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8月29日は「焼肉の日」 焼肉オーダーバイキングでおいしく食べるには?

東龍グルメジャーナリスト
著者撮影

焼肉の日

8月29日は「焼肉の日」です。

毎月29日は「肉の日」と謳われていますが、8月29日も同様に「8(やき)」「2(に)」「9(く)」という語呂合わせとなっており、全国焼肉協会が1993年に「焼肉の日」と定めました。

焼肉店は全国で2万店舗近くあるといわれており、日本ではとても人気のある業態です。新宿や池袋、渋谷などの繁華街に行けば焼肉店がたくさん見掛けられるでしょう。店舗数が多ければ競争も厳しく、差別化するためにオーダーバイキング(オーダー方式食べ放題、オーダーブッフェとも)を行う店も少なくありません。

「牛角」「トラジ」といった有名店でもオーダーバイキングに力が入れられており、オーダーしないバイキング方式の「すたみな太郎」は古くから知られています。他にも「焼肉きんぐ」「じゅうじゅうカルビ」「牛繁」「安楽亭」「安安」「福寿」など、実に様々な焼肉店でオーダーバイキングが行われているのです。

これだけ多くの焼肉店でオーダーバイキングが行われていますが、残念ながらマナーはまだあまり浸透していないように思います。

<焼肉食べ放題の店選びと食べ方を間違えないための5つのルール>でも紹介していますが、マナーやおいしく食べるための食べ方を改めて紹介しましょう。

軽いものから重いものへ

焼肉に限らず、ほとんどの食ジャンルにおいて、おいしく食べ進めるためには、軽いものから始めて重たいものに至るのがよいとされています。理由は、重たいものを食べてしまうと軽いものの繊細な味わいが分からなくなるからです。軽いものから食べ始めた方が体も徐々に慣れてくるでしょう。

焼肉であれば最初にタン塩をオーダーすることがセオリーとされていますが、最初はたれものよりも塩もの、さらには、脂が多いものよりも少ないものがよいです。その後にロース、カルビ、ホルモンというように食べ進めていけば、だんだん味が濃くなっていき、おいしく食べられます。そして一通りコースを食べ終えたら、次は2周目のコースを食べればテンポよく飽きずに食べられるのです。

これはオーダーバイキングではない通常のコースと同じ流れなので、当然のように思えるでしょう。しかし、オーダーバイキングでは、元をとろうと焦るあまり、この常識が守られないことが多いのです。最初からカルビを食べたり、味の濃いものばかりを食べたりしていては、すぐに飽きてしまいますし、最後までおいしく食べられないので、注意が必要です。

少しずつオーダー

オーダーバイキングはブッフェ(バイキング)とは異なり、タッチパネルを操作したり、口頭で伝えたりして注文し、従業員にテーブルまで運んで来てもらいます。

そのため、焼肉店は効率性を重視して、ひとつのメニューに対してそれなりの分量を運んで来ます。良心的なところであればワンポーションや数切れだけを運んで来てくれますが、普通は1人前程度のボリュームが提供されます。

オーダーバイキングは色々な種類の肉を気軽に楽しめる貴重な機会であるだけに、様々な味を体験しておきたいものです。そのため、基本的には同じ種類であれば一皿だけ注文しましょう。もっと食べたいのであれば、一皿を食べ終えた後に、もう一皿注文すればよいだけです。大食い競争ではないので、少ない種類をたくさん食べようとするのではなく、多くの種類を少しずつ楽しむようにしましょう。

通常の焼肉では、コースかアラカルトになります。コースであれば定番ばかりが提供されますし、アラカルトであれば一皿ごとに値段が増えていくので、あまり冒険できません。それだけに、オーダーバイキングでは普段は注文しないようなものを試してみて、食の体験を広げるのがよいです。

自分でコントロール

オーダーバイキングでは制限時間がまず決められています。短くても45分、長ければ120分、通常は90分となっています。それなりに時間に余裕があるので、最初から注文しまくるのではなく、全体で2〜3コース食べられるように時間を配分して注文し、ゆっくり楽しむのがよいです。

少しずつ注文していけば、途中で気分や体調が変化したとしても、その時々で対応できます。しかし、時間配分も考えずに注文していけば、途中で突然お腹が一杯になったり、体調が優れなくなったりした時に、大量に食べ残してしまいます。

全てについてではありませんが、肉には塩とタレの2つの味付けがあります。テーブルにはオーソドックスな焼肉だれや酸味のあるレモンだれなど、大抵は2種類以上のコンディメントはが置かれているはずです。途中からコンディメントを変えてみるなどもして、味を変化させて飽きないようにしましょう。

ナムルやサンチュだけではなく、クッパや冷麺といったサイドメニューもオーダーバイキングに含まれている場合があります。こういったものはボリュームもしっかりしているので、いつ食べるかが重要となるので、よく考えておく必要があるでしょう。

時間や味の変化、全体のボリュームを考えながら食べるのも、オーダーバイキングの醍醐味です。せっかく落ち着いて座ってオーダーできるだけに、何も計画せず、闇雲に注文し、運ばれてきたものをひたすら食べるのはもったいないです。

心に留めてもらいたいこと

焼肉のオーダーバイキングは非常にポピュラーであり、安ければ1000円台から、高ければ黒毛和牛やタラバガニも含まれて1万円以上します。しかし、どの場合でも20種類以上あることが普通であり、サイドメニューが充実している場合もあります。

オーダーバイキングは定額なので、財布に優しく、本来であれば心に余裕をもって注文し、リラックスして楽しめるはずです。しかし、「元をとらなければならない」「少しでも多く食べないと損だ」「焼肉店を儲けさせたら悔しい」と不毛な強迫観念に駆られるといけません。焦って食べてしまうとおいしく食べられませんし、食べ残してしまうと食品ロスを助長してしまいます。

「焼肉の日」に焼肉を大いに食べるのは結構ですが、お得なオーダーバイキングを利用するのであれば、「商品を販売して飲食店が利益を得る」という基本的な経済活動の原則を忘れず、「気持ちが悪くなってもいいから、とにかくたくさん食べる」よりも「食べ残さずに、最後までおいしく食べる」ことを心に留めておいていただければ嬉しいです。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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