勧めしたい料理について訊くと「帆立貝の冷前菜は、蕪のジュレにも白トリュフの香りを付けており、非常に手間をかけている。以前であればクーリやピューレを合わせていたかもしれないが、帆立貝の甘味と白トリュフの香りだけで十分においしいので、今回は加えなかった」と丁寧に説明します。

来年については「スープに合わせたり、鶏肉や仔牛肉以外の肉に合わせてみたりと、新しい料理も挑戦していきたい。しかし、ただ面白いだけでは意味がないので、無理に組み合わせることは考えていない。昨年まで、トリュフは温かい料理に適していると思っていたが、今は冷たい料理にも合うのではないかと考えている」と語ります。

ミシュランガイドの星付きフレンチを日夜創作し続け、美食を知り尽くしている赤坂氏でさえ、常に新しい料理に挑んでいかなければならない白トリュフは、美食の象徴であるからこそ、常に進化が求められる食材なのではないでしょうか。

海外で大切にされる白トリュフ

イタリアでは白トリュフの旬を祝って「白トリュフ祭」が行われたり、求める人々のために「白トリュフマーケット」が開催されたりしています。

イタリア政府観光局(ENIT)公式サイトには、2018年10月6日から11月25日にかけて行われている様々なイベントが掲載されており、白トリュフで盛り上がりをみせていることは想像に難くありません。

白トリュフは、イタリアやフランスなどではお祭りが開催されるほど非常に大切な食材ですが、日本では一部の美食家やフーディーたちが熱狂するに留まっています。

今回紹介したような一流ホテルのレストランが白トリュフのフェアを行うことによって、多くの日本人が白トリュフの魅力に触れる機会がふえれば幸いです。